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あべのハルカス美術館「コレクター福富太郎の眼」 [美術]

ブログ記事が前後しますが、
1月15日(土)、大阪市立美術館「メトロポリタン美術館展」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2022-01-23
行ってくる前週の1月9日(日)、
あべのハルカス美術館へ行きました。

「コレクター福富太郎の眼
 昭和のキャバレー王が愛した絵画」をやっていました。
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どちらも大阪・天王寺なので、この2つの展覧会ハシゴされた方も
多いんじゃないでしょうか。相互割引もあったみたいですし。

でも私、メトロポリタン美術館展について知らずにいて、
「コレクター福富太郎の眼」については、
東京ステーションギャラリーでやってた頃から
見に行きたいなって思ってたんですね。

チラシに使われている絵なんか、すごく私の好みだったし!

東京展には行きそびれてしまったので、巡回展をチェックして、
ここが一番行きやすいかなと。でも他の展覧会に行ったり
ずるずるしているうちに会期末近くなってしまいました。

9日(日)も、町内の左義長へしめ飾りを燃やしに行ったりして
うーん今から大阪行くのは‥‥日曜だし混んでるだろうし‥‥
なんて一度は思ったんですが、
JR西岐阜駅11:53の列車で(大垣行でしたが、そのまま米原行きになりました)
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雪をかぶった伊吹山を見て。
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米原から新幹線を奮発しました。
新大阪まで乗車券2,640円+自由席特急券2,530円

新大阪から大阪メトロ御堂筋線で天王寺へ。280円

天王寺に14時頃に着きました。
日本一高いビル「あべのハルカス」
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「あべのハルカス美術館」はあべのハルカス16階にあります。
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あべのハルカス美術館へ行くのは初めて。
チケットを買おうとしたら
「展望台も行かれるのなら、セット券が2,000円でありますが」
って言われたので、せっかくだから行こうって買ったんですが、
あとでこれすごくお値打ちだったんだって気が付きました。

それぞれ買うと、美術館の入館料が1,500円、
展望台も1500円なので、1,000円もおトク!!

入場ゲートにチケットのQRコードをタッチして入ります。
心配していた程には混んでなくてよかった。

 
 福富太郎(ふくとみ たろう/1931-2018)は、1964年の東京オリンピック景気を背景に、全国に44店舗にものぼるキャバレーを展開して、キャバレー王の異名をとった実業家です。その一方で、父親の影響で少年期に興味をもった美術品蒐集に熱中し、コレクター人生も鮮やかに展開させました。(チラシ裏面の文)

テレビなどにも出演されて活躍されていたそうですが、私は
生前の福富太郎さんのことを全く知りませんでした。
初めてその名前を知ったのは、
2020年6月に東京都現代美術館へ
「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
を見に行った時のコレクション展

「いまーかつて 複数のパースペクティブ」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-07-17

で、福富太郎の戦争に関わる絵画のコレクションが展示されていたので。
福富太郎が蒐集した戦争画のコレクションは、没後まもなく
東京都現代美術館に一括寄贈されたとのこと。

2021年の見逃せない美術展を紹介した雑誌や、
「芸術新潮」2021年5月号の福富太郎の特集を見て、
美人画、それもちょっと陰のある女性の絵を好んで
蒐集されたことを知って、わー私好みの絵!! って。


まずは、鏑木清方の絵が並びます。
Ⅰ コレクションのはじまり 鏑木清方との出逢い
福富太郎(本名・中村勇志智)は、戦災で父が大切にしていた
鏑木清方の掛軸を持ち出すことが叶わず、家もろとも
焼けてしまったという体験が原点となって、
清方の作品の蒐集に邁進することになります。

清方のたおやかな美人画もいいけど、絵につけられた
福富太郎の言葉や、清方との交流、清方からの手紙なども
展示されていて、とても興味深かった。

福富太郎が最も気に入っていたという《薄雪》1917年
『恋飛脚大和往来』の忠兵衛と梅川が心中を覚悟して
最後の抱擁を交わす姿。
福富が清方に見せると、戦災で焼けてしまったと思っていたので嬉しい、
1ヶ月ほど貸してほしいと頼まれて座右に置かれていたとのこと。

私がいいなって見たのは、《刺青の女》1913年頃
清方には珍しい、たくましいと言ってもいいような
しっかりした肉体を持つ女性なのでは?

そしてやっぱり、《妖魚》1920年 !!
妖しく微笑む人魚の表情がたまりません!!


Ⅱ-1 女性像へのまなざし 東の作家

菊池容斎は、去年5月に岡崎市美術博物館へ
「渡辺省亭」展を見に行って、省亭の師だと知りました。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-06-09

菊池容斎『前賢故実』は、歴史上の人物581名の肖像と
漢文による略歴を記した労作で、明治から大正にかけての
歴史画家にとって最大のお手本であり、
絵を描く際のネタ本だったとのこと。

菊池容斎『前賢故実』巻第10 「塩谷高貞妻」
(渡辺省亭展図録より)
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渡辺省亭《歴史人物画帖》より「塩谷高貞妻容色絶世」(下)
26歳の省亭が『前賢故実』を模写して制作しています。
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ここに展示してあった
菊池容斎《塩谷高貞妻出浴之図》1842年 は、
容斎自身による『前賢故実』の絵画化
後ろに覗き見をする高師直が描かれてます。
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そして、渡辺省亭《塩谷高貞妻浴後図》1892年頃 は、
師の絵からポーズなども変化させています。
あれ? これって渡辺省亭展に出てた絵? でもあれは
培広庵コレクション だったと記憶してるけど‥‥って、
図録見たら、
渡辺省亭展図録より(培広庵コレクション)
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「福富太郎の眼」図録より
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背景に黒い着物を掛けた衣桁が描かれていて、
こっちの方が裸体の白さが際立つように感じる。
《塩谷高貞妻》1892年頃 は、
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培広庵のものと図録では見分けがつかない。
注文も多かったのであろう、省亭はこの画題を幾度となく描いている
(渡辺省亭展図録より)


池田輝方《幕間》1915年頃
芝居小屋の幕間を描いた華やかな二曲一双の屏風。
右隻には江戸時代の奥女中たちが、
左隻には大正時代の娘たちが描かれています。
売店で買い物をする娘たちの楽しそうなこと!
今も昔も変わらないなって。
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池田輝方と池田蕉園のことは、2016年の
岐阜県美術館「ジャパン・ビューティー」展の
ギャラリートークで、学芸員さんから聞きました。
蕉園と婚約したのに、輝方は他の女性と失踪してしまうと。
何年か後に戻ってきた輝方と結婚して、おしどり画家と
呼ばれたそうだけど、その話を聞いて私は輝方酷いーって
思ったせいなのか、そこに展示されていた輝方の絵、
あまりいいと思わなかったんだけど、
この、着物の模様も細かく描かれた《幕間》素敵だなって。

池田蕉園は、猫を抱いた《秋苑》1904年 と《宴の暇》1909年が
展示されていました。《秋苑》は実質上の蕉園のデビュー作、
18歳の作品なんですね。
「東の蕉園、西の松園」と言われたそうですが、
31歳で亡くなっているのが惜しまれます。


小村雪岱《河庄》1935年頃
近松門左衛門『心中天網島』を 歌舞伎にした
「河庄」の段の一場面
2020年1月に行った岐阜県現代陶芸美術館「小村雪岱スタイル」展で、
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-02-04
学芸員さんに、雪岱の肉筆画はとても稀少だと聞きました。
省略と余白が効いた雪岱のデザインセンスあふれる粋な画面
とてもいいなって。
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展示室中央の長ーい展示台にあった長ーい作品
(61.5×165.5cm が4巻!)
伊東深水《戸外は春雨》1955年
日劇ミュージックホールの楽屋に取材して描かれた深水の異色作
その場所に私も立って見ているような臨場感があります。
それぞれの人物が肉体を持って生き生きと動いているよう!
第3図右端の舞台監督と思しき人物に福富の姿を重ね合わせて見る誘惑に駆られる。」(図録より)‥‥同感!


松本華羊《殉教(伴天連お春)》1916年頃
描かれているのは「ジャガタラお春と言われてきたが、近年の研究では(中略)岡本綺堂の新歌舞伎『切支丹屋敷』のヒロインにもなった遊女朝妻の死の直前の姿ではないかとの説が提唱されている。
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「朝妻」ってことで思い出したのが「ジャパン・ビューティー」展の
メインビジュアルにもなっていた栗原玉葉《朝妻桜》1918年
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「ジャパン・ビューティー」展図録では、
栗原玉葉《朝妻桜》は「第12回文展入選作。同じ文展に大阪の女性画家・松本華羊も朝妻を描いた作品(福富太郎コレクション《伴天連お春》)を送るが落選している。新歌舞伎「切支丹屋敷」が大正2年(1913)新富座で初演されるなど、大正期にはキリスト教を題材とする文芸が盛んであった。」と。
これが落選作?! って驚いちゃいますけど。


Ⅱ-2 女性像へのまなざし 西の作家

島 成園《春の愁い》1915年頃
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これも「新歌舞伎「切支丹屋敷」を題材に描いた可能性が指摘されている。 東京小石川の切支丹屋敷に囚われの身となった遊女、朝妻が斬罪になるとき、せめて屋敷の桜が開くのを見たいと願い出たところ、憐れんだ奉行が許し、桜を愛でた後に受刑した物語。
散りゆく桜をどんな想いで見ているのか、なんとも印象的な表情です。


上村松園、池田蕉園と並び三園と称された島成園
とてもいいなって見ました。特に、《おんな》1917年
もろ肌脱いだ女性の肉体、情念を感じさせるような長い黒髪、
着物に般若が描かれているのも「おんな」の内面を感じさせて迫力でした。
これ「1917年再興第4回院展に「黒髪の誇り」と題して出品したが落選している。」とのこと。


美人画と言えば上村松園ですが、福富太郎は
私はどうも上村松園の美人画にのめりこむことができない。江戸っ子の私には京女のはんなりとした美しさが理解できないだけなのかもしれないが
と語っているそう。それでもコレクションされた
上村松園《よそほい》1902年
上品で緻密で素敵です。


伊藤小坡《つづきもの》1916年
朝の身支度より先に新聞の連載小説に夢中になっている女性。
あ、これずっと前に古川美術館で見た絵だ! って思ったら、
古川美術館で見たのは下絵でした。
(三重県立美術館がこの作品の大下絵を所蔵している)
古川美術館「伊藤小坡」と「落花の夢」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2012-12-17
大下絵とこの本画では、柱の日めくり暦の日付が異なるのだそう。
新聞の日付は9日で、大下絵の日めくりは9日、本画では8日。
朝、暦をめくるより先につづきものに夢中になっているんですね。


そして、なんといっても、展覧会のメインビジュアルにもなっている
北野恒富《道行》1913年頃
死を覚悟した二人、女性のうつろな表情がなんとも言えません。
それでも二人手をつないでいるのに気が付きます。
数珠を持った指先がほんのり赤い‥‥
鴉が配置されているのがすごくいい!!
これも「1913年第7回文展に出品され落選の憂き目をみており、原題は「朝露」であった。これにより恒富は文展から離れ、再興された院展に移り画壇の新しい流れに乗って、人の内面の追求をいっそう強めていった」とのこと。


Ⅲ-1 時代を映す絵画 黎明期の洋画

福富は美人画だけでなく、洋画も多く蒐集したってことだけど、
正直、ここに展示されていた絵、私にはなんか
古い絵‥‥みたいな印象なんだけどー。
時代の風俗がわかるのは興味深いけど、これから評価も進むのかな?

勝海舟が所蔵していたという川村清雄《蛟龍天に昇る》1891年頃
なんか暗い絵‥‥龍がリアル過ぎて気持ち悪い(^^; くらいにしか‥‥


Ⅲ-2 時代を映す絵画 江戸から東京へ

岡田三郎助《ダイヤモンドの女》1908年
うるんだ目でこちらを見つめる少女の手に光るダイヤモンドの指輪。
「時事新報」1908年元旦号の豪華付録の石版画《ゆびわ》の原画で、
ダイヤモンドの指輪は時事新報社が開催中だった美人写真コンテストの
賞品だったと。


吉田博の水彩画《朝霧》制作年不詳 が展示されていました。
去年4月、吉田博の木版画を中心とした展覧会
パラミタミュージアム「吉田博展」に行きました。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-04-18
福富は吉田博の絵を「見ていて気分が爽快になる」と評している
そうですが、私もすごく同意します。


Ⅲ-3 時代を映す絵画 戦争画の周辺

「戦争画」を熱心に蒐集した福富ですが、それら約100点は、
没後に東京都現代美術館に寄贈されました。

2020年6月、東京都現代美術館のコレクション展で
福富太郎が寄贈した戦争画が展示されていました。
東京都現代美術館コレクション展「いまーかつて 複数のパースペクティブ」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2020-07-17

現在も福富コレクションとして保管されている「戦争画の周辺」
ともいえる作品が展示されていました。

満谷国四郎《軍人の妻》1904年
日露戦争の未亡人が、遺品を見つめる姿。制作直後にアメリカに渡ったものが、1990年にクリスティーズのオークションに出品され、それを福富が落札したのである。
よくこれを買ってもらえましたと感謝です。


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図録「コレクター福富太郎の眼」2,500円(税込)
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ちょっとキッチュな装丁というか、
表紙の丸い穴から、鏑木清方《妖魚》の人魚の顔が見えたり、
しっとりとした手触りの紺の表紙は、キャバレーのソファ、
キラキラの箔押しは、ミラーボールのイメージ?
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「コレクター福富太郎の眼」
東京ステーションギャラリーで2021年4月24日(土)~6月27日(日)まで
開催された(うち、4月27日~5月30日はコロナのため臨時休館)後、

新潟県立万代島美術館で 2021年9月18(土)日~11月7日(日)

ここ、あべのハルカス美術館で、2021年11月20日(土)~2022年1月16日(日)

の後、高知県立美術館で、2022年1月29日(土)~3月21日(月・祝)

富山県水墨美術館で、2022年7月15日(金)~9月4日(日)
岩手県立美術館で、2022年9月17日(土)~11月6日(日) に開催予定とのこと。


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展覧会を見た後、おトクなセット券で、
あべのハルカス展望台「ハルカス300」へ。
美術館のある16階からエレベーターで60階へ。

さすがー、見晴らし最高!
北側 下にJR天王寺駅。まっすぐ伸びた道路が谷町筋
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天王寺公園のなかにある大阪市立美術館が見下ろせます。
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西側 横切っているのは阪神高速松原線
   遠くに大阪湾・大阪港が見えます。
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南側に見える異様な一角は大阪市設南霊園
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東側 近鉄南大阪線や JR、その上を通るのは天王寺バイパス
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屏風に祝御成人と書かれた軸が掛けられています。
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そうそう「コレクター福富太郎の眼」展、
成人の日にちなみ、1月8日(土)~16日(日)に、
着物で来館された方に、当日料金から200円引きという
イベントをやっていたそうで、着物の方をちらほら見ました。
成人式の振袖みたいなハデなものではなくて、
大正浪漫を感じるような小粋な着物の方で、
展示されてた美人画とともに鑑賞させていただきました。

ガラス張りの回廊になっています。
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58階が吹き抜けの天空庭園になっています。
(58~60階はエスカレーターで自由に行き来できます)
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お腹空いたので、58階のカフェレストラン「SKY GARDEN 300」で、
オムライスとマンゴージュースを1,450円
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59階の女子トイレ。空中に浮かんでいるみたいで素敵
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帰りのエレベーターは59階から。
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帰りは新幹線使わずに在来線のみで。
米原からの列車が、遅れていて帰宅がかなり遅くなったけど、
新幹線使っていてもそれは同じだったからー。

あべのハルカス美術館: https://www.aham.jp/

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ついでに、2016年10月27日(木)~12月11日(日)に
岐阜県美術館で開催された
「知られざるプライベートコレクション
 ジャパン・ビューティー
 ―描かれた日本美人―」のことを
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浮世絵コレクターで知られる中右瑛(なかう えい)氏の主導で 形成された「朝比奈文庫」コレクションから、明治・大正・昭和の美人画の変遷を辿ります。(チラシ裏面の文)

ってことで、めったに公開されないプライベートコレクションの
貴重な機会だと。
私が一番印象に残った絵
木谷千草《化粧》昭和初期
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描かれているのは淀殿ではないかってことでした。

「ジャパン・ビューティー」展、岐阜県美術館で開催される前、
東京 ニューオータニ美術館で、2013年3月16日(土)~5月26日(日)
埼玉 川越市立美術館で、2013年10月19日(土)~12月8日(日)
広島 広島県立美術館で、2015年1月2日(金)~2月15日(日) と
巡回したそう。

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