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愛知県美術館「幻の愛知県博物館」展のコレクション展 [美術]

8月13日(日)、愛知県美術館へ行き、
「幻の愛知県博物館」展を見たことは、前記事
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2023-08-20

続いて、コレクション展も見ました。

コレクション展の入口である前室1には、
野永信《コの記号》1963年
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タイトル通り「コ」の字形が積みあがっています。

この前室1と展示室4のテーマは、「記号のからくり」
絵画や彫刻といった美術作品は、たいていの場合なにか別のものを指し示す「記号」として機能しています。作品を記号として捉えたときの多様性を考えます。
(出品リストの文)

シンボル、アイコン、インデックス
と、記号を分類して解説されてましたが、
正直、よくわからず‥‥

《虎図(朝鮮民画)》木村定三コレクション
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虎と言いつつ、ヒョウみたいな斑点模様。
ギョロッとした目が素朴でユーモラス!

山神の使いである虎と、吉報を知らせる鵲(かささぎ)の組み合わせは「鵲虎図(じゃっこず)」とも呼ばれ、朝鮮半島では伝統的な吉祥の図像として繰り返し描かれてきました。(中略)
虎の描き手たちは、伝統的に描かれてきた虎の姿を参照し、実際の虎がどのような姿であるかにはあまり気を留めなかったようです。それでも、当時の人々は、描き手と共通のコードを参照してそれが虎であると解釈できたので、吉祥の図像として十分に機能していました。
」(キャプションの説明文)


左右とも、安井曾太郎《人物立像》1905年
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こういう、いわゆる「リアル」に写し取った絵は、
アイコンであるとか‥‥?
(すみません説明をよく覚えてないので私の思い違いかも‥‥)


北野謙の写真
左《バリ舞踏の踊り子17人を重ねた肖像、2009年9月29日、30日、インドネシア、バリ島、ウブド村、No.1「our face」シリーズより》2010年
右《2014年香港反政府デモ“雨傘革命”に参加する25人を重ねた肖像、2014年10月12日、13日、14日、占拠エリア(金鐘、銅鑼湾、旺角)香港 No.2「our face」シリーズより》2014年
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複数の人の肖像写真を重ねた肖像写真。
なんか集団の普遍的なイメージみたいな雰囲気が、
ぼんやりした中からわき上がってくるような‥‥。


「記号」といって思い出すのは、やはり荒川修作かな。
荒川修作《作品》1963年
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私には、この作品をどう見たらいいのかわからないんですが、
仮に画面右下の署名を出発点とするならば、署名(シンボル)は矢印の付随する線を辿って、マイブリッジの連続写真(インデックス)へと到達します。さらに、その形をグリッド状の線へと置き換えた図式(アイコン)と羽と手袋のシルエット(インデックス)を経由して、再び出発点に戻ります。シンボル、アイコン、インデックスが入り乱れるこの循環においては、記号が意味をなすプロセス自体に関心が向けられているようです。
‥‥???


青野文昭《なおす・代用・合体・侵入(震災後宮古で収集した衣料店床面/テーブル)2011》2011年
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人間を記号化したような、いわゆる「棒人間」
本山ゆかり《画用紙(柔道_左)》《画用紙(柔道_右)》2016年
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この作品を初めて見たのは、2020年10月に行った
「古代エジプト展」のコレクション展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-11-24

コロナ禍における文化芸術活動の緊急支援策の一つとして、
若手アーティストの作品を購入して展示されていた中にありました。
これは棒人間を描いたのではなく、アクリルボードの裏から
アクリルで描いていて、画用紙に見えるのも描いた絵なんだそう。

2枚の布をつなぎ合わせて、ミシンで図柄を縫った作品もあって、
うーん、なんかよくわからんと思いつつ見てましたが、
2021年5月に、文化フォーラム春日井・ギャラリーで開催された
「本山ゆかり コインはふたつあるから鳴る」を見て、
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(2021年5月9日撮影)
あっ、この人すごい! って、やっと気づくことができました。
壁に釘を打って、1本のロープで
一筆書きのように名画の図が描かれたりと、
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私たちは絵って、当然のように画用紙やキャンバスに画材で
描くものだって思ってるけど、それを問うているわけですね。
(今回の「記号のからくり」というテーマとはちょっと違うけど)


展示室5は、「こだまする芸術」
あ、この部屋、前回の
「近代日本の視覚開化 明治」展(ブログに感想が書けてない(^^;)の
コレクション展とほぼ同じ。 だけど今回は
クリムトの《黄金の騎士》さまがお戻りになっておられます!

あるものと他のもののあいだにみられる響き合い(エコー)をひろく「こだま」と捉えて、ベルギー出身の画家ポール・デルヴォーの《こだま(街路の神秘)》を出発点に、作品同士のあいだやひとつの作品の中にみられる多様なこだまを紹介します。

ってことて、まずは
ポール・デルヴォー《こだま(あるいは街路の神秘)》1943年 と、
横尾忠則《月光の街Ⅱ》2003年
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愛知県美術館「GENKYO 横尾忠則」展」で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-03-28
《月光の街》の5点のシリーズを見て、
あ、ここの所蔵の絵だ! って嬉しくなりました。

ピカソの《青い肩かけの女》1902年 には、
下層に別の人物の下絵があったと。
中日新聞2023年2月17日の記事
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私のお気に入りの絵!
エドワード・ジョン・ポインター《世界の若かりし頃》1891年
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ホンモノ(?)の釘の影か、描かれたものか、
触って確かめてみたくなる(絶対ダメ(^^;
高松次郎《釘の影 No.648》1978年
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(写真は前回行った5月14日に撮影)


右は、アンディ・ウォーホル《レディース・アンド・ジェントルメン》1975年
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左は、フランツ・ゲルチュ《ナターシャⅣ》1987-88年
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なんと、木版画なんだそう!!
この大きさの紙の版をどうやって刷ったのか?
そして制作方法も、プロジェクターで画像を映した後、
画像を消して、記憶している部分だけ彫っていったとか!
(キャプションがボケて読めないので間違っているかも(^^;
なんか静かな精神性? すごい迫力を感じます。


あ、これあらためて写真で見たら、猫の影って気付くけど、
最初見た時は、モノクロームの抽象画かと思った。写真なんだ!
杉浦邦恵《子猫の書類》1992年
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カメラを使わずに印画紙の上に直接物を置いて感光させるというフォトグラムの手法」で、「暗室に2匹の猫を一晩中放置して朝に露光・定着させることを7晩繰り返したもの」なんだそう。

熊谷守一は同じような絵を描いていたりしますね。
同じ輪郭を使って描いていて、これでは「ぬりえ」じゃん
とも思うけど、熊谷守一ならいいかーと。
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コレクション展で何回か見ている
袴田京太朗《ハルガ》2008-09年
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隣の《Inner Hulga》2011年 は、
ハルガの内部をくり抜いて作られていると


絵画の梱包に使う箱が2つ並んでいるように見える
ライアン・ガンダー《It stole your thunder - (Alchemy Box #25) / It stole my thunder》2011年
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「コートールド美術館展」のコレクション展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-01-25

一つは資料が入った段ボール箱で、
もう一つは合板にアクリルでそっくりに描いたものだと知りました。

展示室中央には、4つの石と4枚の鉄板で作られた
李禹煥《Relatum - with Four Stones and Four Irons》1986年
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壁には、榎倉康二《干渉 (Story-No. 49)》1992年

野田裕示《WORK-984》1995年
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黒と白の画面がインパクトあるなーって見たけど、
これ、描かれたものではなく、
本作は、凹凸をつけた木板を2枚の画布で覆ったもので、主にクリーム色で彩色された1枚目は木板をそ裏側までぐるりと包み込み、主に黒色で彩色された2枚目は9本の切り込みに沿って鋭角に折り畳まれて画面に貼り付けられています。
(キャプションの説明より)
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展示室6は、「三田村光土里 グリーン・オン・ザ・マウンテン」
偶然手に入れたネガフィルムに記録されていた、見知らぬ家族の写真から展開するインスタレーション作品、三田村光土里《グリーン・オン・ザ・マウンテン》を愛知県で初公開します。
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緑色の光に包まれた不思議な空間に音楽が響いています。
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山の中で家族が集う写真。床の鏡に映っています。
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棚の中に飾られた家族の写真。
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時計回りとは逆に回る針
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いつ、どこで生きていた家族かわからないけど、
なんだか愛おしく、なつかしいような‥‥


展示室7 「ブラックとピカソ キュビスムと『秩序への回帰』」
本年度新たに受贈した、ジョルジュ・ブラック《水浴する女性と3つの果実》を初公開。ブラックとピカソを中心に、第一次世界大戦前のキュビスムから、戦後の「秩序への回帰」と呼ばれる古典的傾向への変化を紹介します。

匿名を希望する名古屋市在住の個人から、
5億円のキュービスム名画が愛知県美術館に
寄贈されたと報じられてましたね。

中日新聞Webの記事:
https://www.chunichi.co.jp/article/710356

これがその5億円の絵画
ジョルジュ・ブラック《水浴する女性と3つの果実》1926年
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左隣には、モーリス・ドニ《花飾りの舟》1921年
右隣りには、アンリ・マティス《待つ》1921-22年

右側の彫刻は、アレクサンダー・アーチペンコ《歩く女》1912年
左側の彫刻は、オシップ・ザツキン《チェロのトルソ》1956年(1956-57年鋳造)
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反対側の壁には、ブラックの版画が並んでました。
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展示室8は、「木村定三コレクション フォロンとグラフィック・アート」
ベルギー出身のグラフィックアーティスト、ジャン゠ミシェル・フォロンは風刺の効いた独特のユーモアを交えながら現代社会やそこに生きる人々の姿を色彩豊かに描き出しました。フォロンの作品を中心にポスターや挿絵原画などのグラフィック作品をご紹介します。

えー!? 木村定三さん、こんなポスターや版画もコレクションしてたの?!!
って、驚いた部屋。
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フォロン! 私が大学でグラフィック・デザインを学んでいた頃、
フォロンは教科書的な存在でした。
確か、高校か中学の美術の教科書にも載ってたような。
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灘本唯人や和田誠の版画もありましたし、

この絵本の一場面のような幻想的な絵いいなーって見た
フリードリッヒ・シュレーダー゠ゾンネンシュターン《冒涜された力》1959年
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東プロイセン(現リトアニア)に生まれたゾンネンシュターンは、時に暴力的でエロティックな要素を取り入れながら、架空の生き物たちが登場する幻想的な世界を色鉛筆で描き揚げました。」(キャプションより)

ジョルジュ・ブラックの版画《四羽の鳥》1959年 や、
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パブロ・ピカソの版画《ポスター》1961年 もありました。
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通路(前室2)には、いくつか彫刻が展示されていました。
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左 中原悌二郎《平櫛田中像》1919-21年
出窓には 高田博厚《女のトルソ》1937年
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ブログの記事がずいぶん遅くなってしまいましたが、
今回もとても充実した盛りだくさんのコレクション展でした。

愛知県美術館: https://www-art.aac.pref.aichi.jp/

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