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東京国立近代美術館「重要文化財の秘密」展 [美術]

東京都美術館「エゴン・シーレ展」を見に行った翌日
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2023-04-04

3月30日(木)、東京国立近代美術館へ行きました。

「東京国立近代美術館70周年記念展
 重要文化財の秘密」
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このチラシ、東京都美術館で手に入れたんですが、
その時まで、この展覧会が開催中だと気が付きませんでした。
(この展覧会のことは、雑誌で見て知ってはいましたが)
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明治以降の絵画・彫刻・工芸のうち、重要文化財に指定された作品のみによる豪華な展覧会

国宝展が当たったから今度は重要文化財?
ちょっと権威的なのがどうもなー なんて思ってたんですよ。
(私は国宝展行けてないです)


重要文化財とは「1950年に公布された文化財保護法に基づき、日本に所在する建造物、美術工芸品、考古資料などの有形文化財のうち、製作優秀で我が国の文化史上貴重なもの等について文部科学大臣が定めたものです。そのうち特に優れたものが『国宝』に指定されます。
展覧会公式サイト: https://jubun2023.jp/ より

明治以降の絵画・彫刻・工芸については、現在68件が重要文化財に指定されていますが、まだ国宝はありません。本展ではそのうち51点を展示します。

ってことで、明治以降の絵画・彫刻・工芸の傑作が集まった
展覧会なんですが「ただの名品展ではありません。

今でこそ『傑作』の呼び声高い作品も、発表された当初は、それまでにない新しい表現を打ち立てた『問題作』でもありました。そうした作品が、どのような評価の変遷を経て、重要文化財に指定されるに至ったのかという美術史の秘密にも迫ります。

美術品の評価って難しいですよね。今でこそ人気の印象派だって、
発表当時は全く評価されなかったんですし。

仮にも文部科学大臣(国)が定める作品なんですから、
相応の指定理由がなければなりませんよね。

まぁ、そんな展覧会の意図はよくわかりませんでしたが、
さすが重要文化財に指定される作品だけあって名品揃いだし、
東京国立近代美術館、私は行ったことなかったんですが、
「美術館の春まつり」ってイベントもやってることを知り、
ここなら桜の名所・千鳥ヶ淵とかにも近いし、いいかなと。

美術館が開館するまでの間、近くの桜を見て歩いたことは前記事
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2023-04-06

東京国立近代美術館の開館時間9:30頃に戻ると、
チケット売り場の前には列ができてました。
一般観覧料1,800円
それほど長い列ではなかったんですが、
スマホ表示のチケット買ってくれば良かったなって。

1階の展覧会場に入ると、最初に展示されていたのが
狩野芳崖《不動明王図》1887(明治20)年
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なんとこの展覧会、撮影禁止マークが付いている作品以外の
会場内の写真撮影が可能!! (フラッシュ、動画は禁止)

こんな名品、撮影しちゃっていいの? と思いつつ。
でも私には、狩野芳崖って明治の画家なのねー、くらいの知識で、
なんか古い絵だなって見ちゃったけど、
伝統的な仏画の不動明王と違うのは、
火炎光背ではなく、光に満ちた洞窟を背にしているところ。
空間を表現する洋絵画の影響を感じさせるとのこと。

重要文化財を規定する文化財保護法が公布されたのは1950(昭和25)年、
明治以降の美術が最初に指定されたのは1955(昭和30)年の
狩野芳崖《不動明王図》《悲母観音》
橋本雅邦《白雲紅樹》《龍虎図屏風》 の4点

つまりこれは明治以降の美術で最初に
重要文化財に指定された4点のうちの1つ。

私が見に行った時、狩野芳崖《悲母観音》と
橋本雅邦《白雲紅樹》は、展示期間が合わず、
橋本雅邦《龍虎図屏風》は展覧会不出品でした。

重要文化財は保護の観点から貸出や公開が限られるため、
この展覧会、
近代美術の重要文化財、全68件中51点が全国から集結
(チラシ中面のキャッチ)ってことですが、
展示期間が限られていて、見られない作品(特に日本画)も
多かったです。(でもこの展覧会がスゴイってのはわかる)


横山大観《生々流転》1923(大正12)年
全長40mの長~~い絵巻。なので、
この1階の細長い展示スペースでしか全部を広げられないとのこと。
山奥の一滴の水が、やがて集まり渓流となって、大河となり海へと注ぎ、嵐とともに龍となって天へと還るという水の輪廻を表した水墨絵巻

チラシ中面の一番下に帯のようになっているのが全体図(^^)
(ショップには《生々流転》のマスキングテープなんてあって、
ちょっと心惹かれましたけど(^^)
2023年は本作が描かれてちょうど100年。展覧会初日に関東大震災が起きましたが救い出されました。

この絵巻を鑑賞するために並ぶ行列のためのスペースがありました
(私が行った時は使われてなかったけど)
長~いガラスケースの前には人がいっぱいで、
なかなかじっくり見ることができなかったし、
私、この作品、ずっと昔に見たことがあったんですね。
(いつ、どこでだったのか覚えてないけど)
水の輪廻を描くって構想はすごいけど、
なんだかジミな絵‥‥みたいな印象
なので、人の肩越しにチラチラっと見て通り過ぎてしまいました(^^;

今村紫紅《熱国之巻》1912(大正3)年 の、
朝之巻が展示されていましたが、どうも私長い絵巻を見て行く
集中力? が足りないみたい。サラッと描かれたような? 異国の絵に、
ふーん、これが重要文化財かーくらいで通り過ぎてしまいました(^^;

菱田春草《王昭君》1902(明治35)年 と
《賢首菩薩》1907(明治40年)が展示されていました。

うーん‥‥《王昭君》は女性たちがあんまり魅力的じゃないし、
《賢首菩薩》は、これが重要文化財なのか‥‥なんて。
(チラシのメインビジュアルには使えないんじゃない?)

チラシ裏面(?)に使われている《黒き猫》1910(明治43)年が
見たかったなー(5月9日~5月14日の展示)
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菱田春草の代表作《落葉》1909(明治42)年は展覧会不出品

へー、明治の日本画で重要文化財に指定されているのは、
狩野芳崖、橋本雅邦、菱田春草の3人だけなんだ!

横山大観は、1912(大正元)年の《瀟湘八景》と
1923(大正12)年の《生々流転》が
重要文化財に指定されています。

《瀟湘八景》は、やっぱり私、横山大観のぼんやりした絵は
イマイチ良さがわからないなぁと。

川合玉堂《行く春》1916(大正5)年 は見られて良かった!
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特に桜の花びらが散っているところなど、ちょうど今の季節と
合って、とてもいいなって。
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ま、川合玉堂の代表作なら《彩雨》みたいな、もう少し
余白を生かした穏やかな絵の方が好きだけど、
1940(昭和15)年の制作だから、まだ新しすぎるのかな?

文化財保護法の前身として戦前に制定されていた
「重要美術品等ノ保存ニ関する法律」は、
現存者の製作品、製作後50年を経ないものは指定しないと
規定されていたそうで、今の文化財保護法からは
この規定はなくなったものの、この慣習に引きずられている
ところもあるそう。(しかし《生々流転》は44年で、
《落葉》は47年、《黒き猫》は46年で指定されています)

鏑木清方《築地明石町》1927(昭和2)年
《新富町》1930(昭和5)年、《浜町河岸》1930(昭和5)年 は、
2022(令和4)年に指定されたばかりの作品。

長く行方がわからず「幻の名作」とされてきましたが、
2019年に東京国立近代美術館の収蔵しましたと。
この3枚で重要文化財1点ってこと?

さすが、美人画の名手とされる鏑木清方
《築地明石町》のきりっとした気品ある表情が素敵!

鏑木清方《三遊亭円朝像》1930(昭和5)年 は
描かれた人物の顔や姿だけでなく、
きりっとした気品まで捉えられていていいなぁ!

福田平八郎《漣(さざなみ)》1932(昭和7)年
これは見たかった絵! この絵を知った時、なんて斬新な! って
驚いたんです。福田平八郎の絵は瓦だけを描いた《雨》とか、
大胆なトリミングがシャープなデザイン性を感じさせて、
すごく好きなんですが、この絵はとびぬけてますね!
絵の地は白ではなくて、銀(下に金箔が押してあるそう)
見ていると群青色の線がウネウネと動き出すようでした。


安田靫彦《黄瀬川陣》1940/1941(昭和15/16)年
黄瀬川に陣を張った頼朝に
奥州から駆けつけた義経が対面する場面
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そして洋画のコーナーへ

やっぱり最初は、この絵ですね。
日本の最初の油絵として教科書などにも載っている
(この展覧会のチラシ表面にも使われています)
高橋由一《鮭》1877(明治10)年頃 東京藝術大学蔵

1967(昭和42)年、油絵として最初の重要文化財に指定されます。
こんなに大きな絵だったっけ? って見たのは、
高橋由一、鮭の絵を何枚も描いているんだそう。
(2017年に碧南市藤井達吉現代美術館「リアルのゆくえ」展で
見た高橋由一《鮭》は、山形美術館寄託のものでした。)

その隣に展示されていたのが、岐阜県美術館が誇る
山本芳翠《裸婦》1880(明治13)年頃
日本人による最初期の油彩裸体画として、
2014(平成26)年に指定されました。
《鮭》が指定されてから47年後の指定です。
ま、私は山本芳翠なら《浦島図》の方が好きだけど、
こっちが指定されるってのはわかります。

反対側の壁に展示されていた巨大な作品
原田直次郎《騎龍観音》1890(明治23)年
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発表当時「サーカスの女芸人のよう」って批判した人が
いたって解説には笑っちゃった。
神聖な観音様が、あまりに生々し過ぎたんでしょうね。

原田直次郎は《靴屋の親爺》1886(明治19)年 も
重要文化財に指定されているんですね(展覧会不出品)

浅井忠の油彩画が2点並んでいました。
《春畝(しゅんぽ)》1888(明治21)年 と
《収穫》1890(明治23)年
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懐かしい日本の風景が油彩で描かれています。
でも、なんか古い絵、わりと小さめの絵だし、
これが重要文化財?‥‥ってカンジ。
黒田清輝らの「新派」「紫派」に対して、
「旧派」「脂(やに)派」と呼ばれた って解説に納得。
《収穫》は、《鮭》と青木繁《海の幸》とともに
1967年に、油絵として最初の重要文化財に指定されたとのこと。
《春畝》はそれより3年後の1970年に指定されました。

藤島武二《天平の面影》1902(明治35)年
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この絵は私知らなかったなぁ。
藤島武二の《黒扇》1908-1909(明治41-42)年 は
教科書などで見たことがあったけど。
どちらも重要文化財。《黒扇》は1969(昭和44)年に、
《天平の面影》は2003(平成15)年に指定されました。
この作品は「明治浪漫主義を代表する記念碑的な作品」
として指定されたのだそう。


青木繁《わだつみのいろこの宮》1907(明治40)年
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この作品が重要文化財に指定されているのなら、当然、
《海の幸》1904(明治37)年 も重要文化財ですよね。
はい、《海の幸》は1967年に、こちらは1969年に指定されました。
(《海の幸》はこの展覧会不出品)
荒々しく、それゆえに生命力や迫力にあふれた《海の幸》に比べ
(あ、私は実物は見てないですが)
こちらは青木繁が何枚も下絵を描き、自信満々で
発表した絵ですが、不本意な結果に終わります。
失意の青木は帰郷、放浪し、1911(明治44)年、28歳で亡くなります。

夏目漱石が小説「それから」で好意的に描いていますね。
いつかの展覧会に青木と云ふ人が海の底に立つてゐる脊の高い女を画いた。代助は多くの出品のうちで、あれ丈が好い気持に出来てゐると思つた。」(青空文庫より)
いかにも夏目漱石が好きそうな絵!

和田三造《南風》1907(明治40)年
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教科書などでも見た絵ですが、とても画面が明るくて、
光にあふれ、輝いているようでした。

萬鉄五郎《裸体美人》1912(明治45)年
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強烈な印象の絵。これが1912(明治45/大正元)年に描かれた
作品だってことに驚きます。
日本でのゴッホの影響を示す早い時期の作品。
東京美術学校の卒業制作として描かれ、当時は
19人中16番目という低評価でした。(指導教員は黒田清輝)
黒田清輝を中心とする外交派が主流であった時代にあって、本図は極めて斬新で前衛的であり、個性的な芸術家たちを輩出した大正時代の劈頭を飾る作品として、日本の近代洋画史上重要な位置を占めている
と、2000(平成12)年に重要文化財に指定されました。


2020年の、名古屋市美術館「岸田劉生展」で見られなかった
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-03-18
岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915(大正4)年 が
見られて良かった。リアルを飛び越えたような迫力です。
名古屋市美術館で見た重要文化財《麗子微笑》1921(大正10)年は、
展示期間が合わずに見られませんでした。
2点とも1971(昭和46)年に重要文化財に指定されています。

関根正二《信仰の悲しみ》1918(大正7)年
20歳で亡くなった関根正二が19歳で描いた作品!
なんか不思議な――この女性たちは誰?、何の行列?
不安というか悲しみというか、そんな感情を抱かせる作品ですね。

小出楢重《Nの家族》1919(大正8)年
なんか漫画チック?にデフォルメされたような父親の表情や、
不機嫌そうな妻、手前にセザンヌ風の静物と、
面白い絵だなーって。

中村彜《エロシェンコ氏の像》1920(大正9)年
この作品が重要文化財? って思っちゃった。
盲目のエスペラントティストで詩人、童話作家でもあった
ワシリー・エロシェンコ氏の肖像。
ルノワールを思わせるような黄褐色の色調と柔軟な筆触によって詩人の内面まで描き出し、技法も作風も一つの完成に達したことを示しており、彼の代表作にあげられる」と、1977(昭和52)年に重要文化財に指定されました。


高村光雲《老猿》1893(明治26)年
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教科書でも見た木彫。こんなに大きいんだってのと、
猿の右足が伸びてて、体をひねっている姿だってのも意外だった。
鷲を捉えようとして取り逃がし、飛び去る姿をにらみつける様子を
表したもので、手には鷲の羽を握っているとのこと。
息子の高村光太郎によれば、シカゴ万博で展示された日本館の隣に
ロシア館があり、鷲はロシアを暗示しているとか。


赤い壁をバックに、それぞれ異なるポーズで
木製漆塗の架(はこ)にとまっている
金属で作られた12羽の鷹 
鈴木長吉《十二の鷹》1893(明治26)年
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その隣には、
鈴木長吉《鷲置物》1892(明治25)年 も展示されていました。

《老猿》《十二の鷹》《鷲置物》は1893(明治26)年に
アメリカで開催されたシカゴ・コロンブス世界博覧会に
出品されたもの。

《老猿》は彫刻、《十二の鷹》と《鷲置物》は工芸って
なってるけど、重要文化財の分類なのか、
この展覧会の分類なのが?

重要文化財の指定における彫刻と工芸については、
色々な問題があるみたいですね。

工芸は複数の人によって作られていたり、
同じ意匠の作品を複数、量産するすることもあり、
「作家」や「作品」をどのようにとらえるか?

塑像の彫刻は、ブロンズ鋳造されたものではなく、
石膏原型をオリジナルとして指定することになっているそう。

なので、新海竹太郎《ゆあみ》1907(明治40)年
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重要文化財に指定されている石膏原型が展示されています。
隣の台座も作家自身による制作。
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4階の所蔵作品展では、鋳造された彫刻が展示されていました。
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荻原守衛《北條虎吉像》1909(明治42)年
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へー、これが重要文化財? 荻原守衛の《女》1910(明治43)年 は
知ってるけど。はい《女》も重要文化財(展覧会不出品)

4階の所蔵作品展で展示されていた《女》
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(重要文化財は石膏原型が指定されるので、
これは重要文化財ではない)
《女》が1967年に、彫刻として最初に
《北條虎吉像》は1968年に彫刻として2番目に
重要文化財に指定されました。


朝倉文夫《墓守》1910(明治43)年 
ブロンズ像かと見たけど、石膏像を褐色に着色されてます。

明治以降の彫刻作品で重要文化財に指定されたものは、
まだ6点しかないとのこと。
ここに展示されていた
《老猿》《北條虎吉像》《ゆあみ》《墓守》と、
4階にブロンズ像が展示されていた《女》、
そして、お雇い外国人として来日し、
日本に西洋式の彫刻制作方法を伝えた
ヴィンチェンツオ・ラグーザの
《日本婦人像》1880-1881(明治13-14)年


工芸が最初に重要文化財に指定されたのは
2001(平成13)年と意外に遅く、最初に指定されたのは
鈴木長吉《鷲置物》1892(明治25)年

本物そっくりの渡り蟹が貼り付けられた壺
初代宮川香山《褐釉蟹貼付台付鉢》1981(明治14)年 は、
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2002(平成14)年に重要文化財に指定されました。
明治の輸出工芸は『日本趣味』を過剰にまとった『欧米向け土産物』として評価の低い時代が続きましたが、1990年代以降、主に博覧会研究の進展によって再評価が進み(中略)いま『超絶技巧』性が脚光を浴びています。」(チラシ中面の文)

3月に岐阜県現代陶芸美術館で「超絶技巧」の第3弾となる
「超絶技巧、未来へ!」を見たんですが、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2023-03-26

2015年に、第1弾となる「超絶技巧!明治工芸の粋」展を
見た時、明治工芸のすごさに驚きました。正に超絶技巧!

そんな展覧会で、並河靖之や濤川惣助の七宝を見ているので、
濤川惣助《七宝富嶽図額》1893(明治26)年 は、
えー?! これが重要文化財? 確かに濤川惣助の
無線七宝の技術が発揮された大きな額ではあるけど‥‥ってカンジ。


初代宮川香山《黄釉銹絵梅樹図大瓶》1892(明治25)年
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細かな細工を貼り付けた高浮彫の陶器から、
釉薬研究に取り組み、磁器の制作へ転換した香山の
シカゴ・コロンブス世界博覧会出品作
2004(平成16)年に重要文化財に指定されました。

こちらもシカゴ・コロンブス世界博覧会出品作
三代青風与平《白磁蝶牡丹浮文大瓶》1892(明治25)年
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とても優美で上品な白磁の壺(大瓶)! 素敵です。
三代青風与平、私知らなかったんですが、
明治期の京焼の指導的役割を担った方なんだそうですね。
2017(平成29)年に重要文化財に指定されました。

板谷波山《葆光彩磁珍果文花瓶》1917(大正6)年
2月12日放送の日曜美術館で板谷波山を紹介していましたね。
「葆光彩磁」光を包みこむという意味の波山独特の釉薬。
文様は薄肉彫に彩色され、釉薬で覆われています。
薄絹をかぶせたような淡い色彩。とても上品だけど、
完璧すぎてかえってインパクトがない‥‥みたいな(^^)


工芸で重要文化財に指定されているのは、ここに展示されていた7点と、
海野勝珉《蘭陵王置物》1890(明治23)年 と、
板谷波山《彩磁禽果文花瓶》1926(大正15)年 の合計9点


ここで展覧会の出口となって、え? これだけ? って
気もしたんです。
「近代美術の重要文化財、全68件中51点が全国から集結」
(チラシ中面のキャッチ)なんですが、展示期間が限られていて、
見られない作品(特に日本画)も多く、私が行った時は、
36点が展示されていました。
(鏑木清方の《築地明石町》《新富町》《浜町河岸》を1点と数えて)
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図録購入3,300円
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ずっしりと重いので、周囲を散策した後に買いに戻りました。
この図録がすごいのは、この展覧会に出品された作品はもちろん、
不出品の重要文化財指定作品もカラーで収録されて、
全てに詳しい作品解説がついているところ。
つまり、現時点での近代近代美術の重要文化財
68件全てがわかります!

ふーん、この作品が指定されているんだーとか、

動物画の名手とされた竹内栖鳳、《斑猫》1924(大正13)年は
納得というか、猫好きには特にたまりませんが、
《絵になる最初》1913(大正2)年 は、
栖鳳のこの絵を指定するの? って。

2015年4月に碧南市藤井達吉現代美術館「竹内栖鳳」展
見に行った時、《絵になる最初》が展示されてたけど、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2015-04-21
まだ重要文化財ではなかったし、私、竹内栖鳳の人物画は
あまり感心しないなーなんて書いてる(^^;
《絵になる最初》が重要文化財に指定されたのは2016(平成28)年


まだ戦後の作品は重要文化財にはなってないんですね。
(制作年が一番新しいのは安田靫彦《黄瀬川陣》の1940/1941(昭和15/16)年)

これからどんな作品が重要文化財に指定されるのか?
‥‥まぁ、わざわざ国にそんな権威をつけてもらわなくてもいいよ
って気もしますが、多くの専門委員が傑作だと認める作品、
やっぱり興味ありますよね。


東京国立近代美術館: https://www.momat.go.jp/
展覧会公式サイト: https://jubun2023.jp/


この展覧会、ちょっと、これだけ? って気もしたんですが、
4階~2階の所蔵作品展がすごかった!
展示作品が多いことはもちろん、それぞれ詳しい解説もあって
とても見ごたえありました。次の記事で書こうと思いますが、
こんなカンジで書いていったら、いつになるか‥‥(^^;

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