豊田市美術館「ゲルハルト・リヒター」展 [美術]
2023年1月5日(木)、豊田市美術館へ行きました。
今年の初展覧会です。
豊田市美術館も2023年の初開館日。
「ゲルハルト・リヒター」展をやっています。
「今日もっとも注目を集める画家ゲルハルト・リヒター。日本では16年ぶりとなる大規模な展覧会です。」(チラシ裏面の文章)
私、その16年前のゲルハルト・リヒター展、たまたま見たんです。
2005年10月19日、岐阜県美術館後援会の旅行で、
金沢21世紀美術館に行ったんですね。
岐阜県美術館後援会旅行(金沢21世紀美術館他)
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2005-10-28-1
その時に企画展としてやっていたのが「ゲルハルト・リヒター」
私はその時まで、名前も聞いたことがなくて、
ドイツの国民的画家って説明に、へーっ?! と。
8枚のグレイのガラス(この美術館の収蔵作品でもある)が
展示されているだけの部屋は、「‥‥??」というカンジ。
他にも写真や、スキージで画面の絵の具をこすったような作品など、
まるで現代美術を一人で色々試しているといったような画家だ。
って感想をブログに書いてます。
(リヒターのフォト・ペインティングを写真だと思ってたんだなー)
それから現代美術にも少しは関心が出てきて、
リヒターがドイツのケルン大聖堂に制作したステンドグラスを知り、
デジタル時代のステンドグラスってカンジで、
すごくいいなって思いました。
2021年1月、大阪の国立国際美術館へ
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を見に行った時、
コレクション展で、
ゲルハルト・リヒター《STRIP (926-6)》2012年
を見て、これいいなって。
国立国際美術館「コレクション2 米・仏・独・英の現代美術を中心に」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-01-18
2021年4月、愛知県美術館「トライアローグ」展 では、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-05-07
富山県美術館所蔵の
ゲルハルト・リヒター《オランジェリー》1982年
が展示されていたんですが、この作品は私にはどうもわからない。
でも、この作品を1984年に購入した富山県美術館はすごいと。
リヒターの作品は今すごい値段がついているので、
とても購入できるものではないとのこと。
2022年2月、愛知県美術館「ミニマル/コンセプチュアル」展では、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2022-02-11
東京都現代美術館蔵の《エリザベート(CR104-6)》1965年
が展示されていて、無機質な現代美術が並ぶこの展覧会の中で、
この作品だけすごく“絵”っぽく見えました。
「ゲルハルト・リヒター」展、豊田市美術館で開催される前、
東京国立近代美術館で2022年6月7日(火)~10月2日(日)まで
開催されていて、9月4日に放送されたNHK日曜美術館で
「ビルケナウ 底知れぬ闇を描く ゲルハルト・リヒター」
と、取り上げられていて、興味深く見ました。
(あ、今夜の日曜美術館で再放送される!)
豊田市美術館の会期は2022年10月15日(土)~2023年1月29日(日)
行きたいと思いながら、なかなか行けなくて、やっと
年末年始の休みの最後の日に行くことができました。
難しそう(?)な現代美術なのに、結構混んでいました。
年間パスポートを提示して、今日の観覧券をもらいます。
展示会場内、一部を除いて撮影可!
(最初に入った時は人がたくさんいて、写真撮れなかった作品を
帰る前にもう一度入って撮影したものも混じっています)
最初に展示されているのが、チラシにも使われている
フォト・ペインティングの作品
《モーターボート(CR 79a)》1965年
17年前の私ならボケた写真かと思っただろうなーって作品。
広告写真をプロジェクターでキャンバスに投影して描かれたものだそう。
‥‥何故にこの写真? そしてわざわざ絵画として描く意味は?
絵画って何? って問いかけをしているのかな?
チラシと会場に置いてあった作品リスト
作品リストがとても充実していて良かった。
「リヒター作品を読み解くためのキーワード」とか、
読んでもよく理解できないところも多いけど(^^;
鏡そのままって作品? はたしてこれが作品って言えるのか?
タイトルも《鏡(CR 619)》1986年
グレイ・ペインティングの作品
《グレイの縞模様(CR 192-1)》1968年
《8人の女性見習看護師(写真ヴァージョン)(CR 130a)》1966/1971
ある事件で亡くなった8人の女性見習看護師
新聞記事の写真をもとに描かれたフォト・ペインティングを
写真作品にしたもの。
写真を絵にしてそれを写真に撮る。
写真と絵との違いを考えさせられる?
グレイというより黒一色のようにも見える作品が並んでいるけど、、
近づいて見ると、刷毛目が見えたりして、描かれたものだとわかります。
《不法に占拠された家(CR 695-3)》1989年
仕事場の近くにあった不法滞在者の住む家の写真をもとに描かれた作品
そんなことを知ると、不穏な雰囲気が感じられたり‥‥
この雰囲気、好きだなー
《頭蓋骨(CR 548-1)》1983年
「メメント・モリ」死を思え‥‥西洋絵画の伝統である主題
古典的な、冷徹な印象の小さな絵。
奥のコーナーでは、リヒターが撮った映像が上映されていましたが、
16ミリの白黒フィルムによるボケボケの映像で、うーん‥‥?
次の部屋では、
《花(CR 764-2)》1992年
という、写真のような(写真から描いている?)花の絵
花も「ヴァニタス」生の儚さを連想させる西洋絵画の伝統的な主題
の隣に、
スキージで絵具を引きずるように延ばす
「アブストラクト・ペインティング」の作品が展示されています。
この作品は、アルミニウムの上に描かれていて、
ところどころ下のアルミニウムがキラキラと光って素敵。
《アブストラクト・ペインティング(CR 778-4)》1992年
左奥に見える、ドイツ国旗を思わせる
《黒、赤、金(CR 856-7)》1999年 は、
リヒターが、ドイツ統一を記念する新しい連邦議会議事堂への
巨大作品を依頼され、制作の過程から生まれた作品
妻のザビーネを撮影した写真に基づく絵
だけど、どこか匿名の人物のように扱われていると。
左《トルソ(CR 844-1)》1997年 右《水浴者(CR 815-1)》1994年
《ヴァルトハウス(CR 890-1)》2004年
リヒターが休暇の際に家族としばしば訪れたスイスのホテルを
描いた作品とのことですが、建物はほんの少ししか見えてませんね。
ほとんどが森と山。
左はリヒターの娘を描いた《エラ(CR 903-1)》2007年
右《ユースト(スケッチ)(CR 893-2)》2005年
ガラスがスチールの支持体で壁に取り付けられただけの作品。
《アンテリオ・ガラス(CR 876-13)》2002年
アンテリオ・ガラスとは、反射率が高いガラスだそう。
なので、展示されている作品が映りこんだりして面白い。
リヒターの<フォト・ペインティング>が、キャンパスをフィルムとしてそこに画像を定着させようとする行為だとしたら、ガラスや鏡を用いた作品はまだなにも写し込まれていないフィルムのような(あるいは今日的にはイメージセンサーのような)ものと言えるでしょう。置かれた場所やその時々によってあらゆるイメージを映し出す。それはリヒター作品の原理の一つです。
(作品リスト「リヒター作品を読み解くためのキーワード」より)
次の部屋には、周囲の壁にカラーチャートの作品
《4900の色彩(CR 901)》2007年
が展示されています。この作品、見てると色がチカチカと
動き出すような感覚になり、デジタル時代! ってカンジで、
カラフルで素敵!
部屋の中央に置かれた
《8枚のガラス(CR 928)》2012年 を通して見るとまた素敵!!
ガラスの傾きが違うので、映り込みも面白い。
反対側の壁に展示されていたのが、これこそ
デジタル時代ってカンジの
《ストリップ(CR 930-3)》2013~2016年
1枚のアブストラクト・ペインティングの作品をスキャンした
デジタル画像を縦に2等分しつづけ、幅0.3ミリほどの細い色の帯を
鏡うつしにコピーして横方向につなげていくという方法で作られた
デジタルプリントの作品。
この作品も《8枚のガラス(CR 928)》を通して見ると面白い。
人が映りこんだりしていても面白いです。
こちらの壁に展示されていたのが
《アラジン》2010年
何色かのラッカー塗料を板の上に載せ、ヘラや筆でかき混ぜ、
ガラス板を上から載せて軽く圧すことで作られています。
表面はガラスなので、平滑で、塗料の色が鮮やかです。
色の選択やかき混ぜの度合いといった作家の意図と、
ガラス面に圧される偶然によって出来上がる作品。
そして、次の部屋に、この展覧会の目玉であり、
日曜美術館でも取り上げられていた
《ビルケナウ(CR 937-1―4)》2014年 が展示されています。
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で密かに撮られた
4枚の写真を出発点にした、画家の集大成的な作品。
もとになったゾンダーコマンド(特別労務班)によって撮影された
4枚の写真も展示されていました(この写真は撮影禁止)
これらの写真を、フォト・ペインティングの手法で
キャンバスに描いたあと、
スキージによって絵具が塗り重ねられて制作されたそう。
黒と白、ところどころに赤と緑の絵具がスキージで延ばされたり、
こすられたり、ひっかかれたりして塗りこめられていて、
最初に描かれたという絵の痕跡は全くかき消されています。
説明なしにこの作品を見れば、
他のアブストラクト・ペインティングと区別つきませんよね。
この部屋、4枚の《ビルケナウ》が左側の壁に展示されて、
それと同じ絵が向かい側にある? と、近づいて見ると、
右側の壁に展示された作品は、表面がツルツルしていることで、
写真であることがわかります。
1枚の絵を4つのパネルに分けて、間を少しだけ開けて
展示されています。この隙間は十字架をイメージしてるのかな?
正面の壁には、大きな《グレイの鏡(CR 955)》2019年
《ビルケナウ》の作品や鑑賞者が映りこみます。
この展示パターンは、リヒターが指定したそうですね。
写真による複製、鏡に映ることによる複製?
写真に油絵具を塗りつけたシリーズ「オイル・オン・フォト」
1階の展示室を出て、2階の展示室1へ
アブストラクト・ペインティングの作品
《ビルケナウ》を見た後だと、とてもカラフルに感じる。
「オイル・オン・フォト」の作品もありました。
3階へ上がって、小さな展示室2には、
ドローイングの作品が
あ、これらの作品、好きだなー!
(私は《ビルケナウ》含め、アブストラクト・ペインティングが
イマイチわからない‥‥)
展示室3
《アブストラクト・ペインティング(CR 951-4》2017年
最後の《アブストラクト・ペインティング》作品にするとの
《アブストラクト・ペインティング(CR 952-4)》2017年
最後は、豊田会場のみ展示される2022年の最新作(の写真)
《ムード》
水彩画(の写真)だとか、ほんわかした滲みが幻想的でいい感じ。
展示室1を見下ろすことができます。
よくわからないながらも、この展覧会良かった。
リヒターの60年にわたる画業の大規模な回顧展。
ゲルハルト・リヒター財団と作家本人が所蔵する作品を中心に
展示されているだけあって、多岐にわたる作品が展示され、
リヒターの軌跡がわかります。
ゲルハルト・リヒター財団は、2019年12月9日に創設されました。今回展示される《ビルケナウ》(nos.64~67)を散逸させないことが、財団設立のきっかけとなったそうです。財団が所蔵する作品はリヒターの画業の初期から近作までを含み、それらの多くが、今後、ベルリンの国立美術館に永久寄託される予定になっています。(作品リスト「はじめに」より)
図録は3,900円とちょっと高かったので、迷ったんですが、
リヒターの特集が載っている「美術手帖2022年7月号」を購入。
1,800円+税で1,980円のところ、豊田市美術館の年間パスポートで、
5%引きの1,881円になりました!
(年間パスポート、なんておトクなんでしょう!!!)
この後、豊田市美術館のコレクション展「反射と反転」などを見たり、
カフェでゲルハルト・リヒター展限定デザートもいただきましたが、
次の記事で――
豊田市美術館: https://www.museum.toyota.aichi.jp/
ゲルハルト・リヒター展公式ホームページ: https://richter.exhibit.jp/
今年の初展覧会です。
豊田市美術館も2023年の初開館日。
「ゲルハルト・リヒター」展をやっています。
「今日もっとも注目を集める画家ゲルハルト・リヒター。日本では16年ぶりとなる大規模な展覧会です。」(チラシ裏面の文章)
私、その16年前のゲルハルト・リヒター展、たまたま見たんです。
2005年10月19日、岐阜県美術館後援会の旅行で、
金沢21世紀美術館に行ったんですね。
岐阜県美術館後援会旅行(金沢21世紀美術館他)
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2005-10-28-1
その時に企画展としてやっていたのが「ゲルハルト・リヒター」
私はその時まで、名前も聞いたことがなくて、
ドイツの国民的画家って説明に、へーっ?! と。
8枚のグレイのガラス(この美術館の収蔵作品でもある)が
展示されているだけの部屋は、「‥‥??」というカンジ。
他にも写真や、スキージで画面の絵の具をこすったような作品など、
まるで現代美術を一人で色々試しているといったような画家だ。
って感想をブログに書いてます。
(リヒターのフォト・ペインティングを写真だと思ってたんだなー)
それから現代美術にも少しは関心が出てきて、
リヒターがドイツのケルン大聖堂に制作したステンドグラスを知り、
デジタル時代のステンドグラスってカンジで、
すごくいいなって思いました。
2021年1月、大阪の国立国際美術館へ
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を見に行った時、
コレクション展で、
ゲルハルト・リヒター《STRIP (926-6)》2012年
を見て、これいいなって。
国立国際美術館「コレクション2 米・仏・独・英の現代美術を中心に」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-01-18
2021年4月、愛知県美術館「トライアローグ」展 では、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-05-07
富山県美術館所蔵の
ゲルハルト・リヒター《オランジェリー》1982年
が展示されていたんですが、この作品は私にはどうもわからない。
でも、この作品を1984年に購入した富山県美術館はすごいと。
リヒターの作品は今すごい値段がついているので、
とても購入できるものではないとのこと。
2022年2月、愛知県美術館「ミニマル/コンセプチュアル」展では、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2022-02-11
東京都現代美術館蔵の《エリザベート(CR104-6)》1965年
が展示されていて、無機質な現代美術が並ぶこの展覧会の中で、
この作品だけすごく“絵”っぽく見えました。
「ゲルハルト・リヒター」展、豊田市美術館で開催される前、
東京国立近代美術館で2022年6月7日(火)~10月2日(日)まで
開催されていて、9月4日に放送されたNHK日曜美術館で
「ビルケナウ 底知れぬ闇を描く ゲルハルト・リヒター」
と、取り上げられていて、興味深く見ました。
(あ、今夜の日曜美術館で再放送される!)
豊田市美術館の会期は2022年10月15日(土)~2023年1月29日(日)
行きたいと思いながら、なかなか行けなくて、やっと
年末年始の休みの最後の日に行くことができました。
難しそう(?)な現代美術なのに、結構混んでいました。
年間パスポートを提示して、今日の観覧券をもらいます。
展示会場内、一部を除いて撮影可!
(最初に入った時は人がたくさんいて、写真撮れなかった作品を
帰る前にもう一度入って撮影したものも混じっています)
最初に展示されているのが、チラシにも使われている
フォト・ペインティングの作品
《モーターボート(CR 79a)》1965年
17年前の私ならボケた写真かと思っただろうなーって作品。
広告写真をプロジェクターでキャンバスに投影して描かれたものだそう。
‥‥何故にこの写真? そしてわざわざ絵画として描く意味は?
絵画って何? って問いかけをしているのかな?
チラシと会場に置いてあった作品リスト
作品リストがとても充実していて良かった。
「リヒター作品を読み解くためのキーワード」とか、
読んでもよく理解できないところも多いけど(^^;
鏡そのままって作品? はたしてこれが作品って言えるのか?
タイトルも《鏡(CR 619)》1986年
グレイ・ペインティングの作品
《グレイの縞模様(CR 192-1)》1968年
《8人の女性見習看護師(写真ヴァージョン)(CR 130a)》1966/1971
ある事件で亡くなった8人の女性見習看護師
新聞記事の写真をもとに描かれたフォト・ペインティングを
写真作品にしたもの。
写真を絵にしてそれを写真に撮る。
写真と絵との違いを考えさせられる?
グレイというより黒一色のようにも見える作品が並んでいるけど、、
近づいて見ると、刷毛目が見えたりして、描かれたものだとわかります。
《不法に占拠された家(CR 695-3)》1989年
仕事場の近くにあった不法滞在者の住む家の写真をもとに描かれた作品
そんなことを知ると、不穏な雰囲気が感じられたり‥‥
この雰囲気、好きだなー
《頭蓋骨(CR 548-1)》1983年
「メメント・モリ」死を思え‥‥西洋絵画の伝統である主題
古典的な、冷徹な印象の小さな絵。
奥のコーナーでは、リヒターが撮った映像が上映されていましたが、
16ミリの白黒フィルムによるボケボケの映像で、うーん‥‥?
次の部屋では、
《花(CR 764-2)》1992年
という、写真のような(写真から描いている?)花の絵
花も「ヴァニタス」生の儚さを連想させる西洋絵画の伝統的な主題
の隣に、
スキージで絵具を引きずるように延ばす
「アブストラクト・ペインティング」の作品が展示されています。
この作品は、アルミニウムの上に描かれていて、
ところどころ下のアルミニウムがキラキラと光って素敵。
《アブストラクト・ペインティング(CR 778-4)》1992年
左奥に見える、ドイツ国旗を思わせる
《黒、赤、金(CR 856-7)》1999年 は、
リヒターが、ドイツ統一を記念する新しい連邦議会議事堂への
巨大作品を依頼され、制作の過程から生まれた作品
妻のザビーネを撮影した写真に基づく絵
だけど、どこか匿名の人物のように扱われていると。
左《トルソ(CR 844-1)》1997年 右《水浴者(CR 815-1)》1994年
《ヴァルトハウス(CR 890-1)》2004年
リヒターが休暇の際に家族としばしば訪れたスイスのホテルを
描いた作品とのことですが、建物はほんの少ししか見えてませんね。
ほとんどが森と山。
左はリヒターの娘を描いた《エラ(CR 903-1)》2007年
右《ユースト(スケッチ)(CR 893-2)》2005年
ガラスがスチールの支持体で壁に取り付けられただけの作品。
《アンテリオ・ガラス(CR 876-13)》2002年
アンテリオ・ガラスとは、反射率が高いガラスだそう。
なので、展示されている作品が映りこんだりして面白い。
リヒターの<フォト・ペインティング>が、キャンパスをフィルムとしてそこに画像を定着させようとする行為だとしたら、ガラスや鏡を用いた作品はまだなにも写し込まれていないフィルムのような(あるいは今日的にはイメージセンサーのような)ものと言えるでしょう。置かれた場所やその時々によってあらゆるイメージを映し出す。それはリヒター作品の原理の一つです。
(作品リスト「リヒター作品を読み解くためのキーワード」より)
次の部屋には、周囲の壁にカラーチャートの作品
《4900の色彩(CR 901)》2007年
が展示されています。この作品、見てると色がチカチカと
動き出すような感覚になり、デジタル時代! ってカンジで、
カラフルで素敵!
部屋の中央に置かれた
《8枚のガラス(CR 928)》2012年 を通して見るとまた素敵!!
ガラスの傾きが違うので、映り込みも面白い。
反対側の壁に展示されていたのが、これこそ
デジタル時代ってカンジの
《ストリップ(CR 930-3)》2013~2016年
1枚のアブストラクト・ペインティングの作品をスキャンした
デジタル画像を縦に2等分しつづけ、幅0.3ミリほどの細い色の帯を
鏡うつしにコピーして横方向につなげていくという方法で作られた
デジタルプリントの作品。
この作品も《8枚のガラス(CR 928)》を通して見ると面白い。
人が映りこんだりしていても面白いです。
こちらの壁に展示されていたのが
《アラジン》2010年
何色かのラッカー塗料を板の上に載せ、ヘラや筆でかき混ぜ、
ガラス板を上から載せて軽く圧すことで作られています。
表面はガラスなので、平滑で、塗料の色が鮮やかです。
色の選択やかき混ぜの度合いといった作家の意図と、
ガラス面に圧される偶然によって出来上がる作品。
そして、次の部屋に、この展覧会の目玉であり、
日曜美術館でも取り上げられていた
《ビルケナウ(CR 937-1―4)》2014年 が展示されています。
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で密かに撮られた
4枚の写真を出発点にした、画家の集大成的な作品。
もとになったゾンダーコマンド(特別労務班)によって撮影された
4枚の写真も展示されていました(この写真は撮影禁止)
これらの写真を、フォト・ペインティングの手法で
キャンバスに描いたあと、
スキージによって絵具が塗り重ねられて制作されたそう。
黒と白、ところどころに赤と緑の絵具がスキージで延ばされたり、
こすられたり、ひっかかれたりして塗りこめられていて、
最初に描かれたという絵の痕跡は全くかき消されています。
説明なしにこの作品を見れば、
他のアブストラクト・ペインティングと区別つきませんよね。
この部屋、4枚の《ビルケナウ》が左側の壁に展示されて、
それと同じ絵が向かい側にある? と、近づいて見ると、
右側の壁に展示された作品は、表面がツルツルしていることで、
写真であることがわかります。
1枚の絵を4つのパネルに分けて、間を少しだけ開けて
展示されています。この隙間は十字架をイメージしてるのかな?
正面の壁には、大きな《グレイの鏡(CR 955)》2019年
《ビルケナウ》の作品や鑑賞者が映りこみます。
この展示パターンは、リヒターが指定したそうですね。
写真による複製、鏡に映ることによる複製?
写真に油絵具を塗りつけたシリーズ「オイル・オン・フォト」
1階の展示室を出て、2階の展示室1へ
アブストラクト・ペインティングの作品
《ビルケナウ》を見た後だと、とてもカラフルに感じる。
「オイル・オン・フォト」の作品もありました。
3階へ上がって、小さな展示室2には、
ドローイングの作品が
あ、これらの作品、好きだなー!
(私は《ビルケナウ》含め、アブストラクト・ペインティングが
イマイチわからない‥‥)
展示室3
《アブストラクト・ペインティング(CR 951-4》2017年
最後の《アブストラクト・ペインティング》作品にするとの
《アブストラクト・ペインティング(CR 952-4)》2017年
最後は、豊田会場のみ展示される2022年の最新作(の写真)
《ムード》
水彩画(の写真)だとか、ほんわかした滲みが幻想的でいい感じ。
展示室1を見下ろすことができます。
よくわからないながらも、この展覧会良かった。
リヒターの60年にわたる画業の大規模な回顧展。
ゲルハルト・リヒター財団と作家本人が所蔵する作品を中心に
展示されているだけあって、多岐にわたる作品が展示され、
リヒターの軌跡がわかります。
ゲルハルト・リヒター財団は、2019年12月9日に創設されました。今回展示される《ビルケナウ》(nos.64~67)を散逸させないことが、財団設立のきっかけとなったそうです。財団が所蔵する作品はリヒターの画業の初期から近作までを含み、それらの多くが、今後、ベルリンの国立美術館に永久寄託される予定になっています。(作品リスト「はじめに」より)
図録は3,900円とちょっと高かったので、迷ったんですが、
リヒターの特集が載っている「美術手帖2022年7月号」を購入。
1,800円+税で1,980円のところ、豊田市美術館の年間パスポートで、
5%引きの1,881円になりました!
(年間パスポート、なんておトクなんでしょう!!!)
この後、豊田市美術館のコレクション展「反射と反転」などを見たり、
カフェでゲルハルト・リヒター展限定デザートもいただきましたが、
次の記事で――
豊田市美術館: https://www.museum.toyota.aichi.jp/
ゲルハルト・リヒター展公式ホームページ: https://richter.exhibit.jp/
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