岐阜県美術館「第10回 円空大賞展」 [美術]
2月2日(日)岐阜県美術館へ行きました。
「第10回 円空大賞展 ―希求、未来への創造―」
が始まっていて、
この日、円空賞受賞の池田学による解説が10時からあるってことで
リニューアルで、図書館側の入口が広くなりました。
岐阜県美術館の開館を並んで待つなんて初めてです!
まずは円空大賞展の会場の池田学さんの展示コーナーまで進んで
池田学《誕生》2013-2016
300×400cm という巨大な絵の前で、池田さんの解説を聞きます。
この絵だけで一つのコーナーになっていたので、展示室激混み!
《誕生》は、文化庁芸術家在外研修員として海外へ行って
間もない時に、東日本大震災のニュースに接し、しばらく
ショックで絵が描けなかった‥‥こんな時に絵を描いていていいのか?
日本に帰ってボランティアに行った方がいいのでは?‥‥って時期を経て、
アメリカ・ウィスコンシン州にあるチェゼン美術館から
アーティスト・イン・ミュージアムの話があって、
3年かけて描いていったそう。美術館での滞在制作は、
まずこれだけの大作を描くスペースができたこと、そして
見に来てくれた人が、東日本大震災のことを気遣ってくれたり、
少しずつできていく絵を楽しみにしてくれたことがとても励みになったと。
(このあたり、あくまで私が聞いたことをうろ覚えで書いてます)
(以下の絵の写真は解説会が終わってかなり経ってから撮ったもの)
まずは左下のがれき部分から描き始め、
右下の津波、
そして2年目に大木へと描いていったとか。でも、最初にこんな
構図にするって意図があったわけではなく、毎日少しずつ‥‥
とても細かい作業なので、1日ずっと制作していても、
10センチ四方くらいしか進んでいかないと。
円空仏のような仏像の顔も描かれているのが、
円空賞をもらえた理由かもって(笑)
上部は満開の花と見えるかもしれないが、実はこの花は全て
ホンモノの花ではなく、プロペラとか、遊園地のコーヒーカップ(?)
とかでできていると。
放射能マークの花も。放射能が降ってくる中を進むイメージだとか。
葉に見えるのも、よく見たらテントですね!
「最後に描いたのはどこで、これで完成ってのはどう決めるんですか?」
って質問に、
「画面右の赤い花の右側端から出ている三つ葉みたいな枝」で、
展覧会も決まっていて、娘さんの誕生日とか?で、その日に
完成させるってのは決めていたみたいです。
タイトルの《誕生》は、英語では〈Birth〉ではなく《Rebirth》で、
再生という意味を持たせていると。《再生》というタイトルの作品が
もうあるので《誕生》にしたそうです。
細部を見ているとずっと見飽きないので、皆、長い時間絵の前にいて、
鑑賞者が写らない全体の写真を撮るのはかなり大変!
池田学さんの解説は他の絵についてもありました。
(スミマセン写真ボケてます)
《再生》2001年
「第4回はままつ全国絵画公募展」で大賞をもらったもの。
応募の時のタイトルは〈沈没船〉だったけど、大賞の絵が〈沈没船〉では
って連絡があって《再生》というタイトルにしたそう。
《けもの隠れ》1999
大学院の卒業制作として描いたもので、
この絵で、これからの自分の進む道が見えてきたと感じたとか。
アジサイの花かと見たら《放射能の花》2017
《プロペラの花》2017
《開墾》2017
《表通り》2004
エッチング《White Horse》2018
描写力すごいですね。
池田学さんの展示、大作《誕生》を含めて21点が展示されてて
見ごたえあります。撮影可ってのも嬉しい!
(この「円空大賞展」最初と最後の円空仏などを除いて撮影可)
「円空大賞展」の最初に戻って、展示を見ます。
第10回 円空大賞は、Tara Océan財団
へー?! こういう団体が選ばれるのって今までなかったんじゃないですか?
「世界を舞台に環境問題の提起につながる調査を続け、 海洋が未来のために決定的な役割を果たしていることを、 アートを通して次世代に伝える」(チラシ裏面より)
環境問題を発信している団体ですが、写真がすごく美しいですね。
科学と芸術の融合
彫刻(?)は、ロボット加工機によってつくられたものだとか。
ゴーグルをつけると、バーチャルリアリティーで
タラ号に乗っているような気分が味わえます。
円空賞 安藤 榮作
円空仏も一体となったこの空間、すごく素敵!
「人・自然・宇宙とのつながりの大切さを訴え、 原木や流木を手斧一本で叩き続けてつくられた木彫に、生きる瞬間の感覚を刻み付ける」
正に現代の円空って感じですね。
安藤榮作さんは、東日本大震災の津波と火災で福島県にあった自宅と
多くの作品を失い、原発事故で奈良県へ移住されたそう。
震災からの復興、希望のイメージとしての鳳凰でしょうか。
あ、床に流れのように置かれた木は、人の形をしているんですね!
円空賞 羽田 澄子
「日本の記録映画史に残る監督であり、社会問題や伝統芸能等に関わる人の生き方を美しく記録した」
スクリーンで「薄墨の桜」が上映されていました。
42分の作品なので、全部は見てませんが、
映像作品かーって(私は映像作品あまり好きではない。
ま、単純に時間がかかるからなんですけど)覗いたら、
今の、観光地として整備された淡墨桜からは信じられないほど
素朴な姿‥‥近くに田植えをしている田んぼがあったり、
村の婦人会が花見の出店を出してたり‥‥が映っていて、
興味深かった。1977年の制作だそう。
そして、円空賞 池田 学
「小さなペンのみの超絶技巧で、ミクロとマクロの両方を同時にもつ独特の世界観をつくり上げる」
の展示があって、
最後の展示室が、円空賞 大嶽 有一
「鉄の板を用いて、均整のとれたシンプルなフォルムを追求し、錆びさせることで存在感のある作品をつくり出す」
とても静謐な雰囲気‥‥でも、どことなくユーモアも感じられたりして。
第10回目となる今回の円空大賞展も、それぞれ素敵でした。
----
岐阜県美術館ではこちらの展覧会(コレクション展)も開催されています。
円空大賞展の半券で見ることができます。
(「円空大賞展」が一般800円。「カラー・マジック」のみだと一般340円)
私は後援会員証で入れます。
「カラー・マジック
田口コレクションと安藤基金コレクションから」
「岐阜県美術館の所蔵品の核となる二つのコレクションから、色をテーマに厳選して作品を紹介します。」(チラシ裏面より)
特に県内の実業家・安藤鉦司氏からの寄付金を基金とした
「安藤基金コレクション」は、現代美術の購入に充てられていて、
岐阜県美術館の現代美術なかなか充実しているんですよね。
最初の展示室の壁一面が「あか」をテーマとしていて、
猪熊源一郎《スクエア・イン・ザ・ウォーター》1970 (チラシ裏面右)
白髪一雄《地魔星雲裏金剛》1960 とか、強烈な現代美術作品が並びます。
元永定正《せんとあかいろのかたち》1987
は、赤いかたちがユーモラスでインパクトあります。
このあたりの作品、私が赤が好きなこともあるけど、すごくいいなぁ!って。
高橋秀《記憶の風景》1988-89
シンプルな黒と赤のフォルムはちょっとエロティックにも見えます。
「あか」の反対側の壁が「しろ/くろ」で、藤田嗣治や、荒川修作、
齋藤隆のコンテで描かれた《飛》1971
ロダンの白い大理石の《イヴ》1883 に、
伊藤慶二の陶の作品も並んでました。
次の部屋は「あお」
李禹煥《線より》1977 や、三尾公三、サム・フランシス
「みどり」の部屋と続いて、「いろいろ」の部屋へ
この展覧会、キャプションのカードにそれぞれテーマの色のラインが
引かれているんですが「いろいろ」ではオレンジとイエローの2つの
ラインだったんですね、で、私はてっきりオレンジ色の絵かと思った
川合玉堂《春景秋景山水図》1918 が良かった!
それまでの主張の強い絵にちょっと疲れてたのかな? 癒された気分
全体の色調がオレンジ色なのは裏箔って贅沢な技法なんですね。
ちなみに、庭園に設置されている
アリスティド・マイヨール《地中海》1902-05 も、
ルノワール《勝利のヴィーナス》1914 も、
公益財団法人田口福寿会およびセイノーホールディングス株式会社から
寄贈された「田口コレクション」なんだそうです。
岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
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「円空大賞展」過去記事
岐阜県美術館「第9回 円空大賞展」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2018-02-15
岐阜県美術館「円空大賞展」パイプオルガンコンサート
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-02-18
岐阜県美術館「第8回 円空大賞展」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-02-15
岐阜県美術館「第7回 円空大賞展」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-02-19
岐阜県美術館「円空大賞展」と田中泯の場踊り(第6回)
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2012-02-18
岐阜県美術館「円空大賞展」へ行く(第4回 円空大賞展)
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2007-03-24
岐阜県美術館(第3回の円空大賞展についてちょっと書いてます)
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2005-09-06
「第10回 円空大賞展 ―希求、未来への創造―」
が始まっていて、
この日、円空賞受賞の池田学による解説が10時からあるってことで
リニューアルで、図書館側の入口が広くなりました。
岐阜県美術館の開館を並んで待つなんて初めてです!
まずは円空大賞展の会場の池田学さんの展示コーナーまで進んで
池田学《誕生》2013-2016
300×400cm という巨大な絵の前で、池田さんの解説を聞きます。
この絵だけで一つのコーナーになっていたので、展示室激混み!
《誕生》は、文化庁芸術家在外研修員として海外へ行って
間もない時に、東日本大震災のニュースに接し、しばらく
ショックで絵が描けなかった‥‥こんな時に絵を描いていていいのか?
日本に帰ってボランティアに行った方がいいのでは?‥‥って時期を経て、
アメリカ・ウィスコンシン州にあるチェゼン美術館から
アーティスト・イン・ミュージアムの話があって、
3年かけて描いていったそう。美術館での滞在制作は、
まずこれだけの大作を描くスペースができたこと、そして
見に来てくれた人が、東日本大震災のことを気遣ってくれたり、
少しずつできていく絵を楽しみにしてくれたことがとても励みになったと。
(このあたり、あくまで私が聞いたことをうろ覚えで書いてます)
(以下の絵の写真は解説会が終わってかなり経ってから撮ったもの)
まずは左下のがれき部分から描き始め、
右下の津波、
そして2年目に大木へと描いていったとか。でも、最初にこんな
構図にするって意図があったわけではなく、毎日少しずつ‥‥
とても細かい作業なので、1日ずっと制作していても、
10センチ四方くらいしか進んでいかないと。
円空仏のような仏像の顔も描かれているのが、
円空賞をもらえた理由かもって(笑)
上部は満開の花と見えるかもしれないが、実はこの花は全て
ホンモノの花ではなく、プロペラとか、遊園地のコーヒーカップ(?)
とかでできていると。
放射能マークの花も。放射能が降ってくる中を進むイメージだとか。
葉に見えるのも、よく見たらテントですね!
「最後に描いたのはどこで、これで完成ってのはどう決めるんですか?」
って質問に、
「画面右の赤い花の右側端から出ている三つ葉みたいな枝」で、
展覧会も決まっていて、娘さんの誕生日とか?で、その日に
完成させるってのは決めていたみたいです。
タイトルの《誕生》は、英語では〈Birth〉ではなく《Rebirth》で、
再生という意味を持たせていると。《再生》というタイトルの作品が
もうあるので《誕生》にしたそうです。
細部を見ているとずっと見飽きないので、皆、長い時間絵の前にいて、
鑑賞者が写らない全体の写真を撮るのはかなり大変!
池田学さんの解説は他の絵についてもありました。
(スミマセン写真ボケてます)
《再生》2001年
「第4回はままつ全国絵画公募展」で大賞をもらったもの。
応募の時のタイトルは〈沈没船〉だったけど、大賞の絵が〈沈没船〉では
って連絡があって《再生》というタイトルにしたそう。
《けもの隠れ》1999
大学院の卒業制作として描いたもので、
この絵で、これからの自分の進む道が見えてきたと感じたとか。
アジサイの花かと見たら《放射能の花》2017
《プロペラの花》2017
《開墾》2017
《表通り》2004
エッチング《White Horse》2018
描写力すごいですね。
池田学さんの展示、大作《誕生》を含めて21点が展示されてて
見ごたえあります。撮影可ってのも嬉しい!
(この「円空大賞展」最初と最後の円空仏などを除いて撮影可)
「円空大賞展」の最初に戻って、展示を見ます。
第10回 円空大賞は、Tara Océan財団
へー?! こういう団体が選ばれるのって今までなかったんじゃないですか?
「世界を舞台に環境問題の提起につながる調査を続け、 海洋が未来のために決定的な役割を果たしていることを、 アートを通して次世代に伝える」(チラシ裏面より)
環境問題を発信している団体ですが、写真がすごく美しいですね。
科学と芸術の融合
彫刻(?)は、ロボット加工機によってつくられたものだとか。
ゴーグルをつけると、バーチャルリアリティーで
タラ号に乗っているような気分が味わえます。
円空賞 安藤 榮作
円空仏も一体となったこの空間、すごく素敵!
「人・自然・宇宙とのつながりの大切さを訴え、 原木や流木を手斧一本で叩き続けてつくられた木彫に、生きる瞬間の感覚を刻み付ける」
正に現代の円空って感じですね。
安藤榮作さんは、東日本大震災の津波と火災で福島県にあった自宅と
多くの作品を失い、原発事故で奈良県へ移住されたそう。
震災からの復興、希望のイメージとしての鳳凰でしょうか。
あ、床に流れのように置かれた木は、人の形をしているんですね!
円空賞 羽田 澄子
「日本の記録映画史に残る監督であり、社会問題や伝統芸能等に関わる人の生き方を美しく記録した」
スクリーンで「薄墨の桜」が上映されていました。
42分の作品なので、全部は見てませんが、
映像作品かーって(私は映像作品あまり好きではない。
ま、単純に時間がかかるからなんですけど)覗いたら、
今の、観光地として整備された淡墨桜からは信じられないほど
素朴な姿‥‥近くに田植えをしている田んぼがあったり、
村の婦人会が花見の出店を出してたり‥‥が映っていて、
興味深かった。1977年の制作だそう。
そして、円空賞 池田 学
「小さなペンのみの超絶技巧で、ミクロとマクロの両方を同時にもつ独特の世界観をつくり上げる」
の展示があって、
最後の展示室が、円空賞 大嶽 有一
「鉄の板を用いて、均整のとれたシンプルなフォルムを追求し、錆びさせることで存在感のある作品をつくり出す」
とても静謐な雰囲気‥‥でも、どことなくユーモアも感じられたりして。
第10回目となる今回の円空大賞展も、それぞれ素敵でした。
----
岐阜県美術館ではこちらの展覧会(コレクション展)も開催されています。
円空大賞展の半券で見ることができます。
(「円空大賞展」が一般800円。「カラー・マジック」のみだと一般340円)
私は後援会員証で入れます。
「カラー・マジック
田口コレクションと安藤基金コレクションから」
「岐阜県美術館の所蔵品の核となる二つのコレクションから、色をテーマに厳選して作品を紹介します。」(チラシ裏面より)
特に県内の実業家・安藤鉦司氏からの寄付金を基金とした
「安藤基金コレクション」は、現代美術の購入に充てられていて、
岐阜県美術館の現代美術なかなか充実しているんですよね。
最初の展示室の壁一面が「あか」をテーマとしていて、
猪熊源一郎《スクエア・イン・ザ・ウォーター》1970 (チラシ裏面右)
白髪一雄《地魔星雲裏金剛》1960 とか、強烈な現代美術作品が並びます。
元永定正《せんとあかいろのかたち》1987
は、赤いかたちがユーモラスでインパクトあります。
このあたりの作品、私が赤が好きなこともあるけど、すごくいいなぁ!って。
高橋秀《記憶の風景》1988-89
シンプルな黒と赤のフォルムはちょっとエロティックにも見えます。
「あか」の反対側の壁が「しろ/くろ」で、藤田嗣治や、荒川修作、
齋藤隆のコンテで描かれた《飛》1971
ロダンの白い大理石の《イヴ》1883 に、
伊藤慶二の陶の作品も並んでました。
次の部屋は「あお」
李禹煥《線より》1977 や、三尾公三、サム・フランシス
「みどり」の部屋と続いて、「いろいろ」の部屋へ
この展覧会、キャプションのカードにそれぞれテーマの色のラインが
引かれているんですが「いろいろ」ではオレンジとイエローの2つの
ラインだったんですね、で、私はてっきりオレンジ色の絵かと思った
川合玉堂《春景秋景山水図》1918 が良かった!
それまでの主張の強い絵にちょっと疲れてたのかな? 癒された気分
全体の色調がオレンジ色なのは裏箔って贅沢な技法なんですね。
ちなみに、庭園に設置されている
アリスティド・マイヨール《地中海》1902-05 も、
ルノワール《勝利のヴィーナス》1914 も、
公益財団法人田口福寿会およびセイノーホールディングス株式会社から
寄贈された「田口コレクション」なんだそうです。
岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
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「円空大賞展」過去記事
岐阜県美術館「第9回 円空大賞展」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2018-02-15
岐阜県美術館「円空大賞展」パイプオルガンコンサート
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-02-18
岐阜県美術館「第8回 円空大賞展」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2016-02-15
岐阜県美術館「第7回 円空大賞展」
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2014-02-19
岐阜県美術館「円空大賞展」と田中泯の場踊り(第6回)
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2012-02-18
岐阜県美術館「円空大賞展」へ行く(第4回 円空大賞展)
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2007-03-24
岐阜県美術館(第3回の円空大賞展についてちょっと書いてます)
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2005-09-06