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名古屋市美術館「福田美蘭―美術って、なに?」 [美術]

10月12日(木)、名古屋市美術館へ行きました。

「開館35周年記念
 福田美蘭
 美術って、なに?」という特別展をやっています。
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このチラシ見て、この展覧会って、なに? って(@o@)
これは絵? 写真? これが作品なの?
《松竹梅》ってタイトルがついてる
確かに上から鰻重の松竹梅だけど、これをわざわざ
作品にする意味は? なんて。

福田美蘭について、名前くらいは知ってるってくらいの
(でも、美蘭を「みらん」って読んでなかった(^^;
知識しかありませんでした。
福田繁雄の娘さんなんですね。

名古屋市美術館の常設展で、スルバランの静物の絵の
並んだ壺の一つをモザイクにしたり、
レンチキュラーレンズ(って言うのを今回知りました
見る角度によって絵が変化するカマボコ状のシート)で、
壺が倒れて壊れるように見えたりする作品を見てたんですが、
ふーん、ってカンジで。

2018年に名古屋市美術館で開催された
「モネ、それからの100年」展でも、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2018-05-25
福田美蘭の作品が展示されていたんですが、
その時はあまり心に響かなかったんですね。
大原美術館の池を描いた作品《睡蓮の池》を、
ただの風景画では? くらいにしか見てなくて(^^;

2020年、豊田市美術館「いま見える景色」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-12-30
福田美蘭の作品が2点展示されていて、その1枚が、
《大根おろし》1996年
一見して、抽象画かって思ったけど、
タイトルを見たら、確かにこれは大根おろしを拡大して描いた
具象絵画にしか見えなくて面白かった。


それくらいの認識だったので、
特に見に行きたい展覧会リストには入れてなかったんですが、
10月1日の日曜美術館アートシーンで取り上げられていて、
へーちょっと面白そうかも、って
それであらためてチラシの裏面まで読んでみた(^^)
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国内外で活躍を続ける現代美術家・福田美蘭(1963- )は、現代社会が抱える問題に鋭く切り込み、東西の美術、日本の伝統や文化を、意表を突くような手法であらわして、私たちの既成概念を打ち破ってきました。
本展では、古今東西の名画に福田独自のユニークな視点で向き合った作品から、国内外の時事問題をテーマに鋭い視点で切り込んだ作品まで、新作を含む約50点で福田美蘭の世界観を紹介します。

(チラシ裏面の文)


パートが休みだった9月12日(木)、
愛知県美術館友の会の特別鑑賞会の夜の部が
17:30~にあるので、名古屋市美術館を見てから
愛知県美術館へ行こうって。

気候も良くなってきたので、名古屋駅から歩こうと、
途中の金券ショップのぞいたら、
当日一般1,500円の福田美蘭展のチケットが
1,400円であったのでゲット!

白川公園の噴水と名古屋市科学館
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名古屋市美術館
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展示室入口の記念撮影スポット
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(でも、この展覧会、一部を除きほとんどの作品が写真撮影可!!)

序章 福田美蘭のすがた

1963年に東京で生まれた福田美蘭は、東京藝術大学に学び、大学院修了後すぐに第18回現代日本美術展で佳作賞、翌年には26歳の若さで具象絵画の登竜門といわれる安井賞に輝く(後略)

最初に展示されていたのが(出品リストや図録の番号順ではなく)

《志村ふくみ《聖堂》を着る》2004年 滋賀県立美術館
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志村ふくみの着物を着た作者の姿。
志村ふくみの着物《聖堂》は、貴重な美術品として、
滋賀県立美術館に所蔵され、触ってはいけない
鑑賞する着物になっている。
でも絵画の中では着ることができる。

そんな作品の隣に展示されていたのが、
《フランク・ステラと私》2001年
(あ、写真撮り忘れた(T.T)
現代美術界の巨匠・フランク・ステラと作者が並んで
記念撮影した写真を拡大して描いた作品。
写真の日付まで描き込んであるんだけど、
本当にステラと並んで写ったのか?って疑うことも
できるわけで(もちろん本当だと思うけど)
この絵の大きさ、写真をよくここまで引き伸ばしたな、
なんて思っちゃうような画力すごいなーって。

その隣の《緑の巨人》1989年 国立国際美術館
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出品リストではno.1、福田の初期の作品で、
伝統的絵画からコミックまで、既存のイメージを寄せ集めて
構成した作品で、その描写力と構成力を高く評価されて、
インド・トリエンナーレで金賞を受賞したとのこと

《涅槃図》2012年 豊田市美術館
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2010年12月に104歳で亡くなった福田の母方の祖父で童画家の
林義雄 動画に描かれた人や動物で構成した涅槃図
可愛く、ほっこりするような涅槃図。
豊田市美術館の所蔵なんだ!


名画 イメージのひろがり/視点をかえる

休憩するモナ・リザ(^▽^)
《ポーズの途中に休憩するモデル》2000年 富山県美術館
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《虎渓三笑図》2020年 千葉市美術館
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千葉市美術館所蔵の曽我蕭白《虎渓三笑図》を題材に、
虎の声を聞いたとはその姿を見たわけではないと解釈し、ここでは描かれている急峻な岩山をそのまま組み込んで、風景の中に見えない虎の姿を描いている。」福田美蘭の作品解説より
鑑賞のヒントにも「隠れたトラを探してみよう!
ってあったけど、なかなか見つけられずにいたら、
監視員の方が教えてくれました。
でもちょっとわかりにくいですよね。
この岩が虎の顔なの? って。

《安井曾太郎と孫》2002年 大原美術館
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大原美術館所蔵の安井曾太郎《孫》を
描いていたときの様子を想像して描いた絵。
安井曾太郎の表現方法で描いているのがすごい。
安井が孫を描いているところを、
安井が描いたんじゃないかって思ってしまう。

《ミレー“種をまく人”》2002年 山梨県立美術館
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山梨県立美術館所蔵のミレー《種をまく人》の
その後のポーズ、種が手から離れた瞬間を描いた絵。
ミレーが連作したんじゃないかって思う描写力!

これはゴッホの絵を題材にして描いたのか? って
キャプション見たら、大原美術館所蔵の
伝フィンセント・ファン・ゴッホ《アルビーユの道》
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えっ!? ゴッホではないかって言われてる絵なの??
真贋論争は、絵画の一つの問題点であり、また芸術というものの本質的な問題も含んでいる
福田がこの絵をはじめて見たとき、
真作かどうか、ということよりも、ゴッホらしくない、と感じることに惹かれて、これが本物であると感じるには何が足りないかということを、また、これが真作だとしたら、ゴッホの作品をもっとゴッホらしくするとはどういうことか、を描きながら考えてみたかった。

ということで描いたのがこちら
《ゴッホをもっとゴッホらしくするには》2002年 大原美術館
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《三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛》1996年 国際交流基金
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写楽の大首絵は役者を実際に見て描いたと言われている。
写楽が見たであろう役者の姿はこうではなかったか。
うんうん、まさにリアル!

ベラスケスの名画《ラス・メニーナス》の中に入り込んだよう!
《侍女ドーニャ・マリア・アウグスティーナから見た王女マルガリータ、ドーニャ・イザベル・ベラスコ、矮人マリア・バルボラ、ワイ人ニコラシート・ペルトゥサートと犬》1992年 高松市美術館
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マネの《草上の昼食》の裸婦を正面から見ています
《帽子を被った男性から見た草上の二人》1992年 高松市美術館
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名古屋市美術館所蔵のフランク・ステラ《説教》を
チョコレート・ドリップケーキのデコレーションにした新作絵画
《説教(フランク・ステラによる)》2023年
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名古屋市美術館所蔵の名画、
フリーダ・カーロ《死の仮面を被った少女》を題材に、
インスタレーションの新作作品が作られていました。
(撮影不可でした)


あっ、天井にも作品が!
《Portrait》1995年
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二つ折りになった状態で壁に掛けられていて、
絵を観たい人は自由に手で開けて鑑賞する
《開ける絵》2000年
は、不具合で一部のみのの展示となっていて、
開閉することはできませんでした。

名古屋市美術館所蔵のレンチキュラーレンズを使った
《陶器(スルバランによる)》1992年 も展示されてましたし、

レンチキュラーレンズで、
ベラスケスの初期の代表的ボデゴン(厨房画)の一点が
完成するまでの3段階が一枚の絵の中で見られる
《卵を料理する老婆》1992年 京都国立近代美術館
なども面白かった!



2階の展示室へ行くと、

時代をみる

龍安寺の石庭をそのまま描いた? って解説を読むと、
一番手前の石は尖閣諸島の南小島の形をしているんですね!
《石庭》2017年 千葉市美術館
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展覧会のメインビジュアルとなっている
《松竹梅》2017年 千葉市美術館
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絵の大きさと(227.2×181.8cm)リアルな描写力に驚きます。

江戸時代に流行した《誰が袖図》に習い、
衣桁にディズニーキャラクターの服を掛けた
《誰が袖図》2015年 京都市美術館
可愛くて、クスッと笑ってしまった。
でも、画中の屏風に描かれているのは、2015年2月1日
過激派組織ISILがジャーナリストを殺害したとする映像を
インターネット上に公開したその現場の風景だとかで、
可愛いディズニーキャラクターがアメリカの富と権力の
象徴として描いているのだとか。

その絵をぬりえの形態にした作品も隣にあったけど、
(来場者が実際にぬりえをすることはできない)
置かれていたクレヨンはオレンジ色と黒のみ。
オレンジ色は殺害される人質を、黒はジハーディ・ジョンの呼び名で知られる覆面の戦闘員の男と、ISILの旗の色をイメージしている」のだそう。

ゴッホの絵みたいって見た
《冬―供花》2012年 豊田市美術館
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作者は、2011年に国立新美術館で見たゴッホの《薔薇》を見て、
その2年前に父が亡くなった際に届けられた白い花々を思い出し、
花籠一枚ずつ撮っていた写真をもとに描いているそう。
震災で命を落とした人と向き合うような気持ちで描いたと。


《秋―悲母観音》2012年 東京藝術大学
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東京藝術大学所蔵の狩野芳崖《悲母観音》をもとに、
観音が子を抱く母子像として描いています。
背景には、震災で家、船、瓦礫が流される風景!
慈愛に満ちた観音像に心がきゅんとなりました。

《世界貿易センタービルの展望台》2008年 富山県美術館
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2001年9月11日航空機に激突されて失われた展望台からの眺望。
等身大にリアルに描かれているので、私もこの人物たちに交じって
展望台からの景色を眺めているような気分になりました。


《ブッシュ大統領に話しかけるキリスト》2002年
 新潟県立近代美術館・万代島美術館
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背景では世界貿易センターが黒煙を上げています。
人の話を聞こうとしないブッシュが耳を傾けるとしたら、もはやキリストしかいないのではないか、という私の考えを絵画にしたもの。


東京ビエンナーレ2023のアートプロジェクト
美術家の原画をおしぼりに刺繍し、東京都内の飲食店で
実際におしぼりとして提供する「おしぼりリンゲージ」
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一見、これは何の図? って思ったけど、
矢印に気が付いて、引っ張ってみたら―
日本語と英語でおもてなしの言葉が出るんですね!
洒落てます!


最後のコーナーには、
プーチン大統領をモディリアーニのカリアティードの連作に
見られるような鉛筆のドローイングの連作作品(新作)と、

モディリアーニ風にデフォルメした
《プーチン大統領の肖像》2023年
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モディリアーニのような瞳のない肖像
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そして《ゼレンスキー大統領》2022年 練馬区立美術館
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テレビの報道やSNSですっかりおなじみ(?)になってしまった
ゼレンスキー大統領のこのイメージ!
福田美蘭はこの絵を「マネの現実認識による曖昧さそのものをイメージした絵画について考えることができると思った。


面白かった! とにかく福田美蘭の画力すごいなって。
さすが、安井賞を最年少で受賞しただけありますね。
絵を描くことを楽しんでるってカンジがします。

そして、それぞれの作品につけられた福田美蘭の解説が良かった。
そんな意図で描いていたんだって、気づかされることも多くて、
(よくわからないところもあったけど)

ショップで、写真いっぱい撮らせてもらったので、
ちょっと迷ったけど、福田美蘭の作品解説をまた読みたくて、
図録購入しました。2,200円(税込)
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この展覧会は名古屋市美術館のみの開催で、
数量限定とのことなので、なかなか貴重な一冊ではないかと。


グッズ売り場にあった記念撮影スポット
いろんな角度から描いた見返り美人の群像の中に、
紛れ込むことができます!
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名古屋市美術館: https://art-museum.city.nagoya.jp/

特別展「開館35周年記念 福田美蘭―美術って、なに?」公式サイト:
https://static.chunichi.co.jp/chunichi/pages/event/fukudamiran/

特別展を見終わって、地下のコレクション展へ。
愛知県美術館の特別鑑賞会の時間も迫ってきたので、
駆け足で‥‥福田美蘭の絵の題材となった
フランク・ステラ《説教》や、
モディリアーニ《おさげ髪の少女》や、
フリーダ・カーロ《死の仮面を被った少女》を
やっぱり展示してあるーって確認してきました(^^)

現代の美術の展示テーマは「金属を用いた美術作品」
久野真の作品がシャープで良かった。

そして、
「東山動物園猛獣画廊壁画修復プロジェクト」
https://art-museum.city.nagoya.jp/topics/mouju_hekiga/
の部屋では、2名の方が修復作業をしておられて興味深かったです。

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