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愛知県美術館「曽我蕭白」展 [美術]

10月14日(木)、愛知県美術館へ行きました。

「曽我蕭白
 奇想ここに極まれり」が開催されています。
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「奇想の画家」として、近年注目を集めている曽我蕭白
(チラシ中面)
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愛知県美術館では、2013年に「円山応挙―江戸時代絵画 真の実力者」
2017年に「長沢芦雪-京のエンターテイナー」を開催してます。

私、2013年3月、円山応挙展で愛知県美術館友の会に入会したんですね。
愛知県美術館「円山応挙展」: https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2013-03-12
「円山応挙展」藤花図屏風を見てきました: https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2013-04-09

長沢芦雪展も良かったけど、ブログに感想が書けておりません。

で、それに続く江戸絵画の展覧会。
コロナ対策で土日祝日の混雑を避けるため、
平日と土日祝では観覧料が違います。
(チラシ裏面)
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が、友の会の会員証ではどちらでも入ることができます。

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愛知県美術館のある愛知芸術文化センターへのオアシス21側入口

近年人気の曽我蕭白で、私は、今はない名古屋ボストン美術館で
ボストン美術館所蔵の日本美術を紹介した展覧会で見たりしてたんですが、

名古屋ボストン美術館「日本美術の至宝」展(前期):
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2012-08-13

名古屋ボストン美術館「日本美術の至宝」展(後期):
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2012-12-07

確かに独創的な迫力のある絵だけど、なんかグロテスクなカンジで、
私は正統派な応挙や、キレイな琳派が好きかも‥‥なんて思ってたんですが

展覧会の最初に展示してあった《群仙図屏風》1764年 に驚きました。
スゴイ!! 約250年前に描かれたものとは思えない
極彩色で細部の執拗な書き込み! 仙人たちの異様な風体!
細かいひだや、縄を巻いたような衣装の描写
細い線で描き込まれた波、
鯉のリアルさや、不思議な動物‥‥いつまでも見ていられるというか、
絵の前を何度もウロウロして見てしまいました。
そして、じっくりと見ていられる程の混み具合で(私には)よかった。
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単眼鏡を手にしてじっくりと見てる方とか、
大学の授業らしい学生たちとかもいましたが、
広い展示室なので、それほどストレスを感じずに鑑賞することができました。
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この、蕭白の代表作とされる文化庁所蔵の六曲一双《群仙図屏風》
展示期間が10月31日までだそうで、見られて良かった。
展示替えが前期:10/9-10/31 中期:11/2-11/16 後期:11/17-11/21
とのことで、この《群仙図屏風》や、私が、
蕭白にしては上品(^^; な色使いで、菊をはじめ様々な植物や鶉が
リアルに描かれていて見飽きないなーって思った
香雪美術館所蔵の《鷹図》も、10月31日までとのこと。

《群仙図屏風》の隣に展示されていた
二曲一隻《柳下鬼女図屏風》東京藝術大学蔵 は、
いくら鬼だからって、この顔はスゴイ‥‥と。


10月14日(木)に行ったのは(もちろんパートが休みだったことと)
友の会の特別鑑賞会があったから。
昼の部(10:30~11:00)と、夜の部(17:00~18:30)があるんですが、
私には10時半までに着くのはちょっと難しいので。
12階の部屋での解説の後、閉館後の展示室での鑑賞もあるんですが、
解説を聞く前に一通り見ておきたいと思ったので、
14時過ぎ頃に愛知県美術館へ行きました。

学芸員の由良濯(ゆら あろう)さんのお話、とても興味深かった。
昼の部は30分の予定が大幅に伸びてしまったので、
図録に詳しい説明を載せてるので読んでくださいと、
かなり絞ってお話されたんですが、
それでも蕭白の絵がまた違って見えてきました。

鷲が猿を襲っている六曲一隻の《鷲図屏風》1758-61年
鷲の羽がパターンのように細かく描かれているし、
鷲の頭の毛(?)やくちばしの穴(?)とか、
なんだか現代のマンガの描写みたいーーなんて見たんですが、

襲われている猿の股に描かれているのは、
猿の生殖器ではなく、女性のものだ
つまりこれは、レイプシーンなんだと!
そう言われて見ると、猿の足をつかんでいる鷲の爪も
なんだかアブナく見えてくる!

鷲が身分の高い人物を表している風刺画かもしれない。
いつも落款を大きく書く蕭白が、この作品では
他の絵師にも用いられた号と氏を小さく記して、
蕭白の号は印で押していると。


旧永島家襖絵全44面がずらーっと並んでいるのも圧巻で、
広い展示室を持つ愛知県美術館ならではなんですが、
(襖の引手の高さが微妙に違っているー(^o^)

その内の《竹林七賢図》八面 1764年頃 についての解説では、
七賢のうち5人が家の中にいて、外に2人。
竹に積もった雪を払う童子は、謡曲「竹雪」に出てくる
継母に竹に積もった雪を払うように外に出され、
終わっても家に入れてもらえず凍死してしまった童子で、
実母たちが亡骸を見つけて悲嘆に暮れている前に
竹林の七賢が現れて童子を生き返らせるという話を
踏まえているのではと。

左端で両手に息を吐く高士の顔、
三重県立美術館公式ツイッターのプロフィール画像だ!
https://twitter.com/mie_kenbi

蕭白の生涯についてはよくわかっていないところも多いようですが、
1730年に京都の商家に生まれ、伊勢地方に2回以上、播州高砂に2回
滞在したことがわかっていて、伊勢地方に多くの作品が残っています。

旧永島家襖絵は三重県多気郡明和町の伊勢街道沿いの斎宮の家に
伝わった襖絵で、三重県立美術館所蔵となっています。

他にも三重県立美術館蔵の絵、多いですね。

三重県立美術館蔵《林和靖図屏風》1760年
林和靖(りん なせい)は、梅と鶴を愛した中国北宋の詩人で
生涯独身だったが、この絵に描かれた林和靖は高士らしからぬ視線を
童子に向けている。聖人を卑俗に描くことで揶揄する狙いがあったのではと。

蕭白の絵は、中国の故事などの教養を踏まえて描かれているので、
わかる人が見ると、また違った面白さや、描かれた意図も
わかるんでしょうね。図録に《群仙図屏風》の読み解き
――描かれている仙人が誰で、どんな意味があるのか――
最新の論考が載っていて興味深いです。
仙人についての知識がない私にはイマイチ理解できませんが。

円山応挙展で、当時の知識人から、応挙は「見てわかる絵」だと
批判されたってことを知って、え? それって悪いことなの? って
驚いたんですが、中国の故事などの予備知識がなくても愉しめる
応挙の絵は時代に対して新しかったんだそう。

蕭白と応挙は同時代に活躍しているんですね。
曽我蕭白(1730-1781)
円山応挙(1733-1795)
なので、蕭白は応挙に対してかなりのライバル意識があったようで、
「画が欲しいなら我に頼め。絵図が欲しいなら応挙がいいだろう」と
言ったとか。

ちなみに、伊藤若冲(1716-1800)も同時代。
すごい時代だったんだー


この展覧会、最初に
プロローグ 奇想の絵師、蕭白

《群仙図屏風》や《雪山童子図》など、
奇想の絵師って蕭白のイメージを代表する作品が展示され


第一章 水墨の技巧と遊戯

蕭白の画業初期の作品が展示され、
蕭白の師ではないかとされる高田敬輔の作品も展示されていました。


第二章 ほとばしる個性、多様化する表現

旧永島家襖絵をはじめとする蕭白35歳頃の作品
チラシ表面に使われている朝田寺の《唐獅子図》双幅が
描かれた時の(本堂の左右壁面に貼られていた)ように
向かい合わせに展示されています。


第三章 絵師としての成功、技術への確信

38歳の蕭白が播州高砂にいたことがわかっているそう。
二度目の播州滞在で、この地方には蕭白の門人も多いとのこと。


第四章 晩年、再び京へ

43歳頃から没する52歳まで、蕭白は京都に定住
画風も落ち着いて上品になってきたカンジ。

山水画の建物が細かく、定規で引いたような線で
キッチリと描かれているなーって。

メトロポリタン美術館蔵の《石橋図》1778年 が面白い!
ものすごい数の獅子が石橋をめざして登ってて、
石橋から落ちてる獅子も(^o^;

蕭白の書簡も展示されてて、流麗な字の中にとっくりの絵が
描かれているのは、今も「白雪」で知られる小西酒造へ
酒の催促をした手紙で、もう一通は
酒が届いたと、秀吉の辞世の句をもじった一首を添え、
梅の花の一枝を載せた樽の横で大きな盃で飲む自分を描いてて、
丸坊主なのもカワイイ。蕭白の酒好きは有名だったそう。


展覧会出口のところに、しりあがり寿さんが
蕭白のエピソードをマンガにしたのがあって面白かった。
図録には全6話が載ってて楽しい。

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図録、《群仙図屏風》の詳しい読み解きや解説も丁寧で、
とても充実しています。 2,300円(税込)
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「曽我蕭白」展、描かれている中国の故事などの解説を読んだりして
思ったより時間かかって、コレクション展は途中までになってしまった。

コレクション展の洋画特集は、作品の額の裏に書かれた情報なども
解説してあってこれも興味深いんだけど、こっちも時間かかるー(^^;

蕭白は展示替えがあるのでまた行くつもりなので、
コレクション展はまたその時にでもじっくり‥‥


展覧会公式サイト: https://static.chunichi.co.jp/chunichi/pages/event/soga_shohaku/

愛知県美術館: https://www-art.aac.pref.aichi.jp/

中日新聞の記事
10月10日(日)
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10月15日(金)
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中日新聞 岐阜総合版のコラム
10月14日(木)
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10月15日(金)
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10月16日(土)
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2つ折りでない先行チラシ(まだ観覧料が載ってない)
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