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岐阜県現代陶芸美術館「超絶技巧、未来へ!」 [美術]

ずいぶんブログが書けてません~~
ダンナの自治会長の仕事が3月で終わるので、
引継ぎに向けて、資料作成や整理に時間とられていて‥‥

3月12日(日)に行った、岐阜県現代陶芸美術館の
「開館20周年記念
 超絶技巧、未来へ!
 明治工芸とそのDNA」展のことを
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岐阜県現代陶芸美術館で開催される
「超絶技巧」展も第3弾となりますね。
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‥‥あー、私全て見て図録も買ってるのに、
  ブログに感想が書けてない(T.T)

第1弾は、2015年9月12日(土)~2015年12月6日(日)に開催された
「超絶技巧!明治工芸の粋」
私は11月22日(日)に見に行ってます。
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超絶技巧による精緻な明治の工芸は、海外輸出用であったため、
かえって日本ではあまり知られていませんでした。
そんな明治工芸に魅せられた村田理如(まさゆき)氏の
収集による京都・清水三年坂美術館の所蔵品が展示されていました。

中面のイラストは、山口晃(クリックで拡大します)
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明治の工芸のすごさに驚いた展覧会でした。
並河靖之の細かな有線七宝は正に超絶技巧!、
ホンモノとしか見えない安藤緑山の象牙彫はスゴかった!!

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第2弾が、2018年6月30日(土)~8月26日(日)に開催された
「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」
私は7月13日(金)に行きました。
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大好評だった第1弾に続き、有線七宝の並川靖之、
無線七宝によるぼかしが日本画のような濤川惣助をはじめ、
金工、漆工、木彫・牙彫、自在、陶磁、刺繍絵画と、
明治の工芸が展示された後に、

会場の記念撮影パネル(^▽^)
第2弾でも、安藤緑山の象牙彫のリアルさは驚きでした。
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そんな明治の超絶技巧を受け継ぐ
現代作家の作品が展示されていました。

撮影可だった展示室前の作品
本郷真也《流刻》2017年
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前原冬樹の驚異的な一木造りの作品がスゴかった。
現代の作家たちの超絶技巧もスゴイ!って感心した展覧会でした。


そして第3弾となる今回は、明治工芸のDNAを受け継ぐ
現代作家の作品が中心に展示されています。
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岐阜県美術館の後援会員証を提示してチケットをもらいます。
最初と最後の部屋は撮影可!!
(全ての展覧会場内で撮影できる
「夕暮れミュージアム 美術館deインスタ映え!」なんて
イベントもあったんですが、都合が合わなくて‥‥)


撮影可の最初の部屋に展示されていたのは
(出品リストや図録の順番とは違ってました)

[陶磁]稲崎栄利子 Inazaki Eriko(1972- )

《Amrita》2023
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最初に目に入ったこの作品、レースかと思いましたよ!
磁器でできた極小のリングでできていて、
それぞれ接着することなく連結しているので、
(磁器でそれをするのって、すごい難しいことなんじゃ?!)
布のように曲げたり捻ったり畳んだりできるんだそう!!

《Euphoria》2023
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[漆工]池田晃将 Ikeda Terumasa(1987- )

《百千金字塔香合》2022
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チラシ表面にも使われているピラミッドのような形の作品
実物はとても小さい(7.3×4.9×4.9cm)のに驚きます。
なので、表面のびっしり並んだ数字が螺鈿でできている
ってことは、どれだけ細かな作業なんだ?!!

これもすごく小さい(4.9×5.5×5.5cm)作品
《五乗電脳之間飾箱》2022
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見る角度でキラキラと輝く様子は、
まるで電子部品のようにも見えました。

この作家の作品のなかでは最大級の大きさのもの
《Artifact03》2019
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キラキラ光る細かな文字が浮かび上がる様は、
遺跡のようにも見えて、幻想的で荘厳な雰囲気。
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[木彫]福田亨 Fukuda Toru(1994- )
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チラシ表面に一部が使われている
《吸水》2022
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アゲハチョウが水を吸う様子が木彫で作られています。
それだけでも、アゲハチョウの薄い羽がリアルって驚くのに、
これ、着色をしていないんだそう!!
美しい羽の色や模様は、木の色を生かして、
それぞれの部分にはめ込んだ「立体木象嵌(もくぞうがん)」
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そして、水滴は板全体を掘り下げて、水滴の部分を研磨して
ツヤを出しているとのこと。
‥‥そこまでストイックにしなくても‥‥なんて気も
しないでもないんだけど、とにかくスゴイ超絶技巧であります。
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《Niwa-カタクリ》2023
ヒメギフチョウとカタクリ
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台が透かし彫りになってるので、下に映った影も面白い。
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[水墨画]山口英紀 Yamaguchi Hidenori(1976- )
写真ではなく、水墨で描かれています
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第2弾の「驚異の超絶技巧!」でも紹介されてましたね。
今回さらに描写が精緻になっててスゴイけど、なんか、
水墨の良さみたいなのがあまり感じられないような‥‥


ここからは写真撮影禁止だったので、画像なしです。

[漆工]樋渡賢 Hiwatashi Ken(1977- )

《羽根蒔絵大棗》2022
《羽根蒔絵杯》2022
《蒔絵細棗「月下蝙蝠」》2022 が展示されていました。

「羽根蒔絵」とは、
明治時代の蒔絵師・白山松哉(しらやま しょうさい)が得意とした
超絶技巧で、桁違いの精緻さゆえ、松哉以外には再現不可能と
思われていたが、樋渡の手で現代によみがえった。

ふわふわとした羽根の表現がスゴイ!
「月下蝙蝠」のシャープなデザインが気に入りました。

白山松哉の《羽根蒔絵香合》《羽根蒔絵茶器》も展示されていました。
2点とも清水三年坂美術館蔵
再現不能って言われたのもわかる超絶技巧!


次の部屋のガラスケースに展示されていた絵には驚きました。
え?! これ渡辺省亭展のメインビジュアルに使われていた
《牡丹に蝶の図》だよね?!
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岡崎市美術博物館「渡辺省亭」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-06-09

その隣に展示されていた
[漆工]彦十蒔絵 若宮隆志 Hikoju Makie Wakamiya Takashi(1964- )
《草花研ぎ出し蒔絵 渡辺省亭図引用》2022

の参考として展示されていたんだけど、ホンモノじゃん!
また見ることができて嬉しいなぁ!
省亭は濤川惣助の七宝の原画を描いているんですよね。

彦十蒔絵は、漆芸家・若宮隆志がプロデュースする
輪島の漆芸職人集団とのことで、
渡辺省亭図を引用した作品のような
伝統的な研ぎ出し蒔絵の作品から、

《「ねじが外れている」モンキー、工具箱、ねじ》2023 や
《金槌》2023
など、日用品を漆工で再現した「見立漆器」や、

漆工で七宝に見えるように工夫した
《琺瑯彩(ほうろうさい)菊唐草蒔絵》2022

漆が紫外線に弱いことを利用して、直射日光に当てて
血管が浮き出るような文様を浮かび上がらせた
《Ultraviolet canvas》2022
なんて実験的な作品も展示されていました。


[木彫]松本涼 Matsumoto Ryo(1969- )

朽ちていく葡萄の実を彫った《黄昏》2023
鑑賞用の大菊を彫った《涅槃》2021
笑うドクロ《髑髏柳》2020 など、

この人の作品は死を連想させますね。
何故こんなに薄く木を彫るのか?
彫りすぎて壊してしまいそうな危うさを感じる。
写実というより、樟の木目まで彫っているから、
凹凸のある紙で作られているようにも見えてしまう。
制作の様子がモニタで映されていましたが、
大きな木材がこんなに削られちゃって‥‥みたいにも思った。

岐阜県現代陶芸美術館「小村雪岱スタイル」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-02-04
で、展示されていて撮影可だった写真
松本涼《枯薔薇》2019年 と、《折鶴》2019年
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続くスペースに、安藤緑山のリアルな牙彫
《柿》《松竹梅》←松ぼっくりに竹の子に梅の実(^▽^)
《無花果》《貝尽》とホンモノそっくりのリアルさには、
第1弾「超絶技巧! 明治工芸の粋」で見て驚いたんですよね。
その展覧会があった2015年当時は生没年もよくわからない
「謎の牙彫師」だったんですが、第2弾の展覧会開催直後に
遺族から連絡があり、調査の結果、
明治18年(1885)-昭和34年(1959)という生没年が確定し、
緑山を「Rokuzan」と表記されてましたが、
今回「Ryokuzan」と改められています。


で、反対側のケースも安藤緑山? って見たら、

[木彫]岩崎努 Iwasaki Tsutomu(1972- )

《さくらんぼ》2021 《無花果》2020 《竹の子》2022
《嘉来(柿)2019》

と、安藤緑山にモチーフもリアルさもそっくりだけど、
木彫なんですよね。図録の解説によると
シャープな細密描写を試みる際、素材の特性としては牙彫のほうか比較的適していると言われており、木彫になるとそのぶん難易度が上がる。」とのこと。


次の部屋に
[ガラス]青木美歌 Aoki Mika(1981-2022)

《あなたと私の間に》2017
ガラステーブルの上に、粘菌のような形が増殖し、
下からは根が下に向かって延びています。

えっ?! この方、亡くなられたの?
青木美歌さんのガラスの作品、
9岐阜県現代陶芸美術館で2021年1月から開催された
「アンドリュー・ワイエスと丸沼芸術の森コレクション展」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-02-08
で見て、ガラスという無機物で、有機的な形を作ってるのが
面白いなーって見たんですよね。

その時に撮影した写真
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《Mutation》2017年
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[ペーパークラフト]小坂学 Kosaka Manabu(1979- )

超絶技巧の展覧会でペーパークラフト? って
ちょっと意外なカンジもしたけど、見たら納得。
ケント紙によるスーパーリアルな造形

ラジオの精密な配線や、靴の布とゴムの質感の違いなど、
よくこれを紙で再現しようと思ったなって。


[切り絵]盛田亜耶 Morita Aya(1987- )

ボッティチェリへのオマージュ《ヴィーナスの誕生Ⅱ》2022
カラヴァッジョの作品をベースにした《マグダラのマリア》2022

すっごい超絶技巧ってのはわかるけど、なんか‥‥
人体の表現がグロテスク(それは作家の意図かもしれないけど)


[金工]吉田泰一郎 Yoshida Taiichiro(1989- )

《夜霧の犬》2020
金属が蝶や花などの形に切り抜かれ、それらの破片が
再構築されて洋犬の形をつくっています。ゴージャス!

《三毛猫》2021 も金属の破片を組み合わせて作られています。

《粗》2021 は、鯛の頭がリアルに再現されてる!


[金工]長谷川清吉 Hasegawa Seikichi(1982- )

梱包に使うプチプチがリアルに再現された
《銀製 梱包材》2023

紙のショッピングバッグを銅で再現した
《銅製 紙袋》2023

など、ありふれた日常製品を金工で作っていて面白い。


[刺繍]蝸牛あや Cagiu Aya(1978- )

刺繍糸の光沢が幻想的な雰囲気を作り出してて、
それがこの作家の作品に合ってるとは思ったけど、

‥‥私は、明治の刺繍作品の格調高さの方が好きだなー。


そして今回も明治工芸の超絶技巧作品が展示されていました。

常連(笑)の並川靖之(1845-1927)や、濤川惣助(1847-1910)の七宝作品
濤川惣助の七宝は、渡辺省亭の原画に基づくものが多いんですね。
無線七宝のぼかしが日本画の雰囲気をよく再現しています。

今回、陶磁で岐阜県現代陶芸美術館所蔵の
成瀬誠志(1845-1923)の作品が3点展示されていて嬉しかった。

そうそう、この人の作品スゴイなーって見てたんですよね。
2021年5月に「Human and Animal 土に吹き込まれた命」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-06-03
見に行った時、コレクション展の新収蔵作品で展示されてて、
撮影可でした。
成瀬誠志《上絵金彩人物図花瓶》19世紀後期-20世紀前期
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刺繍絵画は艶やかな絹糸の質感が魅力の一つだと思うんですが、

竹内栖鳳が下絵を描いたという
《枯木群雀之図 下絵:竹内栖鳳》清水三年坂美術館蔵
は、マットで落ち着いた雰囲気。
竹屋町繍いという技法が使われているのだそう。

刺繍絵画はほとんどが無銘ですね。

円山応挙の虎図を刺繍絵画にした《虎図》
いいなぁー、糸で表現された虎の毛並みがとても素敵。

隣に円山応挙の《虎図》が(刺繍の原画とは違う)
さりげなく展示されていたのも驚きでしたけど。


そしてっ! あ、これ、Eテレ「日曜美術館」2022年7月3日放送
「現代の超絶技巧」で見て驚いた作品だ!!
そして、ここから撮影OK!!

[木彫]大竹亮峯 Otake Ryoho(1989- )

《月光》2020
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花器に水を注ぐと、鹿角で花弁が作られたこの月下美人の花は
ゆっくりと開くんだそう!
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《Innocent》2023
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人の手の動きまで再現しようとする作品!
現在制作中とかで、図録には手しか載ってないのに、
展示作品は、腕がついてます。


《眼鏡饅頭蟹》2020
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梓(ミズメザクラ)で作られた、触覚や目、脚やエラなど、
動く部分をすべて徹底的に再現した自在作品。
モニタで、いろんな形に動かせる様子が映されていました。

《祈り》2019
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セミの幼虫など地中の虫に寄生して育つキノコの一種、
冬虫夏草。


[木彫]前原冬樹 Maehara Fuyuki(1962- )

チラシ表面にも使われている《一刻 スルメに茶碗》2022
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前原冬樹さんは「驚異の超絶技巧!」展でも、
日曜美術館「現代の超絶技巧」でも紹介されていましたね。

この、スルメはもちろん木のクリップや金属のチェーンも
一本の木から彫り出されているとのこと。

‥‥それはスゴイ超絶技巧だけど、スルメやら古びたグローブやら、
何故こんなモノをリアルに作ろうと思ったのかなぁ? と。


[金工]本郷真也 Hongo Shinya(1984- )

《老犬 独歩》2021
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存在感スゴイ。

《Visible 01 境界》2021
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烏が内部の構造まで造り上げられています。
最初に烏の骨格と筋肉を作って、
羽を一枚ずつ重ね付けていったのだそう。
作品のCTスキャン画像も展示されていました。

《円相》2023
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一対の龍が円い台の上に乗っています。
台にロウソクが2本立てられていますが、
このロウソクの熱で、龍が動くんだそう!!
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現代の超絶技巧すごい!
それぞれ、ストイックな日々の鍛錬を
頑張っていらっしゃるんでしょうね。

どこまで進化されるのか、これからも楽しみです。


もちろん図録購入しました。 2,750円(税込)
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超絶技巧の図録が3冊揃いました。
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この展覧会、ここ岐阜県現代陶芸美術館で
2023年2月11日(土・祝)~4月9日(日)に開催された後、

長野県立美術館で 4月22日(土)~6月18日(日)

大阪・あべのハルカス美術館で 7月1日(土)~9月3日(日)

東京・三井記念美術館で 9月12日(火)~11月26日(日)

富山県水墨美術館で 12月8日(金)~2024年2月4日(日) と巡回します。

超絶技巧を極めた作品、見ごたえありますよ!


岐阜県現代陶芸美術館: https://www.cpm-gifu.jp/museum/

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大竹亮峯さんのツイッターで、《月光》の作品が開く動画がありました。


展覧会場でもモニタに映されていましたが、
眼鏡饅頭蟹の脚などを動かす映像
https://youtu.be/GQr3f7j5uyk

大竹亮峯ウェブサイト: https://japanese-sculpture.com/ryoho-otake/

本郷真也ウェブサイト: https://japanese-sculpture.com/shinya-hongo/
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