岐阜県美術館 AAIC2023「リアル」のゆくえ [美術]
4月27日(木)岐阜県美術館へ行きました。
清流の国ぎふ芸術祭
Art Award IN THE CUBE 2023 をやっています。
新たな才能の発掘と育成を目的として2017年から、
3年に1度開催される企画公募展
2017年の1回目のテーマは「身体のゆくえ」
岐阜県美術館「清流の国ぎふ芸術祭」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2017-05-18
2020年の2回目は「記憶のゆくえ」
岐阜県美術館「清流の国ぎふ芸術祭 AAIC 2020」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-06-10
3回目となる今回のテーマは、
「リアル」のゆくえ
4.8m(幅)×4.8m(奥行)×3.6m(高さ)のキューブ空間に、
14組の作家がそれぞれの作品を展開されてます。
以下、ネタバレを含みますので、
これから見に行けそうな方は、是非ご覧になってから
読むことをお勧めします。
岐阜県美術館で6月18日(日)まで。入場無料 撮影可
岐阜県美術館まで遠い、という方は、
Art Award IN THE CUBE 2023 公式Webサイト:
https://art-award-gifu.jp/
にて、リモートで作品鑑賞ができます!
岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
今回も観覧無料なのに、立派なガイドブックももらえます。
ガイドブックの会場マップ
まずは展示室3 から
【A】
千田泰広
CHIDA Yasuhiro
《Aftereal 6》
キューブには1組しか入れません。先に他の作品を見てから戻りました。
暗い空間に、青い細い光の線が無限に続いているように見えます。
高速で振動する蛍光糸で作られた空間だそう。
「囲まれているように見える作品は網膜や脳によって作られた像であり立体感である。つまり、眼と脳によって作り出された実在しない像を体験する。」(もらったGUIDE BOOKより)
【B】
千葉麻十佳
CHIBA Madoka
《Melting Hida Mountains》
暗いキューブの床にマグマの映像が投影されています。
火口のマグマを撮影したのではなく、
「岐阜県の火山から流れる川の川沿いにある火山石を探して溶かし、マグマ状になったところを撮影」したのだそう。
太陽から発する光を使って火山石を溶かしたそうですが、
ものすごい熱が発生すると思われるのに、映像なので、
熱くもなく、映像のマグマの上に立つことができます。
この作品が今回の大賞に選ばれています。
キューブの外側に描かれているのは、
最初に見た時、稲妻かと思ったけど、
木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)ですね!
【C】
岡ともみ
OKA Tomomi
《サカサゴト》
薄暗いキューブの中央にある柱に、古い時計がいくつも
掛かっています。よく見ると、時計の文字盤は逆だし、
時計の針は逆回転しています。そして、振り子の部分が
映像になっていて、古い日本の家の障子が開いたり、
白い着物の人(のような影?)が通ったり、
ロウソクが揺らめいたりしています。
キューブの壁は鏡のようになっているので、
そこに映る時計は、文字盤も正しく、時計の針も
正しく時計回りしています。
リアルにあるものが逆なので、鏡に映ったものが
正常なもののように見えます。
「サカサゴト」とは、
「縄文時代の日本では、あの世はこの世のあべこべである、と信じられていた。こちらが夕ならあちらは朝、こちらが夜ならあちらは昼。このような考え方は、現在でも「サカサゴト」と呼ばれ、死人が出た際には日常の様々な動作を逆に行うという風習として、日本各地に残っている。展示室では、まさに「サカサゴト」のように、本物の時計の盤面は反転し、逆回転している。そんな古時計が反転するとき、忘れ去られようとしている葬送の風習を思い出すように、内部の映像が再生される。自身も忘れ去られようとしている古時計は、忘れ去られた風習の墓跡のようにそこに立ち、あの世とこの世の境目を曖昧なものにしている。」(作品コンセプトより)
着物を左前に着せるとか、水にお湯を足すとか‥‥
お葬式の風習では、いつもの動作を逆にしたり、
北枕や、はさみ箸など日常とは異なることをしますよね。
「死」は生きている者にとっては、
「リアル」に感じることができません。
死の世界を想像するだけです。
ちょっと怖いけど、私はこの作品が一番いいと思いました。
【D】
INAGAKI MOMO
イナガキ モモ
《JK in the street.(普通の女子高生)》
キューブの3面に女子高校生の映像が投影されています。
つぶやきのようなメッセージも流れています。
部活(ラグビー部マネージャー)とか、食べ物とか、
現代らしくインスタとか‥‥
なんか、高校の文化祭の映像みたい、なんて思ったけど、
作者は2006年生まれ、つまり今リアルに女子高生なわけで、
「いま」の「普通」の「JK」の「リアル」な「日常」の映像と声が、キューブ内いっぱいに広がり体感できる(GUIDE BOOKより)
山極壽一賞に選ばれています。
【E】
山本雄教
YAMAMOTO Yukyo
《One room》
キューブ内の床や壁に一円硬貨が敷き詰められています。
通貨というルールから離れ、アルミの物質的な存在となった一円玉。
キラキラと光るタイルのようで、美しいです。
東京国立近代美術館で見た冨井大裕の画鋲の作品を思い出しました。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2023-04-24
何枚の1円玉が使われているのかな?
それはそのまま作品の材料費ってことになるけど、
1円玉だから、意外と安いのかも?
1円玉の製造コストは1円より高いって聞いたことがあるけど‥‥
このキューブの中には入ることができます。
1円玉を踏むことになるんですが、
よく見ると、1円玉の輝きが違ったり、汚れがあったり、
「硬貨ごとによる輝きの違いは、金属の経年変化と、硬貨が様々な人の手を経てきたことによる汚れの差異だ。無機質な存在であるように思える硬貨には、人間同士の繋がりと営みの時間が凝縮されている」
キューブの外側に1円玉で書かれた「one room」
101個の1円玉でできてます。材料費101円だー。
【F】
柴田美智子
SHIBATA Michiko
《触れるもの、絶対に触れないもの》
それぞれの梯子の上と下に猿がいて見つめ合っています。
下の猿は片手がなかったり、体の一部が欠けていたりして、
リアルではありません。上にいる猿は一見リアルそうだけど、
作り物だということはすぐにわかります。
下の猿は自分に欠けたものを求めて上の猿に近づこうとしているのか?
でも上の猿も完全とは見えないけど。
上の猿は下の不完全な自分を見つめている?
とも思ったけど‥‥中央の針金でできたような造形は何か?
その足元の魚(これはちゃんと?リアル)は?
この作品は入江経一賞を取っていて、審査講評で
審査員の入江経一さんがとても褒めていたけど、
私はよく理解できませんでした。
【G】
GengoRaw
(石橋友也+新倉健人)
ゲンゴロウ
(ISHIBASHI Tomoya+NIIKURA Kento)
《バベルのランドスケープ》
風景の映像から幾何学的な線が浮かび上がって、
それが集まって文章になるんですが‥‥
これ、ただ適当に線を抽出しているのではなくて、
認知科学分野の研究成果に基づいたものなんだそう。
認知科学者・チャンギンジーらは風景の中に現れる幾何学的パターンの分布とあらゆる言語の文字の中に現れるパターンの分布が⼀致することを⽰した(Changizi et al , 2006)。 この研究結果は⼈類が⾝に着けた自然を観察する能力に適応するように、文字の形が収斂進化していった可能性を⽰している。
本作では独自開発したアルゴリズムにより、ランドスケープ等の映像の各フレームから、研究で示された36個の幾何学パターンを抽出し、インターネット上に存在する膨大な日本語文からパターンと一致する一文を特定する。(作品コンセプトより)
なんだか目まぐるしい映像に????ってカンジでした(^^;>
多目的ホールにあったのは、
【H】
奥中章人
OKUNAKA Akihito
《INTER-WORLD/SPHERE: Over The Cube》
虹色に輝く風船のようなものがキューブの枠をはみ出るように
膨らんでいます。この風船の中に入ることができます。
1人(1組)ずつ、風船を傷つけないように、
荷物やポケットの中のモノなどは外に置いて入ります。
中には、水で膨らんだ風船(?)があり、
その上に寝転がることができます。
ぽやぽやとして、気持ちいい。ちょっと眠くなってしまう(^^)
虹色の光を通して、多目的ホールのミケランジェロの模刻が見えます。
この作品、北村明子賞と寺内曜子賞を受賞しています。
展示室4
【I】
フロリアン・ガデン
+ミキ・オオクボ
florian gadenne+miki okubo
《アンブレラ種》
印象的な赤い幕をくぐってキューブ内に入ると、
中央に赤いオブジェのようなものがあり、
赤い壁には多種多様な生物を描いた絵が掛けられています。
「アンブレラ種」とは、「生物学で生態系ピラミッドの頂点に立つ敵無しの捕食者を意味」しますが「その適切な保護はその<傘>に含まれる生態系全体の保全によってこそ実現する。」
「山・川・森から成る三連水彩画には、イヌワシを頂点とする、岐阜県の豊かな自然の複雑な生物間ネットワークが精緻に描かれている。」(GUIDE BOOKより)
床の片隅には、合掌造りと駐車場や、
ブルドーザーで破壊される山
中央の赤いオブジェが何を意味するのか、ちょっと
わからなかったけど‥‥壁の水彩画はとても気持ちのいい風景で、
こんな多種多様な生物がいる豊かな自然を守りたいですね。
キューブの外側に描かれた絵もいい感じ。
【J】
大西康明
ONISHI Yasuaki
《石と柵 岐阜》
展示室に入ってきた時から、この赤くキラキラなモノが
無数に吊るされている作品は目立ってました。
赤くキラキラしたお椀のような形は、
河原の石を銅箔で覆って、形をトレースしたもの。
それが柵に貼り付けられているので、柵の内側から見れば
凹凸が逆になるんですね。
「時間の体積を象徴する石の形態を借り、河原全体をトレースする作品。」なんだそうですが、とにかくこの量と手間に圧倒されます。
大西康明さんは、前回のAAIC2020でも
《時間の溝》という作品を展示されていましたね。
【K】
身体企画ユニット ヨハク
YOHAKU
《スクランブル交差空間─不干渉の調和─》
キューブの2面が壁で、1面には6つの映像が
投影されていますが、舞台装置みたいな空間。
渋谷のスクランブル交差点をモチーフとした作品です。1つの交差点という狭い空間に、異なる価値観、世界観、背景等を持つ人々が集い、しかし互いに衝突せず美しく交差していくその様を、身体的な振り付け作品として立ち上がらせてきました。
このキューブにて、ライブパフォーマンスが
4/22(土)・4/23(日)、5/6(土)・5/7(日)、6/10(土)・6/11(日)に
行なわれるそう
【L】
北川純
KITAGAWA Jun
《ネットショッピング》
キューブがネットショッピングのダンボール箱になってるww!
キューブの中には、自分がシュリンク包装されてしまうような
体験ができるビニールボックスがあります。
ダンボールの取っ手から光が差し込んでいます。
自分が小さくなって、ダンボールの中に入ったみたい(^^)
キューブという条件を上手く利用した作品ですね。
四方幸子賞を受賞しています。
北川純さん、前回のAAIC2020で、私が一番いいと思った
《質量保存の法則》を展示されていた作家さんだ!
【M】
古屋 崇久
FURUYA Takahisa
《橋の形》
キューブ内、一面の市松模様の中に木や金属(?)で
できた形が貼りつけられ、中央にはライトがぶら下がっています。
「美術館周辺・岐阜県内を中心に河川等で橋の形をリサーチ。橋の概念、形に関して考察しキューブに落とし込む。」(GUIDE BOOKより)
ってことなんですけど、うーん私にはどこが橋なのかよくわからず‥‥
岩崎秀雄賞に選ばれています。
【N】
小孫哲太郎
KOMAGO Tetsutaro
《NAGAMERU》
キューブにビニールフィルムを張っただけの作品?
ってよく見たら、これ、セロハンテープ?
この大きさのキューブにセロハンテープを張っていくのは、
ものすごい手間では??
中に入ることもできます。
外の景色が少し変わって見えるかな?
作者は陶芸をやっている方なんですね。
森村泰昌賞に選ばれています。
今回は屋外作品はありません。
前回は屋外作品が4点あり、合計18作品が展示されていましたが、
今回は屋内の14点です。
前回も前々回も、私がいいと思ったのと、審査員が選んだ作品が
かなり違うんですが、今回も全く違ってまして、
私がいいと思ったのは、
【C】岡ともみ《サカサゴト》
リアルに体験できない「死」の世界、葬送の儀式を通して
考えさせられました。
【E】山本雄教《One room》
1円玉の物質的な美しさ!
【J】大西康明《石と柵 岐阜》
赤くキラキラしててきれいだった(^^)
って、見た目とても単純なのが好きみたい(^^;>
でも14組、それぞれアプローチも違う作品で楽しかった。
1人ずつしか鑑賞できない作品もあって、ボランティアの方
ご苦労様です。ありがとうございました。
岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
清流の国ぎふ芸術祭
Art Award IN THE CUBE 2023 公式Webサイト:
https://art-award-gifu.jp/
清流の国ぎふ芸術祭
Art Award IN THE CUBE 2023 をやっています。
新たな才能の発掘と育成を目的として2017年から、
3年に1度開催される企画公募展
2017年の1回目のテーマは「身体のゆくえ」
岐阜県美術館「清流の国ぎふ芸術祭」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2017-05-18
2020年の2回目は「記憶のゆくえ」
岐阜県美術館「清流の国ぎふ芸術祭 AAIC 2020」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-06-10
3回目となる今回のテーマは、
「リアル」のゆくえ
4.8m(幅)×4.8m(奥行)×3.6m(高さ)のキューブ空間に、
14組の作家がそれぞれの作品を展開されてます。
以下、ネタバレを含みますので、
これから見に行けそうな方は、是非ご覧になってから
読むことをお勧めします。
岐阜県美術館で6月18日(日)まで。入場無料 撮影可
岐阜県美術館まで遠い、という方は、
Art Award IN THE CUBE 2023 公式Webサイト:
https://art-award-gifu.jp/
にて、リモートで作品鑑賞ができます!
岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
今回も観覧無料なのに、立派なガイドブックももらえます。
ガイドブックの会場マップ
まずは展示室3 から
【A】
千田泰広
CHIDA Yasuhiro
《Aftereal 6》
キューブには1組しか入れません。先に他の作品を見てから戻りました。
暗い空間に、青い細い光の線が無限に続いているように見えます。
高速で振動する蛍光糸で作られた空間だそう。
「囲まれているように見える作品は網膜や脳によって作られた像であり立体感である。つまり、眼と脳によって作り出された実在しない像を体験する。」(もらったGUIDE BOOKより)
【B】
千葉麻十佳
CHIBA Madoka
《Melting Hida Mountains》
暗いキューブの床にマグマの映像が投影されています。
火口のマグマを撮影したのではなく、
「岐阜県の火山から流れる川の川沿いにある火山石を探して溶かし、マグマ状になったところを撮影」したのだそう。
太陽から発する光を使って火山石を溶かしたそうですが、
ものすごい熱が発生すると思われるのに、映像なので、
熱くもなく、映像のマグマの上に立つことができます。
この作品が今回の大賞に選ばれています。
キューブの外側に描かれているのは、
最初に見た時、稲妻かと思ったけど、
木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)ですね!
【C】
岡ともみ
OKA Tomomi
《サカサゴト》
薄暗いキューブの中央にある柱に、古い時計がいくつも
掛かっています。よく見ると、時計の文字盤は逆だし、
時計の針は逆回転しています。そして、振り子の部分が
映像になっていて、古い日本の家の障子が開いたり、
白い着物の人(のような影?)が通ったり、
ロウソクが揺らめいたりしています。
キューブの壁は鏡のようになっているので、
そこに映る時計は、文字盤も正しく、時計の針も
正しく時計回りしています。
リアルにあるものが逆なので、鏡に映ったものが
正常なもののように見えます。
「サカサゴト」とは、
「縄文時代の日本では、あの世はこの世のあべこべである、と信じられていた。こちらが夕ならあちらは朝、こちらが夜ならあちらは昼。このような考え方は、現在でも「サカサゴト」と呼ばれ、死人が出た際には日常の様々な動作を逆に行うという風習として、日本各地に残っている。展示室では、まさに「サカサゴト」のように、本物の時計の盤面は反転し、逆回転している。そんな古時計が反転するとき、忘れ去られようとしている葬送の風習を思い出すように、内部の映像が再生される。自身も忘れ去られようとしている古時計は、忘れ去られた風習の墓跡のようにそこに立ち、あの世とこの世の境目を曖昧なものにしている。」(作品コンセプトより)
着物を左前に着せるとか、水にお湯を足すとか‥‥
お葬式の風習では、いつもの動作を逆にしたり、
北枕や、はさみ箸など日常とは異なることをしますよね。
「死」は生きている者にとっては、
「リアル」に感じることができません。
死の世界を想像するだけです。
ちょっと怖いけど、私はこの作品が一番いいと思いました。
【D】
INAGAKI MOMO
イナガキ モモ
《JK in the street.(普通の女子高生)》
キューブの3面に女子高校生の映像が投影されています。
つぶやきのようなメッセージも流れています。
部活(ラグビー部マネージャー)とか、食べ物とか、
現代らしくインスタとか‥‥
なんか、高校の文化祭の映像みたい、なんて思ったけど、
作者は2006年生まれ、つまり今リアルに女子高生なわけで、
「いま」の「普通」の「JK」の「リアル」な「日常」の映像と声が、キューブ内いっぱいに広がり体感できる(GUIDE BOOKより)
山極壽一賞に選ばれています。
【E】
山本雄教
YAMAMOTO Yukyo
《One room》
キューブ内の床や壁に一円硬貨が敷き詰められています。
通貨というルールから離れ、アルミの物質的な存在となった一円玉。
キラキラと光るタイルのようで、美しいです。
東京国立近代美術館で見た冨井大裕の画鋲の作品を思い出しました。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2023-04-24
何枚の1円玉が使われているのかな?
それはそのまま作品の材料費ってことになるけど、
1円玉だから、意外と安いのかも?
1円玉の製造コストは1円より高いって聞いたことがあるけど‥‥
このキューブの中には入ることができます。
1円玉を踏むことになるんですが、
よく見ると、1円玉の輝きが違ったり、汚れがあったり、
「硬貨ごとによる輝きの違いは、金属の経年変化と、硬貨が様々な人の手を経てきたことによる汚れの差異だ。無機質な存在であるように思える硬貨には、人間同士の繋がりと営みの時間が凝縮されている」
キューブの外側に1円玉で書かれた「one room」
101個の1円玉でできてます。材料費101円だー。
【F】
柴田美智子
SHIBATA Michiko
《触れるもの、絶対に触れないもの》
それぞれの梯子の上と下に猿がいて見つめ合っています。
下の猿は片手がなかったり、体の一部が欠けていたりして、
リアルではありません。上にいる猿は一見リアルそうだけど、
作り物だということはすぐにわかります。
下の猿は自分に欠けたものを求めて上の猿に近づこうとしているのか?
でも上の猿も完全とは見えないけど。
上の猿は下の不完全な自分を見つめている?
とも思ったけど‥‥中央の針金でできたような造形は何か?
その足元の魚(これはちゃんと?リアル)は?
この作品は入江経一賞を取っていて、審査講評で
審査員の入江経一さんがとても褒めていたけど、
私はよく理解できませんでした。
【G】
GengoRaw
(石橋友也+新倉健人)
ゲンゴロウ
(ISHIBASHI Tomoya+NIIKURA Kento)
《バベルのランドスケープ》
風景の映像から幾何学的な線が浮かび上がって、
それが集まって文章になるんですが‥‥
これ、ただ適当に線を抽出しているのではなくて、
認知科学分野の研究成果に基づいたものなんだそう。
認知科学者・チャンギンジーらは風景の中に現れる幾何学的パターンの分布とあらゆる言語の文字の中に現れるパターンの分布が⼀致することを⽰した(Changizi et al , 2006)。 この研究結果は⼈類が⾝に着けた自然を観察する能力に適応するように、文字の形が収斂進化していった可能性を⽰している。
本作では独自開発したアルゴリズムにより、ランドスケープ等の映像の各フレームから、研究で示された36個の幾何学パターンを抽出し、インターネット上に存在する膨大な日本語文からパターンと一致する一文を特定する。(作品コンセプトより)
なんだか目まぐるしい映像に????ってカンジでした(^^;>
多目的ホールにあったのは、
【H】
奥中章人
OKUNAKA Akihito
《INTER-WORLD/SPHERE: Over The Cube》
虹色に輝く風船のようなものがキューブの枠をはみ出るように
膨らんでいます。この風船の中に入ることができます。
1人(1組)ずつ、風船を傷つけないように、
荷物やポケットの中のモノなどは外に置いて入ります。
中には、水で膨らんだ風船(?)があり、
その上に寝転がることができます。
ぽやぽやとして、気持ちいい。ちょっと眠くなってしまう(^^)
虹色の光を通して、多目的ホールのミケランジェロの模刻が見えます。
この作品、北村明子賞と寺内曜子賞を受賞しています。
展示室4
【I】
フロリアン・ガデン
+ミキ・オオクボ
florian gadenne+miki okubo
《アンブレラ種》
印象的な赤い幕をくぐってキューブ内に入ると、
中央に赤いオブジェのようなものがあり、
赤い壁には多種多様な生物を描いた絵が掛けられています。
「アンブレラ種」とは、「生物学で生態系ピラミッドの頂点に立つ敵無しの捕食者を意味」しますが「その適切な保護はその<傘>に含まれる生態系全体の保全によってこそ実現する。」
「山・川・森から成る三連水彩画には、イヌワシを頂点とする、岐阜県の豊かな自然の複雑な生物間ネットワークが精緻に描かれている。」(GUIDE BOOKより)
床の片隅には、合掌造りと駐車場や、
ブルドーザーで破壊される山
中央の赤いオブジェが何を意味するのか、ちょっと
わからなかったけど‥‥壁の水彩画はとても気持ちのいい風景で、
こんな多種多様な生物がいる豊かな自然を守りたいですね。
キューブの外側に描かれた絵もいい感じ。
【J】
大西康明
ONISHI Yasuaki
《石と柵 岐阜》
展示室に入ってきた時から、この赤くキラキラなモノが
無数に吊るされている作品は目立ってました。
赤くキラキラしたお椀のような形は、
河原の石を銅箔で覆って、形をトレースしたもの。
それが柵に貼り付けられているので、柵の内側から見れば
凹凸が逆になるんですね。
「時間の体積を象徴する石の形態を借り、河原全体をトレースする作品。」なんだそうですが、とにかくこの量と手間に圧倒されます。
大西康明さんは、前回のAAIC2020でも
《時間の溝》という作品を展示されていましたね。
【K】
身体企画ユニット ヨハク
YOHAKU
《スクランブル交差空間─不干渉の調和─》
キューブの2面が壁で、1面には6つの映像が
投影されていますが、舞台装置みたいな空間。
渋谷のスクランブル交差点をモチーフとした作品です。1つの交差点という狭い空間に、異なる価値観、世界観、背景等を持つ人々が集い、しかし互いに衝突せず美しく交差していくその様を、身体的な振り付け作品として立ち上がらせてきました。
このキューブにて、ライブパフォーマンスが
4/22(土)・4/23(日)、5/6(土)・5/7(日)、6/10(土)・6/11(日)に
行なわれるそう
【L】
北川純
KITAGAWA Jun
《ネットショッピング》
キューブがネットショッピングのダンボール箱になってるww!
キューブの中には、自分がシュリンク包装されてしまうような
体験ができるビニールボックスがあります。
ダンボールの取っ手から光が差し込んでいます。
自分が小さくなって、ダンボールの中に入ったみたい(^^)
キューブという条件を上手く利用した作品ですね。
四方幸子賞を受賞しています。
北川純さん、前回のAAIC2020で、私が一番いいと思った
《質量保存の法則》を展示されていた作家さんだ!
【M】
古屋 崇久
FURUYA Takahisa
《橋の形》
キューブ内、一面の市松模様の中に木や金属(?)で
できた形が貼りつけられ、中央にはライトがぶら下がっています。
「美術館周辺・岐阜県内を中心に河川等で橋の形をリサーチ。橋の概念、形に関して考察しキューブに落とし込む。」(GUIDE BOOKより)
ってことなんですけど、うーん私にはどこが橋なのかよくわからず‥‥
岩崎秀雄賞に選ばれています。
【N】
小孫哲太郎
KOMAGO Tetsutaro
《NAGAMERU》
キューブにビニールフィルムを張っただけの作品?
ってよく見たら、これ、セロハンテープ?
この大きさのキューブにセロハンテープを張っていくのは、
ものすごい手間では??
中に入ることもできます。
外の景色が少し変わって見えるかな?
作者は陶芸をやっている方なんですね。
森村泰昌賞に選ばれています。
今回は屋外作品はありません。
前回は屋外作品が4点あり、合計18作品が展示されていましたが、
今回は屋内の14点です。
前回も前々回も、私がいいと思ったのと、審査員が選んだ作品が
かなり違うんですが、今回も全く違ってまして、
私がいいと思ったのは、
【C】岡ともみ《サカサゴト》
リアルに体験できない「死」の世界、葬送の儀式を通して
考えさせられました。
【E】山本雄教《One room》
1円玉の物質的な美しさ!
【J】大西康明《石と柵 岐阜》
赤くキラキラしててきれいだった(^^)
って、見た目とても単純なのが好きみたい(^^;>
でも14組、それぞれアプローチも違う作品で楽しかった。
1人ずつしか鑑賞できない作品もあって、ボランティアの方
ご苦労様です。ありがとうございました。
岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
清流の国ぎふ芸術祭
Art Award IN THE CUBE 2023 公式Webサイト:
https://art-award-gifu.jp/
「作品コンセプト」は兎も角、古時計の刻む時間を反転したら?‥‥という発想が面白いなぁ。
フィリップ・K・ディックの『逆まわりの世界』でも時計が逆回りして、死者が墓場からゾンビのように甦ります^^;
朝日新聞夕刊(毎月最終火曜日)に掲載されていた『ミュージアムの女』(KADOKAWA 2017)を読みました。
しーちゃんは作者(宇佐江みつこ)に会ったことありますか?
by sknys (2023-07-22 14:21)