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水野英子『星のたてごと』 [マンガ]

今回は、私の一番好きなマンガについて書きます!
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水野英子『星のたてごと』

昭和35年(1960年)から2年9ヵ月にわたって、
「少女クラブ」(講談社版)に連載された作品。

なので、さすがの私もリアルタイムでは読んでおりません。
私が読んで、持っているのは、朝日ソノラマから
昭和43年(1968年)に発行された単行本3冊です。

当時小学校5年生だった私は、
塾の前にあった駄菓子と貸本の店に行くのが楽しみで、
そろばん塾に通っておりました。
そこで、このマンガを見つけたのです。

夢中になりました。

どうしてもこの本が欲しいと、ねだって、取り寄せてもらったのです。
もちろん、amazonなんてありませんし、宅配便もありません。
色々面倒だったようで、親には
「なんで、マンガの本をわざわざ取り寄せてまで買うの」と言われましたが、
頑張りました!
やっと届いた時は、とても嬉しかった記憶があります。

ストーリーは、仇敵の姫君と騎士の恋愛物語なのですが、
世界の神話や伝説がごちゃまぜになったような、
愛と戦いと冒険が、華麗な絵で、怒涛のように展開していきます。

以下、ネタバレを含みます。
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最初のページ 手塚治虫の『リボンの騎士』の影響がわかります。

隣国のザロモン人が国境まで攻めてきているというのに、酒盛りのばかさわぎを続けるデグルス王。ある夜、そんな宮廷にザロモン人が忍び込む。騒ぎからシャロット伯爵の一人娘リンダを救ってくれたのは、たてごとを持ち、仮面をつけた吟遊詩人であった。彼の指には黄金の指輪がはめられていたが、リンダはその指輪に見覚えがあるような気がした。
王の大競技会が開かれ、試合に勝ったのは、先日の吟遊詩人である謎の騎士。リンダのねがいでかぶとを脱いだ顔を見てリンダは「ユリウス」と叫ぶ。だがシャロットは、ユリウスに二度とリンダにかかわるなと言う。
謀反をたくらむゾルゲ公の陰謀で、シャロットは謀反人にされ、リンダにも追っ手がかかる。ユリウスはそんな二人を何度となく助けてくれる。

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2巻の口絵

やがてあかされるユリウスの正体、そしてリンダとユリウスの関係は‥‥


3巻の巻頭に描かれた、それまでのあらすじ
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リンダは、世界の人々の運命をつかさどる大神プレアデスのむすめでした。
ある日、戦場で死んだわかい騎士を愛し、生命のやどる指輪をあたえたために、父 大神のいかりをかい、ゆびわをとりもどすよう 地上におとされました。
伯爵シャロットのむすめとして、人間の世界にうまれかわったリンダは、ゆびわの力で地上にかえることのできた騎士にであいます。
けれど、なんとひにく、かれは敵ザロモン国の王子にうまれていたのでした。
騎士のなまえは ユリウス――。
リンダには、ユリウスからゆびわをとりもどすことはできませんでした。
それは命をうばうことなのですから――。

この大ロマン!!

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ユリウスとリンダのこんなラブシーンに、どれだけ心躍らせたことか!!

まさに「更級日記」の作者にとっての「源氏物語」が、私の場合、このマンガでした。
こんなロマンチックなマンガに浸っていれば、周囲の悪ガキ少年たちに目がいかなくなるのは当然で、後から考えると、せっかくの思春期に、空想ばかりしていてモッタイナイことをしたなぁーとも思うのですけど‥‥

このマンガの魅力は、ストーリーだけではなくて、水野英子の華麗な絵も大きな要素です。
1巻の最初の頃は明らかに手塚治虫の影響がわかる絵です。
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単行本第1巻の最初に「この本を、私をそだて、漫画家への道をひらいてくださった 元講談社編集部員・丸山昭氏へおくる。」と献辞があります。
第2巻にその丸山昭氏(「元『少女クラブ』編集長」という肩書きになっています)の「水野英子について」という文章がありますが、氏が手塚治虫先生の担当編集員として通っていたとき、先生に見てもらいたいと作品を送ってきたのが水野英子で、そんなきっかけから、色々と作品を描いて送ってもらうようになり、やがて「少女クラブ」執筆陣のレギュラーの座を占め、上京した水野英子が住んだのが、かの「トキワ荘」だったとのこと。

物語が進むと、女性らしい繊細で流麗な絵になっていきます。
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初期の少女マンガは結構男性の作家によって描かれたものも多かったですが、
(手塚治虫をはじめ、石森章太郎、ちばてつや、横山光輝も描いていますよね)
やはり、流麗な絵の魅力ということでは、女性作家にかなわないと思いますね。
そして、少年マンガより一段低く見られていた少女マンガ界は
「24年組」と呼ばれる昭和24年前後生まれの作家が華々しく活躍する時代になるのですが、私は、
この「星のたてごと」や水野英子が大きな影響があったと考えています。
24年生まれなら、「星のたてごと」連載当時、ローティーンだったわけで、
私と同じように、この大ロマンにときめかないハズがない!

池田理代子など、出てきた時、絵が水野英子にそっくりで(特に男性がソックリ)
私は「ここまでまねっこしたらいけないでしょう」と思ってました。

水野英子の絵では、この頃の絵が私は一番好きかも。

と言うのは、第3巻の41ページから70ページまで、明らかに絵が違うからです。
あとがきにありますが、「少女クラブ」連載の時に、二ヵ月ほど目を悪くして代作してもらった部分があり、そこを書き直したとのこと。そして、作者も書いていますが、
「この仕事をしながら一番ふしぎに思ったのは、昔と同じ絵が、もう二度と描けないということでした。同じ人間が月日を重ね成長することは、また作品をもひとつの場所にとどめてはおかないのです。」
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書き直し(1968年)をしたページのリンダとユリウス
「ファイヤー!」(1969年~)の絵に近いですね

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連載当時(1962年頃?)のリンダとユリウス

しかし、これだけの波乱万丈の物語が、3巻の単行本に収まってしまうのは驚きです。

3巻には「ルル」という70ページの作品も収録されており、
「星のたてごと」とは全く違うオシャレなコメディーで、これはこれで、私は大好きです。

『星のたてごと』 eBookで読めます

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もりたじゅん『うみどり』 [マンガ]

前記事で、もりたじゅんの『ダニイル』について書きましたが、

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もりたじゅんの作品で、何と言っても印象に残っているのが『うみどり』
1970年「りぼんコミック」6月号に掲載された作品です。

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とにかく衝撃でした!

当時、劇画も出てきていましたが、まだ、マンガは子どもの読むものでした。
大学生がマンガを読んでいると、非難めいて報道されたりしていました。
もちろんレディースコミックなどというものもありません。

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こんな、「女のハダカ」シーンが少女マンガに登場したのは、
これが最初ではないでしょうか?
生々しい女の肉体。

それまで、女のハダカ=エッチ(今の、sexという意味ではなく)
という感覚だった私(中学1年でした)は、
見てはいけないものを見てしまったような、
ちょっと拒否反応を起こしてしまうほどの衝撃でありました。

その頃の少女マンガで、もりたじゅんの絵は異質でした。
それまでの少女マンガの登場人物は、目の大きさもそうですが、
現実離れした人形のようで、外国を舞台にした憧れの世界とか、
薄幸の少女の悲しい世界といった、あくまでも“おはなし”というか、
虚構の世界の住人でありました。
それが、肉体の柔らかさ、生身の肌を感じさせるグラマーなヒロイン!
びっくりしました。

で、ストーリーもすごい!
実の兄妹の恋愛モノ!!

今なら驚かないかもしれませんが、1970年ですからね。

「もりたじゅん うみどり」で検索したら、ネット上でマンガが読める
Yahoo!コミックで、この作品が読めるようです。(全てを読むのは有料)
http://comics.yahoo.co.jp/thirdline/moritazi01/umidori01/list/list_0001.html

以下、ネタバレを含みます。

のゆりとわたるは、恋人のように仲がいい兄妹。
高校生になったのゆりは、新津朱鷺夫に出会う。
朱鷺夫は、ほとんど高校の授業には出ないのに成績もよく、けんかも強く、
女嫌いだが、女生徒の憧れの的であった。
のゆりは朱鷺が好きでもない女生徒にキスをしている場面に出くわし、
不潔だと反発しながらもひかれていく。
わたるはのゆり以外の女に興味がわかないのを悩んでいた。
わたると朱鷺は友人で、家に遊びに来た朱鷺は、のゆりに
わたるから理想の女性像を聞かされつづけて、最初にのゆりを見たとき、
「自分の理想にはまりすぎる女がいると驚いた」と言う。
二人は急速に親しくなる。

しかし、のゆりは養女で、朱鷺夫とは実の兄妹であることが判明!

のゆりは小学校5年にもなって兄と一緒に男湯に入っているし、
高校生で、好きでもないのにキスするなんて不潔!と怒るし、
今の感覚だと信じられない程、幼い。

そののゆりが、最後には朱鷺と、お互いの手をリボンで結んで、
全裸で海に入っていくという結末!!!!

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「最初で最後のくちづけをかわして」
「私たちは海に入ります」

今の醒めた目で読むと、色々ツッコミたいところもあるでしょうが‥‥

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このキスシーンのなんと肉感的なこと!
そして、海の波と紙面いっぱいに飛ぶリアルなうみどりの絵。

まだ私は、なぜ実の兄妹が愛し合ってはいけないのか、よく理解できていなかったのでしたが、この結末の数ページ、とにかく衝撃でした。

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ラストのページには、"JUN MORITA & HER FAMIRY" として、スタッフの名前が入っています。
H SASHIOKA
A SHIOMI
T MATSUMOTO
T HONMA
G KAMASE H HOSHI

後で気がついたのですが、二番目の"A SHIOMI"は、汐見朝子ですよね?
うん、確かに汐見朝子はもりたじゅんの系列です。
この後、りぼんコミックでデビューして、りぼんにも描いていました。
私は汐見朝子の作品はちょっとヤボったく感じて、あまり好きではなかったのですが、
『ジョーのおもちゃ箱』(1972年りぼん10月号掲載)という、
シーラ・ディレーニーの『蜜の味』をヒントにした作品が印象に残っています。

私はレディースコミックは読まないので、ネットで調べていて知ったのですが、
もりたじゅんも汐見朝子も、今もマンガを描き続けているとのこと。
すごい、いいことですね。
レディースコミックの世界へというのは、作者本人の年令が上がってきたということもあるだろうけど、もうこの頃の作品世界からも感じられます。
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もりたじゅん『ダニイル』 [マンガ]

アンドロイドと人間との関係ということで思い出すマンガがあります。

1969年(昭和44年)りぼんコミック11月号に掲載された
もりたじゅん『ダニイル』

もりたじゅんのマンガは、肉感的だけど健康で明るいヒロインが、
下町的な人情のなかで活躍するコメディーといった印象があるのですが、
この作品はもりたじゅんの作品の中でも異色作。
まだ少女マンガにSFは珍しかった時代で、私はこの斬新さにびっくりしました。

もう今、この作品を読むことは難しいと思いますので、ネタバレになりますが、
以下、私の持っている切り抜きからあらすじを紹介します。

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まず、ロボットに関する三か条から始まります。
第一条 ロボットは、人間に危害をくわえてはならない。
    また、人間が危険におちいった場合、それをみのがしてはならない。
第二条 ロボットは、人間の命令に従わなければならない。
    ただし、その命令が第一条にそむく場合は、従う必要はない。
第三条 ロボットは、第一、第二条に従うかぎり、自分で自分を守らねばならない。

これはSF作家アイザック・アシモフの作品で定義されたものだということを
後になって知りました。

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レイチェルは、ロボット会社の父の頼みで、ロボットを家庭に進出させるための
実験として、人間そっくりのロボット・ダニイルと三週間生活することになる。

最初はダニイルを気味悪がっていたレイチェルだが、
自分の劣等感や片思いの悩みを打ち明けていくようになる。

ダニイルは、レイチェルの部屋を飾り、彼女の髪型や洋服を変える。
そして、彼女に自信をつけさせるために、片思いの相手・ペインや、
ペインのガールフレンドで高慢なグローリアや友だちを家に招待しようと言う。

そして、皆を招待したその日、ダニイルはレイチェルを抱きしめ、
「出て行きたくない」とせまる。
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びっくりして彼をはねつけたレイチェルだが、カーテンがあいていて、
その様子を皆に見られたことに気付く。

しかし、家に入ってきた皆は‥‥レイチェルがものすごいハンサムに
愛を打ち明けられたと思い、嫉妬している様子。
そして、ペインはレイチェルをデートに誘うのだった。

しかし、翌日。実験期間が終わり、帰宅した父に、ダニイルは会社に運ばれ、
解体されて検査されるということを聞く。
もう永久に会うこともないダニイル――レイチェルはペインからの電話にも出ず、
ヒステリーに近い状態に陥ってしまう。

報告書を読んだ会社では――
「ダニイル一号は修正の必要があるな」
「女主人に恋してしまうようなロボット」というジャン博士に対して、
アガサ博士が言う
「彼は恋などしておりませんわ」「もちろん工学上できるはずもありませんけど」
「彼は ロボット法三原則の第一条に従っただけですのよ」
「第一条は 人間に危害を加えてはならない それを見すごすこともならない
 そうでしたわね」
「ところがレイチェルに危害がおよぼうとしていた」
「彼女自身の劣等感によって 失恋という危害がね」
「だから彼は彼女の劣等感をとりのぞこうとしたのです 恋をしたふりをしてね」

しかし、今の彼女の状態は?

「われわれの誤算があったのです」
「私たちは先に気付くべきでした」
「機械が人間を恋することはできないけれど」
「女にはそれができるということに」

「けっきょく われわれの最大の誤算は」
「ダニイルを美しくつくりすぎたということです」

ラストの、顔をはがされ解体されるダニイルと悲しみに沈むレイチェルが衝撃的でした。
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もう40年前の作品ですけど、今読んでも全く古く感じません。あらためてびっくりしました。
もりたじゅんにしては、かなりカッチリと描き込まれた絵です。ギャグも入りません。
まだ、もりたじゅんのスタイルができていない初期、色々トライしていた頃の
意欲作だったのではないかと思います。
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樹村みのり『見送りの後で』 [マンガ]

2008年も押し詰まってきました。なんとか年賀状は出しましたが、
年末らしいことは何もしておりません。もう今年は開き直りです。

昨日はamazonで買ったマンガが届いたので、しっかり読みふけっていました。
それがこちら‥‥

見送りの後で (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

見送りの後で (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

  • 作者: 樹村 みのり
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2008/01/11
  • メディア: コミック



樹村みのり『見送りの後で』
miyucoさんのブログ milk pan,milk crown の『「星に住む人々」 樹村みのり』
を読んで、思わずamazonの中古品をクリックしてしまったのでした。

樹村みのり!! ファンでした。

最初に読んだのは、『病気の日』1970年(昭和45年)りぼんコミック8月号でした。
それまで読んでいた少女漫画とは全く違う独特な作風にビックリしました。
病気で休んだ一日のことを少女のモノローグで丹念に描いていて、
特に面白いストーリーというのもないので、不思議な作品‥‥といったカンジでしたが、
コマの配置とかも、余白を生かしてあって、とにかく絵が上手い人だと思ったのでした。

次のりぼんコミック9月号に載ったのが『海へ‥‥』
絵の上手さや、コマ割りのグラフィック的な処理には感心したのですが、
その時(政治的なことにはあまり関心のない中学1年生でした)は、この作品が
ベトナム戦争を描いているということには気がつかなかったのでした。

しかしまぁ、当時のりぼんコミックの読者に
ベトナム戦争のマンガを理解しろというのが無理なわけで‥‥

それから、『解放の最初の日』を読んで、これはガツンときました。
まんがエリートのためのまんが専門誌というのがキャッチフレーズの「COM」の
1970年5・6月合併号に載った(なので初出はこちらが先)だけあって、
すごい‥‥テーマがものすごく重い!!
アウシュビッツが舞台で、自分が生き残るために他人を犠牲にしてしまう、
そんな極限状態の人間を描いていて、とにかくすごいマンガ家だと。

一番印象に残っているのが1974年の別冊少女コミック10月号に載った
『見えない秋』
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夏休み明けにクラスメートの死を知った少女の心を丹念に描いて、
死について考えます。
「お友だちはきっと今は天国でとても楽しく暮らしているわ」という母に対して、
「たとえば‥‥空にむかったあの子の想いは?」
「そうしたこともみな‥‥なくなってしまうのでしょうか」
「今こんなに たしかなわたしも やっぱりいつか いなくなってしまうのでしょうか?」
こんなセリフを、もう何度も何度も、暗唱できるくらいに読みました。

樹村みのりの18年ぶりの新刊という『見送りの後で』
(しかし「眠れぬ夜の奇妙な話コミックス」というキャッチフレーズ(?)は、ちょっと‥‥と思うのだが)
5つの作品が載っています。

まず、本のタイトルにもなっている『見送りの後で』(朝日ソノラマ「夢幻館」2006年vol.11)
老齢の母親を見送った主人公――女学生の子どもを持つシングルマザーといった
設定で、作者と共に視点も年令相応になっていて、かえって私などには共感する
ところも多い――が母親とのかかわりを回想する。
母から受け継いだもの、受け継がなかったもの‥‥そう、この作品に描かれていることは、
私も最近、よく考えるようになったことで、あー、日常を丹念に描いていく
樹村みのりの作風はずっと変わっていないなと。

そして1976年、別冊少女コミック11月号に掲載された『星に住む人々』を
リメイクした『星に住む人々』(朝日ソノラマ「夢幻館」2007年vol.12)
「当時は思い通りの絵が描ききれず‥‥ページ数も増やし、全面的な描きおろし」という
ことなんだけど‥‥うーーん、私としては、あまり違いがよくわからないのだけど。
ここまで同じなら、別に描きなおさなくてもと思ったり‥‥まぁ、作家に対してこんなことを
言うのは酷なんだろうけど、私は以前の絵の方が可愛いくて好きなんだけどなぁ‥‥

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1976年別冊少女コミック11月号に掲載された『星に住む人々』
(私が持っているのは、1979年プチコミック1月号に再録されたもの)

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2007年にリメイクされた『星に住む人々』

『風のささやき』(宙出版「I(アイ)」1987年7月号)

『また明日、ネ』(小学館「プチフラワー」1984年12月号)
もう20年以上前の作品になるわけですねぇ‥‥樹村みのりの、こういったユーモア感覚も
私は大好きだったのですけど‥‥『菜の花畑』シリーズなんか楽しくてよかった。
この作品に出てくるイラストレーターの妙おばちゃんは作者がモデル?
散らかった部屋とか、仕事がのらないと猫と遊んだりとか、すっごくリアリティーがあって、
生き生きと生きる彼女はとても魅力的だ。

『柿の木のある風景』(朝日ソノラマ「夢幻館」2006年vol.13、14)
主人公の家と隣の家の昭和30年代始めからの歴史。落ちぶれていく隣の広瀬さんの家の様々な人を
リアリティーのある絵で描いていて、あぁ、昔はこんな人が確かにいたなぁと思った。
しかし、作品の最後に自分の家と広瀬家を比べて、主人公に言わせている
「けれど年月が過ぎ去ってみると 多少のデコボコは大きな違いには思えなくなった」
「どちらの家族も懸命に生きたのだった」‥‥うーーん、やっぱり樹村みのりはすごい!
タグ:樹村みのり
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『くるねこ』本買っちゃいました [マンガ]

えー、実は私、読んでいるブログはたくさんあります。
ほとんどが、nice! 押しも、コメントも残さない読み逃げですが‥‥
(コメントを書くのは、私の場合非常に時間がかかるのですみません)

so-netブログの中でも人気があると思われる、
すずめさんのブログ「お絵かきすずめ」 http://hana-suzume.blog.so-net.ne.jp も、
ほぼ毎日読みに行ってます。(毎日更新されてます)ひよこ隊やすずめ隊長の絵が可愛く、
透明感のある水彩画、ユーモアのある文章など、楽しませてもらってます。
そして、ブログランキングのポチは押してくるんです。
もちろん、すずめさんのブログの応援なんですけど、もうひとつ、
ブログランキング(イラスト部門)第一位の、
くるねこ大和 http://blog.goo.ne.jp/kuru0214 を見に行くこともあるんです。

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最近、寒いためか、タビが時々、ひざにちょっとだけ乗ってくるようになりました。
でも、ビクビクしながら私のひざでフミフミするので痛い‥‥
タビは人に抱かれて安心してゴロゴロノドを鳴らすということがありません。
なんか警戒しているんですよねー。

捨て猫を拾ってきてしまうという名古屋の商業デザイナー くるさんの、
猫たちとのぎうぎうな日々がマンガで描かれていて、猫好きにはたまらない!!
現在、5匹の猫と暮らしていらっしゃるんですが、それぞれの猫たちの個性が描き分けられているし、
とにかく、和めるというか、同じようなコマが続いたりするんですけど、その、
なんともいえない間が、すごくいい!!
時代小説好きという著者が、時々江戸時代のコスプレ(?)で登場するのもいいし。

『くるねこ』の本が出版されているのはブログで知っていました。
でも、厳しい家計事情の中、ブログで読んでいるから、本まではいいと思っていました。
久しぶりに入った本屋で見つけて、ちょっと手に取ったら‥‥結局買っちゃいました。
『くるねこ』と、『くるねこ 2』と、どちらにしようかと迷った挙句、『くるねこ 2』を。

くるねこ 2

くるねこ 2

  • 作者: くるねこ 大和
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2008/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



『くるねこ 2』を選んだワケは、2には帯がついていて、それがなかなかシャレていたんですよ。
この表紙に、帯がつくと‥‥ちょっと絵が変わりまして。ふふふ。

まだブログで読んでいなかった頃の話なので、現在の「胡ぼん」が赤ちゃんの頃の話や、
それぞれの猫たちの関係がわかって、現在のブログがさらに楽しめるようになりました。
これといったストーリーはないんですが、なんか、ついつい手にとって、
何度も読み返してしまうような本です。

「くるねこ 2」は、
車上狙いの被害にあって警察に行った妹さんが、そこでみかけた子猫3匹を拾ってきて、
その子猫たちの怒涛の授乳期のこと、2匹はもらわれていき、白くん改め「胡ぼん」は
くるねこ愚連隊に入隊。わっしょい期が終わって、大人になっていく胡ぼん。
ビビリの「トメ」さん、べらんめぇ口調の見かけはワイルドだけどケナゲな「ぼん」
気難しくてデリケートな「もんさん」や「ポっちゃん」それぞれ味があります。
このシンプルだけど味のある絵、私は好きです。

そして、ホロリとしたのが、昔のくるさんの実家の猫 マォ氏の話。
22年生きたマォ氏が、タンポポの綿毛が飛び交う中、去っていくシーンはジーンとしました。


くるねこ

くるねこ

  • 作者: くるねこ大和
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2008/01/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


‥‥で、今、最初の『くるねこ』も買いに行きたいという誘惑と戦っているんですよ。
そして、『くるねこ 3』は12月20日発売とのこと。こっちも買うとなると、財布がイタイし、
だいぶブログで読んでいるハズ。なのですけどねー‥‥欲しいっ!

くるねこ 3

くるねこ 3

  • 作者: くるねこ大和
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2008/12/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




あ、久しぶりに本屋へ行ったワケは、ビッグコミックの増刊号を買うためです。
(コンビニにはなかったので)
岡崎二郎先生の「宇宙家族ノベヤマ」が最終回とのことで、
結局どういう話だったのか、ここまで付き合ったので知りたかったのだけど、うーーん、
やっぱり、どうもよくわからない。最終逆転的なキレイなまとめになっているのかと、
ちょっと期待したんだけど、色々理屈こねてるばかりで。ちょっと先生、自分の理論の中に
入り込んじゃって煮詰まってしまったんじゃない?
もうちょっと外の世界へ向った、行動的な作品を期待してます。

宇宙家族ノベヤマ 1 (1) (ビッグコミックス)

宇宙家族ノベヤマ 1 (1) (ビッグコミックス)

  • 作者: 岡崎 二郎
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2007/02/28
  • メディア: コミック


「宇宙家族ノベヤマ」は、単行本第1集が出ています。第2集(完結編)は、
書き下ろし30ページを収録して来春発売予定とのこと。
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『チーズスイートホーム』にメロメロ!! [マンガ]

猫好き、そしてコミック好きとしては、何を今頃!? と言われると思いますが、
こなみかなた『チーズスイートホーム』にメロメロになってます。

チーズスイートホーム (1) (モーニングKCDX (1943))

チーズスイートホーム (1) (モーニングKCDX (1943))

  • 作者: こなみ かなた
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/11/22
  • メディア: コミック



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表紙のチーが可愛くて、「モーニング」を買ったことは以前書きましたが、
http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2008-07-22
あれから、アニメも毎朝録画して見てます。
毎朝6時40分~45分なのだけど、正味は2分くらい。
月曜~木曜がチーのアニメで、金曜は視聴者から送られてきた猫のビデオ。
もーー、アニメのチーが動くだけで、可愛いいっ!!

で、やっぱり、コミックも読まなくてはと、パートが休みだった先週金曜(19日)に、
久しぶりにコミックカフェへ行きました。
ずっと行ってなかったら、料金もちょっと値上げ(3時間パックで690円)になっていた。

『チーズスイートホーム』は、1冊が薄いので、ちょっと見つけにくかった。
なんと、オールカラーなんだ~~!! こなみかなたの絵は丁寧できれいだし、
そして、とにかく可愛いっ!!!!!

好奇心旺盛で、元気で、無邪気な子猫のチー。
舌っ足らずなしゃべり方も可愛い!!

とりあえず、3巻まで読んで、それから『のだめカンタービレ』を、
以前19巻までここで読んだので、http://shizukozb.blog.so-net.ne.jp/2008-02-12
その続きの20巻と21巻があったので、そちらを読んだところで時間になったので出た。

でも‥‥『チーズスイートホーム』が欲しくなっちゃったんですよねーー。
コミックカフェの帰りに、本屋に寄って、そこで、4巻を買ってしまったんですっ!

チーズスイートホーム (4) (モーニングKCDX (2286))

チーズスイートホーム (4) (モーニングKCDX (2286))

  • 作者: こなみ かなた
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/04/23
  • メディア: コミック


お金を払うときになってちょっと驚いたのが、これ1冊、890円(税込)もするんだー!
うーん、まぁ、オールカラーだしぃー。可愛いから仕方ないなぁーーと。

しかし、4巻を読んで、ますますメロメロになりまして‥‥
なんと、その夜に、5巻を買いに、本屋に走りましたよっ!

チーズスイートホーム 5 (5) (KCデラックス)

チーズスイートホーム 5 (5) (KCデラックス)

  • 作者: こなみ かなた
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/04/23
  • メディア: コミック



特に劇的なストーリーとかあるわけじゃないけど、
(親猫とはぐれた子猫のチーが、山田さんち――オトーサン、オカーサン、ヨウヘイの
 3人家族――に拾われて、でもそのマンションはペット飼育禁止なので、
 とうとう新しいマンションに引っ越して‥‥)
とにかくチーが可愛い!! 何度も何度も読んでます。

猫好きなら、たとえば、引っ越した先で、知らないニオイをくんくんかいでまわるところとか、
頭をこすりつけて自分のニオイをつけるところとか、
階段を登ったはいいけど、降りられなくなるところとか、すごくわかる。
ホントにこんなことを猫はしゃべってるんじゃないかと思う。
あーー、こんな可愛い子猫が欲しいよーーっ。

我が家の猫たちは、なんでこんな警戒心の強い猫になってしまったのか?
臆病な性格? それとも育て方にも問題があるかなぁー。
山田さんちはとてもチーを可愛がってるものねー。

猫好きなら、この本は絶対オススメです! この本を読んだダンナが、
「この2冊を買ったのなら、これはもう全巻揃えなくてはイカンのじゃない?」
と言っております。うーーん、ちょっと高いのが難点。ブックオフにあるかなぁ?
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古典的バレエ漫画 西谷祥子『白鳥の歌』 [マンガ]

山岸凉子『アラベスク』へ、マアカさんがコメントしてくださいました。

>バレエといえば「・・・の星」とか「白鳥の・・・」とかの時代でしたね。
>あれはあれでおもしろくて懐かしかったりするのですが。

はい、私のお宝から、西谷祥子『白鳥の歌』というバレエ漫画を紹介します。
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西谷祥子といえば、華やかな絵柄で、外国の少女たちの夢のような恋愛を描いたおシャレな作品が思い浮かびます。私は『学生たちの道』が特に好きでした。
また、学園ものや時代ものなど幅広いジャンルの膨大な作品があり、少女漫画の初期、西谷祥子は間違いなくその先頭を走っていた作家の一人でしょう。

この『白鳥の歌』は、昭和40年(1965年)の週刊マーガレット27~36号に連載されたもので、私が読んで持っているのは、昭和47年(1972年)別冊マーガレット10月号と11月号に総集編として掲載されたものです。
西谷祥子が「私の2回目の作品です。とっても、なつかしいワァ‥‥。」とコメントしています。

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絵も、後の、西谷祥子の華麗な絵柄もうかがえますが、時代を感じさせるちょっと素朴で力強い絵で、上手いです。

1991年に発行された、別冊太陽『子どもの昭和史 少女マンガの世界Ⅱ 昭和三十八年―六十四年』に、西谷祥子が、「石森、水野両先生の間に、勝手に生まれた私製(生ではない)児と、自らを位置づけていた」と書いていますが、この作品の絵には石森章太郎の影響が感じられます。

ストーリー
大久保あゆ子は、貧しい母子家庭の少女。原バレエ研究所の助教授で、人気のプリマである三枝先生は、あゆ子の才能を見出し、バレエを無料で教えています。
発表会の“シンデレラ”のプリマに選ばれますが、それをねたんだ生徒が、あゆ子を滑らそうと、階段にろうを塗り、そのわなにかかった三枝先生が階段から落ちて、足を折ってしまいます。
犯人の罪をかぶせられ、ショックをうけたあゆ子を待っていたのは母の死でした。
“シンデレラ”のプリマはお金持ちのお嬢様・岡美奈子が代役をつとめ、バレエ界に颯爽とデビューします。
東北のおじさんにひきとられたあゆ子ですが、つらい仕打ちをうけ、家出をします。
倒れたあゆ子を助けてくれたのはヤクザでした。キャバレーへ売られたあゆ子は「酔っ払った人の前で踊るなんて」と絶望しますが、キャバレーの舞台監督・沢村の熱意に応えて、キャバレーの舞台で踊ります。
自分のことを話さないあゆ子について、沢村が友人の芸能記者・立石に相談したことで、三枝先生がキャバレーへあゆ子を迎えに来ますが、あゆ子は昔のことは思い出したくないと断ります。
三枝先生のところへイギリス王室バレエ学校のマリア教授が尋ねてきた時、三枝先生はあゆ子を推薦します。
あゆ子は、キャバレーをやめる沢村についていくことになり、最後の舞台で本格的なバレエを踊ります。その舞台を見たマリア教授は、あゆ子をイギリスへ留学させることを決めます。
3年の留学を終えて日本に帰国したあゆ子。第一回の公演の演出を日生劇場の演出家の弟子となっていた沢村に依頼します。そこへ、あゆ子には負けたくない、同時に公演をやりたいと岡美奈子が劇場に来ます。あゆ子は自分の公演に一緒に出演してほしいともちかけ、二人の友情が戻ります。合同公演の前に、三枝先生と立石の結婚式があり、そこで二人は一緒にデュエットを踊るのでした。

‥‥うんうん、ありがちなパターンで、それぞれのエピソードも、どっかのドラマとかで見たような、なんか懐かしいカンジ。でも、結構面白かったです。

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ライバルの岡美奈子は、お金持ちのお嬢様でありますが、母親が大金を寄付したりする行為を恥ずかしく思っていて、失踪したあゆ子のことも気にかけたりして、性格はよく設定されています。
あゆ子を陥れるのは、岡美奈子の歓心を買いたいと思っていたとりまきの二人でした。

東北のおじさんの家でのシーンは、さすがに時代を感じますが‥‥
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山岸凉子『アラベスク』 [マンガ]

読んでいるびっけさんのブログで山岸凉子の『アラベスク』を取り上げていました。
はい、私が一番マンガにハマっていた頃、夢中になった作品です。

『アラベスク』第一部は、
「りぼん」に昭和46年(1971年)10月号より昭和48年(1973年)4月号まで連載されました。

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「りぼん」昭和47年12月号ふろく
この号は、山岸凉子がヨーロッパへ取材旅行に行って休載したため、
それまでのストーリーのダイジェストやバレエの世界をまとめたふろくがつきました。

以下の画像は、私の「りぼん」からの切り抜きです。

りぼんマスコットコミックスの『アラベスク』1巻と2巻も持っています。
(連載の最初の頃、りぼんを買わなかった月があるので、後から買ってしまったのです。
 3巻以降は雑誌からの切り抜きが揃っているので、コミックスは買っていません)

連載第一回目のキャッチフレーズ(?)に、
「まったく新しい
 バレエまんが
 ここに登場!」とありましたが、

それまでのバレエまんがが、日本のお稽古事としてのバレエ団を舞台として、
(バレエはお嬢様のお稽古事といった華やかなイメージがありました)
貧しいけど才能のある主人公が、お金持ちのライバルにイジメられても、
耐えて頑張るような、そんなお涙頂戴ストーリーがパターンでしたね。

『アラベスク』は、当時バレエの世界トップレベルにあったソ連の
レニングラードバレエ学校を舞台にして、
舞台芸術としてのバレエを極めていく、主人公ノンナ・ペトロワと、
彼女の才能を見出し、指導していくユーリ・ミロノフの真摯な姿が素敵でした。

そして、バレエのポーズや動きが美しくリアルに描かれているところも素敵でした。

まぁ、シンデレラストーリーではあります。
いなかのバレエ学校(キエフは田舎ではない?)で、基礎ができてないとか、
踊りが荒いとか言われていたノンナが、たまたま視察に来た一流ダンサーの
ミロノフ先生に見出され、伝統あるバレエ団の数あるソリストを押しのけて、
主役に大抜擢されるわけですから。

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連載第7回 「アラベスク」初演の場面

‥‥もしかしたら、私の中にもすごい才能が眠っていて、ミロノフ先生のような
素敵な男性が見出してくれないかしら‥‥なんてのは、少女の夢でありました。

でも、主人公ノンナの汗と涙と血のにじむ努力が、シンデレラストーリーの
ご都合的なところを忘れさせて、バレエの道探求ドラマにしていました。

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連載第10回 映画「アラベスク」のモルジアナ役をかけて「瀕死の白鳥」を踊るノンナ

で、こういうストーリーで大事なのがライバルです。
努力型の主人公には天才型のライバルというのが王道。

ラーラ(ライサ・ソフィア)の存在は大きかったですね。

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左下のコマがラーラ
追い上げてきたノンナに、心を乱す言葉をかけて動揺させた結果を見て笑っています

「天才なんて9分の汗と1分の才能」と自分に言い聞かせるノンナにラーラは言い放ちます。
「9分の汗だけじゃ 天才の10分には足りないのよ」
「のこり1分があなたにある?」
「あたしには‥‥あるわ!」と。

ミロノフ先生は、ラーラとノンナの違いをこう言います。
「ラーラが゜踊りの解釈をまちがっていたとする」
「その時は一言いえばいい 彼女は一度でこっちが要求していた踊りをおどることができるんだ」
ノンナは?
「だめだ なかなか踊れん」
では、やっぱりラーラが上か?
「一度で完璧に踊れるということは おそろしいことだ」
「なぜなら‥‥そこまで だからだ」
「一度で完璧には踊れないものは 10回踊るとすれば10回努力する」
「20回なら20回努力する 全力でね」
「そしていつか 要求したもの以上を踊ることになるんだ」

そして、自分以外が全てライバルというバレエ――だけでなく、同じ道を志す者の
厳しさもしっかり描いていました。
ノンナが主役に大抜擢された時、だれよりも喜んでくれると思ったアーシャが
かなしそうな目をしていたこと。

実は、この連載が始まるまで、私は山岸凉子をあまり評価していなかったのです。
ストーリーは面白いところもありましたが、わりとそれまでの少女漫画のパターンでしたし、
なにより絵がどうも‥‥描きなぐったような荒さが気になっていましたので、
『アラベスク』で絵がものすごく変わって、上手くなっていてビックリしました。
そして、カラーページがすごく美しくて、またビックリでした。

私は、山岸凉子は絵を努力して描く人ではないかと思うのですが‥‥
こういう絵を描きたいと考えて、自分の理想のイメージに出来る限り近づけたいと、
資料を調べたりして、結構苦しんで描くタイプではないかと。
いわば、努力のノンナタイプではないかと思うのですが。
萩尾望都は絵が上手いです(山岸凉子が下手というわけではないのですが)し、
大島弓子は、感覚的に絵を描くというか、わりと楽しんで絵を描いていたのではないかと。

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連載第15回 1ヵ月休載して、ヨーロッパ旅行のあと、パリを舞台に展開

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連載第17回 新しいライバル マチュー だが彼女は病に倒れる

モダンバレエを踊るマチューの格好よさに、ノンナの新しいバレエの戦いと成長を
期待していたのですが、マチューは「エトワールになって『ジゼル』を踊る」夢を
果たせずに、白血病でなくなってしまいます。
「ジゼル」の死の衣装を着て埋葬されるマチューが哀しく美しかったです。

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そして最終回(18回)「りぼん」昭和48年(1973年)4月号
レニングラードに帰ったノンナたちに賞が贈られて、おめでとう‥‥と、ハッピーエンド。

山岸凉子『ゆうれい談』でも書いたけど、なんか急いで終わらせてしまったような印象を持った。

『アラベスク』第二部は、「花とゆめ」で昭和49年(1974年)6月号より連載開始
ですが、ちょっと漫画から遠ざかりつつあった頃であり、雑誌が違うのであまり買えなくて、
実は第二部を全て読んだのはわりと最近になってからでした。

最近またバレエ漫画『舞姫 テレプシコーラ』を描かれていて、評判もいいようですね。
‥‥読んでみようかしら。
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山岸凉子『ゆうれい談』 [マンガ]

先週、ブックオフで、山岸凉子の『ゆうれい談』が文庫になっているのをみつけた。

ゆうれい談 (MF文庫)

ゆうれい談 (MF文庫)

  • 作者: 山岸 凉子
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2002/08
  • メディア: 文庫



この作品、私はリアルタイムで読みました。私のお宝です。

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昭和48年(1973年) りぼん6月号付録

りぼんに描いているマンガ家から、読者の人気投票で6人を選んで、
「りぼん競作まんが全集」として、100ページ(表紙共)の別冊ふろくが
昭和48年1月号から6月号までつきました。
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第1巻 もりたじゅん『キッス甘いかしょっぱいか』
第2巻 一条ゆかり『ハートに火をつけて』
第3巻 弓月光『天使のような悪魔チャン』
第4巻 のがみけい『こいきなレディ・エル』
第5巻 山本優子
第6巻 山岸凉子『ゆうれい談』

山本優子の作品タイトルはちょっとわかりません。当時のりぼんを読んでいた私としては、
一条ゆかり・もりたじゅんは絶対、のがみけいも当然入るだろうし、
『アラベスク』の山岸凉子は入るだろうけど、連載はどうするのかと
結果発表があった時にちょっと心配したら、
6月号までに『アラベスク(第1部)』が終わってしまいました。
なんとなく急いで終わらせたような印象を持ったのは、私の気のせい?
弓月光も、私の好みではなかったのですが、人気はあったように思います。
山本優子は、私は評価していなかったのですが‥‥華麗でロマンチックな絵柄で
トボケた話というのが、読者には人気があったのでしょう。

このりぼん人気作家6人に選ばれて競作マンガを描くというのは、
作家にとって名誉であると同時にプレッシャーもあったのではないかと思うのですが。

‥‥で、その最後、6巻目として描かれた『ゆうれい談』
読んだ当時の私の印象は、「え!? こんなマンガもアリなの??」
それまでストーリーマンガというものは、起承転結がきちんとしたフィクションであると
思っていたので、この、マンガ家が実名で出てきて体験を語るという話にビックリしたのでした。
でも、マンガ家というものにちょっとあこがれていた当時の私としては、
マンガ家の世界や交友関係などが描かれたこの作品は興味深く、面白かったです。

私は怪談は好きではないです。ホラー映画は見ません。
私は霊感みたいなものは全く無いし、幽霊を見たこともありませんが、
怖い話や、ホラー映画などの後は、思い出して怖くなるので、できるだけそういう話は
聞かない、見ないことにしています。
怪談を聞くときは、信じないわけではないのですが、どちらかというと批判的に、
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」みたいな説明がつかないものかという側から
聞いてしまうほうです。まぁ、人一倍怖がりなので、そうやって恐怖心を少しでも
和らげようとしているのかもしれません。

山岸凉子は、怖い話を色々描いていますが、この作品は、そんなに怖くないです。
(だいたい、登場人物も作者を含め、かなりギャグタッチ)
――以下ネタバレあり――
おモーさま(萩尾望都)の「寝ましょう、ここは寝たほうがいい」という対応は、
作者も「まったく彼女らしいのでありますが」とコメントしている。
ささやななえの予知能力や、大島弓子の予知夢は、そんなに驚くほどの話ではないけど、
当時の少女マンガ家の交流が興味深いです。

「ゆうれい談」のラストで、読者に対して、このような体験をお手紙くださいと
コメントしたことで、作者の下には、かなりの手紙が来たそうで、
文庫には、それらの手紙を元にしたマンガや、
タクシーの運転手から聞いた話などの、実話に基づく話も収録されている。

特にタクシーの運転手から聞いた話は怖い。『ゆうれいタクシー』
タクシーに幽霊を乗せたという話は時々聞くが、
この話のキモは、幽霊が着ていたカーディガンが後部座席に残っていたこと。
もしこのエピソードがなければ、幽霊を信じない人から
「気のせい」「幻覚」と言われてしまうかもしれないのだが、
カーディガンという現実がそこに厳然と存在することに、この話の怖さがある。

そして、比叡山からの帰り道、タクシーがなかなか山から降りられなかったという
作者の体験と、それについての考察を描いた『タイムスリップ』
昔話には「狐に化かされる」という話も多いが、それらの話や、
自身や他の人から聞いた体験から、冷静に考察していく姿勢が非常に興味深かった。

‥‥でも、結局この本は買いませんでした。ほとんど立ち読みしちゃったし、
一度は買うつもりで手に持ったのですが、他に買いたい本が次々に見つかって‥‥
それらのマンガの感想はまた書きますね。
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チーをひやちてくらさい! で、表紙買い [マンガ]

かわいいっ!!
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最近、本屋でこのかわいい猫のコミックがやたら目に付いて、
(何を今さらと言われそうですが)気になっていました。

猫好き、マンガ好きにあるまじきことですが、
実はまだ読んだことがありませんでした。

19日(土)の夜、本屋へ行ったのは、
岡崎二郎先生の「宇宙家族ノベヤマ」が掲載されている
「ビッグコミック8.17増刊号」を買うためでした。

そこで、この「モーニング」の表紙を見て、
巻頭カラーの「チーズスイートホーム」を読んで、
チーのかわいさにクラッときまして、買ってしまったわけです。

もちろん、冷蔵庫で冷やしてみました。(どんな絵になるのかは、冷やす前から
うっすらと線が浮き出ているので、わかってはいましたが)
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ふふふ、かわいいっ!

単行本がいくつか出ているのは知ってましたが、
色々なグッズが出てたり、アニメにもなっているそうですねー。
これだけかわいいキャラクターなら当然ですねー。

これはやっぱり、今までのコミックを読んでみなくては!

「ビッグ増刊」も買いましたが、どうも最近「ビッグ」は低調ですねー。

二郎先生の「宇宙家族ノベヤマ」‥‥うーーん。
前回の6.17増刊号の連載も、うーーん、というカンジだったけど、今回も、
色々な理屈をこねてるけど、結局何が言いたいのかよくわからない。
ルゴウフ人とはどんな存在なのか? なんか引っ張りすぎなのよねー。
だいたいこの連載は忘れた頃にしか掲載されないんだから、
次に引っ張るようなストーリーはねぇ‥‥。
続きながらも、一話でも完結して、読後感をスッキリさせてもらわないと。

今回、表紙に「あらすじ」として、今まで出会った先進文明が図になっている。
これはわかりやすくていいんだけど、ずいぶん遠くまで来たんだなぁって。
大体連載が始まってから何年になるんだろう。
いい加減、この宇宙旅行を完結させてほしい。

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