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御園座「坂東玉三郎 特別公演」阿古屋

10月17日(日)、何十年ぶりかで歌舞伎を見ました。
御園座「坂東玉三郎 特別公演」
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「チケットぴあ」の抽選販売のメールで知って、
玉さまが名古屋で? 阿古屋ですって?!と、
申し込みをしたら、第3希望まで出したけど、第一希望で
用意できたって、それも2列目の席だったので、
わー、いい席が当たったわって喜んでたら、
1列目はコロナ感染予防対策のために使われてなかったので、
事実上の最前列!! まぁ、わりと上手側だったので、
玉さまを斜め横から見る角度になったんですが、
それでも舞台ならではの臨場感、迫力、良かったー。

せっかくの御園座ですから、気合を入れて(?)着物で!
(そうでないと着ていくものがジーパンくらいしかない)
着物を着ている方、結構多かったです。
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(鏡に映ったものを撮ってます)

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御園座 1896年(明治30年)に開場した名古屋の劇場。
2013年に建て替えのために閉館。2018年4月に上層階が分譲マンションに
なっているグランドメゾン御園座タワーとして再開場しました。
もちろん私、建て替えられてから行くのは初めてです。
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チケットと一緒に、コロナ感染者が出た場合に備えて
連絡先を記入したカードを提出します。
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緞帳が杉本健吉デザインの飛天
10月末で閉館する杉本美術館へ、最後にもう一度と、
10月3日(日)に行ってきたんですが、この緞帳の原画も展示されてました。
(私の席からだと緞帳全体の写真が撮れないー)
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最初の口上では、緞帳があがると、
金屏風に四季の花々が描かれた金屏風がめぐらされた中、
玉三郎と中村橋之助、福之助、歌之助の3兄弟
(中村芝翫の長男・次男・三男)の挨拶があり、
福之助さんが名古屋めしのあんかけスパゲティが好きだって
話にあちこちから笑いが。
そして、玉三郎さんが三着の衣装を紹介してくださいました。
打掛をはおって背を見せて立たれると(こういうのも見得って言うのかな?)
会場内から、どよめきのような拍手が。
高下駄で歩いたり、三番目に紹介された能の演目で使われる衣装は、
京都の古い家に伝わった装束を作り直したものだとか(うろ覚えです)
金糸銀糸が豪華。それを能の衿を開けた着方で纏って立たれると、
能のピシっとした雰囲気が伝わってきました。

20分の休憩の後、
壇浦兜軍記の阿古屋

女形の大役とされる遊君阿古屋はもちろん玉三郎ですが、
配役が日によって違い、17日(日)は、

秩父庄司重忠 福之助
岩永左衛門致連 橋之助
榛沢六郎成清 歌之助 でした。

とにかく阿古屋の衣装が豪華です!
伊達兵庫の鬘に多くのかんざし。垂らされた銀の飾りがキラキラと輝きます。
孔雀と桜の豪華な俎板帯を締めた阿古屋が
捕手に囲まれて花道を出てくる姿!! 素敵!!!!

重忠は白塗りの端正な役。対して、

岩永左衛門は赤っ面(これ、目の玉も描いてる?)で、
人形振りで演じられ、眉毛がクルクルと回るのがユーモラス!

これは人形浄瑠璃からの演目なんですね。
途中でピョンピョンはねるように登場する竹田奴たちも
人形をイメージした動きで面白い。目を描いてるー!

舞台の浄瑠璃と三味線の人が感染対策で黒いマスク(?)を
つけていらしたんですが、意外と格好良かった。

女形の大役と言われるように、舞台上で、豪華な衣装をつけて、
琴、三味線、胡弓を演奏しなくてはならないので、至難の役
だということはわかります。平成9年(1997)に玉三郎が演じる前は、
六世中村歌右衛門が昭和28年(1953)から昭和61年(1986)まで
12回演じています。(プログラムの解説を参照しました)

阿古屋を見るのは初めてだったんですが、
豪華な衣装といい、演奏といい、人形振りといい、
面白かった!! 良かったー!!

15分の休憩の後、
石橋(しゃっきょう)

金屏風に水墨で岩山が描かれ、長唄連中が二段に並んで
演奏する(感染対策の黒いマスク、なかなかカッコイイです)中、
緑の台に乗った獅子の精たちがせりあがってきます。

真ん中に白い毛、両側に赤い毛の獅子の精。

中村橋之助、福之助、歌之助の3兄弟の舞
長い毛を豪快に振ります。いかにも歌舞伎ってイメージ。
私は舞はよくわからないけど、なんか若々しくていいなって。

終演後は、混雑を避けるために、座席列で別れての
退場となっていました。

プログラム1,800円 カラー写真が多くて、
演目の紹介だけでなく、玉三郎の阿古屋に対する思いなど、
とてもわかりやすくて大満足です。
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そして、つい買ってしまったのが、
ポストカード300円と、
桜姫東文章のクリアファイル1,000円
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今年4月と6月に「桜姫東文章」を、36年ぶりに
仁左衛門と上演したって話題になってましたね。
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このクリアファイルに使われている写真は、
昭和57年(1982年)2月南座公演に向け撮影されたもの(撮影/大倉舜二)


私、1981年3月に歌舞伎座で上演された「桜姫東文章」を
見てるんですが、一緒に見に行った友人と(劇場にはたいてい一人で
行くんですが、この時は珍しく2人で行ったんです)
ヘアヌード(当時話題となってた)なんかよりよっぽど興奮するねって(=^▽^=)

その時の配役は、釣鐘権助は片岡孝夫(仁左衛門)でしたが、
清玄は海老蔵でした。
(海老蔵‥‥その後、市川團十郎を襲名し、2013年に死去(T.T)

そして今年9月には、仁左衛門と玉三郎の「東海道四谷怪談」が
38年ぶりに上演ってことで、こちらも話題でしたが、
私、38年前の1983年6月、歌舞伎座での東海道四谷怪談見てます!
陰惨な怪談話の中に、せっかくの孝玉コンビだからって、
美しい夢の場があってよかった。
お岩さんの産後のやつれと生活苦、そして
夫の伊右衛門に裏切られる哀れさが伝わってきました。

玉三郎と片岡孝夫は孝玉コンビって大人気でしたね。
私も、歌舞伎ファンというより、玉三郎ファン、
孝玉コンピファンなんですけど。

1983年3月の歌舞伎座での「助六」
見に行けなくて残念だったけど、テレビで見ました。
「演劇界」1983年4月号表紙
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「演劇界」1983年4月号より、玉三郎の揚巻
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大学を卒業する頃から、就職して結婚するまでの
独身貴族時代は結構あちこちの劇場行ってます。

まだ卒業前の東京にいた頃に見に行ったこの舞台、
当時の若手花形が出て、とても良かった!
1980年1月24日 浅草公会堂 寿初春花形歌舞伎
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「鳴神」吉右衛門の鳴神上人と、玉三郎の雲の絶間姫
「鷺娘」玉三郎の鷺娘
「供奴」勘九郎(2005年に中村勘三郎を襲名、2012年死去)の供奴
「雪暮夜入谷畦道」吉右衛門の直侍と、玉三郎の三千歳、勘九郎の暗闇の丑松
直侍と三千歳のラブシーンがすごく美しかった!
玉さまがしんみり語ると、こめかみあたりの髪がはらりとほつれる場面、
ぞくっとしました。

名古屋にはその頃、御園座、中日劇場、名鉄ホールがあって、
歌舞伎や新派、ミュージカルなど、いろいろやってましたね。
‥‥今は御園座だけになっちゃいました。

1980年4月13日 中日劇場で見た「新派陽春公演」夜の部
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玉さまが「日本橋」のお孝で出てて、妹分の芸子を自分に見立て、
自分が恋しい男のつもりになって「お孝、たんと我儘を言え」
って場面(41年前のことなのでうろ覚えだけど)ぞくぞくしました。

1980年7月27日 中日劇場「椿姫」
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結婚後は、歌舞伎も劇場もすっかりご無沙汰してしまいましたが、
1993年6月 博物館明治村にある呉服座(くれはざ)で、
玉三郎の舞踊公演があるってことで行ったことがあります。
古い芝居小屋の雰囲気がとても素敵でした。

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中日新聞2021年10月14日(木)の記事
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岐阜県美術館「不在の観測」展 [美術]

10月2日(土)、岐阜県美術館へ行って
「ミレーから印象派への流れ」展を見たことは前記事
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-10-10

岐阜県美術館では
「ab-sence/ac-ceptance アブセンス/アクセプタンス
 不在の観測」
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という展覧会もやっています。
チラシが面白い‥‥これ、包装紙とか薬の包み紙?に使われるような
薄い紙に、片面印刷して2つ折りにしてあるんですね。
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出品リスト・解説も薄い紙に印刷してあります。
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メインビジュアル(?)は不思議な言葉
それは名付けらまれすか。
それは測れすまか。
それはふちどまれすか。
それは在りすまか。

副題は、
この世界を受容する手立てが見えてくる、かもしれない。

会期が、2021年9月23日(木・祝)~11月28日(日)ってありますが、
コロナのため開幕は10月1日(金)になりました。

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裏面(?)の文章
この感染症の時勢下にあり、本展は、〈不在〉を主たるトピックとします。
本展のタイトルにある「ab-sence/ac-ceptance」は、意訳すれば「不在を受容」 あるいは「不在か容認か」となります。3組の作家は、姿をもたない存在や、言語に 回収されざる存在とのコネクトを試み、あるいは、認識の働きに潜む事象に目を 凝らしています。作家はまた、岐阜県美術館の所蔵品に新たな解釈を付加し、別 の時間軸に出現させていきます。本展では、それらの行為や思考を重ね合わせて いくことで、われわれが〈不在〉と考えているものの根拠、概念を問い直し、この世 界を新たに受容する手立てを探っていきます。


3組の作家
ミルク倉庫+ココナッツ
三枝愛(みえだ あい)
平野真美
は、2017年の
ART AWARD IN THE CUBE 2017
清流の国ぎふ芸術祭 (AAIC2017) の出展作家

岐阜県美術館「清流の国ぎふ芸術祭」
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2017-05-18


展示室前で後援会員証を見せて、壁に見えるようなドアが開くと、
岐阜県美術館所蔵の大きな古い台のような木の作品が
成田克彦《SUMI 1》1969年

「不在の観測」と書かれた柱の横を通って進むと、

右のガラスケースの中に
ミルク倉庫+ココナッツ
《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅱ――魂=21g》2021年
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(この展覧会、ミルク倉庫+ココナッツ、三枝愛、平野真美の作品は撮影可)
シーソーのような台の上に、自転車の車輪とフレームが別々になって
左に車輪、右にフレームが乗っています。他にも時計が針と別々に乗ってたり

人が死ぬと体重が21g減るということから、
魂の重さは21gだという説があるそう。

〈重さ〉をはかるという行為は、重量以外の要素を不在化させてしまいます。
(もらった出品リスト・解説より)


左のガラスケースには、
岐阜県美術館所蔵の野村仁《勃起する真空》1990年

そして、ミルク倉庫+ココナッツの作品
《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅰ――観ることについて》2021年
顕微鏡が発明されたことで、それまで何も存在しないと思われていた
極小の世界にも、放散虫のような微生物が存在していることが
わかりました。しかし「スカイフィッシュ」のように、
ビデオには映るのに、カメラのモーションブラー効果による
幻影で、実在しないものもあると。
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放散虫の3Dプリントなどが展示されていました。
野村仁のガラスの作品に呼応しているようでした。


奥に進むと、三枝 愛 さんの展示
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岐阜県美術館所蔵の松尾芭蕉が書いた《山かげや》1688年
という作品と、その句碑が伊奈波神社近くにあるってことで、
その2つの作品を合わせようと思ったと、
句碑の拓本と
(この句碑、古いものなので、台座が壊されていたり、
所有者が誰なのかわからずに空き地で忘れられていたそう)
その拓本を基にした提灯。

三枝愛さんのAAIC2017の出品作《庭のほつれ》は、
岐阜県加子母(かしも)産の檜でつくられたキューブ
(AAICは、それぞれの作家が幅4.8m×奥行4.8m×高さ3.6mの
キューブに作品を展示する企画公募展)
の中に、椎茸栽培の原木が転がっているという、私には
????ってカンジの作品だったんですが、
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キューブをつくっていた檜のベニヤ板は、展覧会の終了後
解体・処分されました。残しておくことができたのは、
使われていたベニヤ板の端材のみ。美濃で制作した和紙に
こんにゃく引きの加工を施し、ベニヤ板を拓本によって複製し、
キューブを原寸大で復元した作品
《庭のほつれ|箱のゆくえ》2021年
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ミルク倉庫+ココナッツ の展示

AAIC2017 で大賞を受賞した7名のアーティストコレクティブ。

でも私はなんかよくわからなかった。
モノが突然動き出したりして、面白いとは思ったけど。

《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅲ-2――プロセスの欠如(直結/短絡)》2021年
壁の紙には「怠け弁当」という、
「よく働くのは弁当をたくさん食らうから」と地主に言われた
作男がとった行動は‥‥という日本昔話が書かれていました。
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台の上で、2つのスピーカーがレールの上を動いています。
《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅵ――声(問いと解答)》2021年
声も含め、すべての音は空気の振動によるものです。この振動に、真逆(逆位相)の振動をぶつけると、振動同士は相殺されて音も消失します。また真逆の振動であっても、わたしたちには、元の振動とまったく同じ音として聴こえてきます。
この作品は、特殊なスピーカーを使用し、こうした音の性質を利用した作品です。

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壁の2つの映像は、
《〈無い〉ことをめぐる断章Ⅷ――砂山のパラドクス》2021年
砂粒を一粒ずつ取り除いていく映像と、一粒ずつ増えていく映像。
6時間以上にもおよぶ映像のどこかには、砂山が消失する瞬間が
映っているってことですが‥‥

岐阜県美術館所蔵作品の 伊佐治勝太郎《午睡》1937年 を
読み解いた解説もありました。
私もこの作品面白いと思っていたけど、
描いている絵も描いているとか、
パレットナイフが目立っているけど、この絵には
パレットナイフで描いたところなんてないとか、
女性の腋毛についてとか、図解興味深かった。

岐阜県美術館のコレクション検索で画像見ることができます
伊佐治勝太郎《午睡》
https://gifu-art.info/details.php?id=914


平野真美 さんの展示
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AAIC2017で、私が一番いいと思ったのが、
平野真美《蘇生するユニコーン》
生命維持装置につながれ血管がピクピク動いているユニコーン。
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平野真美さんはユニコーンの前に、
亡くなった愛犬をそっくりに作った作品があります。

今回の展示では、その愛犬を火葬した遺骨が納められた骨壺を
骨箱ごとCTスキャンして、遺骨を3Dプリンターで出力、
それをパート・ド・ヴェールという古代のガラスの技法で
作ったものや、陶の鋳込み成形で作ったものなどが展示されています。
《変身物語 METAMORPHOSES シリーズ》

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壁に投影されているのは、CTスキャンの映像
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透明なガラスや真っ白な陶で作られた今にも壊れそうな作品は
儚げでとても美しい。
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骨壺のレントゲンフィルム
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もう愛犬は「いない」のだって平野さんの想いが伝わってくるようで
作品についての文を読んで、ちょっと泣きそうになっちゃった。
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そして、このガラスの立方体、すごく美しい。
遺骨(を3Dプリンターで出力したもの)が閉じ込めてある?
《変身物語 METAMORPHOSES #5 Presence or absence》2021年
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平野真美さんの展示、すごく良かった!

2021年9月27日(月) 中日新聞(夕刊)の記事
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本来ならオープニングの日であった 9月23日(木・祝)に
おこなわれた、出品作家と担当学芸員による作品紹介
オープニング・クロストーク


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岐阜県美術館「ミレーから印象派への流れ」 [美術]

10月2日(土)岐阜県美術館へ行きました。

「ミレーから印象派への流れ」をやっています。
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この展覧会のチラシには、会期 9月5日(日)~10月21日(木)
ってあるんですが(今気づいたけど、ちょっと不思議な会期。最終日が木曜だ)

新型コロナのため、岐阜県美術館は8月20日(金)から
臨時休館となってしまいました。
当初は緊急事態宣言期間が9月12日(日)までだったので、
9月13日(月)からの開幕(月曜だけど臨時開館)の予定だったんですが、
緊急事態宣言期間が9月末まで延長されたので、
臨時休館期間が9月30日(木)までになってしまいました。

ということで、10月1日(金)に、やっと開幕を迎えられたわけです。
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最終日が10月21日(木)なのは変わらないので、
わずか21日間の会期‥‥なんですが、
会期中は休館日なし! (月曜も開館!!)
金曜日に加え、土曜日も夜間開館日として20:00まで開館!!!

なので、パートは休みだったけど、いろいろ雑用が入っていた
10月2日(土)、夕方から行くことができました。
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後援会会員証を提示して入ると、最初が、

Ⅰ ミレーと写実主義

あ、コローだって見た絵が、
コンスタン・デュティユー《風景、夕暮れの効果》ドゥエ美術館

コローとも親しかった画家だそう。

コローの絵も3点展示されていました
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《カステル・ガンドルフォ、アルバーノ湖畔で踊るチロルの羊飼い》1855-60年
 ウェールズ国立美術館
が良かったなぁ! 穏やかでロマンチックな雰囲気。
このあたり、6月に名古屋市美術館で見た
「風景画のはじまり コローから印象派へ」展を思い出しました。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-06-17

ジュール・ノエル《海》トマ=アンリ美術館
小さな絵だったけど、こういうクリアな風景画の方が、
暗くもやっとした風景より、私の好みだなー。
この展覧会、わりと海の絵が多いように感じたけど、
本展では英仏海峡沿いのドゥエ美術館、トマ=アンリ美術館、カンペール美術館に加えて、早くから印象派コレクションを形成していたイギリス、ウェールズ国立美術館から集めた、パリで見られるものとは 異なる個性的な名品をお楽しみいただけます。(チラシ裏面の文より)
ってことで、沿岸地方の美術館の所蔵品ってこともあるのかな。

ヨハン・バルトルト・ヨンキント《オーヴェルシーの眺め》1856年 ドゥエ美術館
も、クリアな風景画で良かった。ヨンキントはモネが師と仰いだ画家だそう。
「風景画のはじまり」展では、ヨンキントはエッチングしか見られなかったから、
今回油彩を見られてよかった。

展覧会のタイトルにもなっている
ジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875)の絵が7点
うち、6点がシェルブールのトマ=アンリ美術館所蔵

ミレー、初期はこんな絵を描いていたんだって、
なんか暗くてドラマチックな雰囲気の
《アラブの語り部》1840
《モーゼに扮した自画像》1841

ミレーは生まれ故郷に近いシェルブールで肖像画家として名声を得た
ってことで、

《部屋着姿のポーリーヌ・オノ》1843-44

23歳の若さで亡くなった最初の妻の肖像。
顔の色が不自然で気持ち悪い‥‥なんて感じてしまったのは、
貧困のために結核に冒されていたせいなのかな。

《シモン・ド・ヴォディヴィル夫人とその母デロンシャン夫人の肖像》1843-44
母娘の肖像画だけど、これ、注文主は不満なんじゃないの?

チラシ表面一番上に使われている《慈愛》1858-59 は、
穏やかで温かな絵でいいなって思ったけど、その他の絵は
私にはなんかうーーん‥‥ってカンジ。


Ⅱ モネと印象主義

シャルル・クワッセグの《海》と、
《浜辺の小船》どちらもトマ=アンリ美術館
海の荒れる波の表現がいいなって見た。

ギョーム・フアス《銀行家ルブラン婦人の肖像》1880 トマ=アンリ美術館
肖像画なら、こんなふうにリアルに美しく描いてもらいたいですよね。
身に着けた貴金属のきらめきもステキ。

そして、人気の印象派の巨匠たち、
セザンヌ、モネ、ルノアールが並ぶところ、やっぱりいいなって。

ポール・セザンヌ《プロヴァンスの風景》ウェールズ国立美術館
どこにでもあるような林を描いているだけなんだけど、
木々の緑が生き生きしていていい。

クロード・モネ は《睡蓮》1906 ウェールズ国立美術館 と、
ヴェネツィア描いた《パラッツォ・ダリオ》1908 ウェールズ国立美術館
が出てました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《会話》1912 ウェールズ国立美術館
晩年のふわふわしたタッチの作品です。


フランソワ・ミレー《トゥルプの農場》1890 トマ=アンリ美術館
って絵があって、あれ? これって? とキャプションの横の説明を読むと、
ジャン=フランソワ・ミレーの第3子で長男(1849-1917)
父と同じような牧歌的て自然主義的な風景画や、父の絵の模写もしていると


Ⅲ 印象派以後そしてナビ派

アンリ・ウジェーヌ・ル・シダネル《日曜日》ドゥエ美術館
白いドレスの少女たちが佇んでいるロマンティックな絵、
あれ? この絵どこかで見たけど‥‥
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(図録よりスキャン)

2015年11月に行った
岐阜県美術館「最後の印象派」展
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2015-12-19
に出てて、とても気に入った絵でした。

この時、ひろしま美術館学芸部長 古谷可由氏の講演会も聞いて、
シダネル、いいなーって。
岐阜県美術館もシダネルの《月下の川沿いの家》1920年 持ってますが、
ヤマザキマザック美術館の《雪の下の藁ぶき屋根》とても私の好みです。

そして「最後の印象派」展のチラシに使われていて、
なんて私好みの絵なんだ! って思った、
アンリ・マルタン《野原を行く少女》1889年
今回の展覧会には出てなくて残念なんだけど、
その絵の少女と同じようなポーズの《調和》1894年 ドゥエ美術館
が展示されていました。でもちょっとぼんやりとジミなカンジ‥‥

今、ひろしま美術館で「シダネルとマルタン展」をやっているそうですね。
ひろしま美術館: https://www.hiroshima-museum.jp/
巡回はしないのかな?

ポール・セリュジエ《さようなら、ゴーギャン》1906年 カンペール美術館
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(図録より)
ゴーギャンが1903年に亡くなった後に描かれた絵なんですね。
左側の人物がゴーギャンで、右がセリュジエ
タヒチに行って亡くなったゴーギャンと、残ったセリュジェ
セリュジェは、ゴーギャンが描いた《こんにちは、ゴーギャンさん》
という絵でゴーギャンが着ていた洋服を着ているのだそう。

私が持っているゴーギャンの画集から
《こんにちは、ゴーギャンさん》
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1880年代からポン=タヴェンに集まった、ゴーギャンを中心とする画家たちを
「ポン=タヴェン派」と呼ぶようになりますが、セリュジェもポン=タヴェンで
ゴーギャンの教えを受けます。その後、パリに戻ったセリュジェは仲間たちと
「預言者」を意味する「ナビ派」を結成します。

岐阜県美術館はルドンの作品を多く所蔵していて、
ルドンのセリュジェやモーリス・ドニの顔を描いた
版画(リトグラフ)を所蔵してますし、

セリュジェ《消えゆく仏陀―オディロン・ルドンに捧ぐ》1916年
などの絵も所蔵しています。ナビ派はゴーギャンだけでなく、
セザンヌやルドンも尊敬していたんですね。

最後に参考資料として、ミレーの名画が原寸大複製画で展示されていて、
《晩鐘》って意外と小さいんだなとか、
《種まく人》はボストン美術館の複製でしたが、これとほぼ同じ絵が
山梨県立美術館所蔵の《種まく人》なんだそう。


図録はちょっと迷ったんですが‥‥今回の展覧会、私好みの絵が
少なかったんですよね。でも知らない画家が多くて、知りたいと思ったこと、
「風景画のはじまり コローから印象派へ」展 で、やっぱり
図録買えば良かったかなと思ったこと、
後援会員割引で2,300円が2,100円で買えること、
最近はちょっと懐具合に余裕が出てきたこと、で買っちゃいました。
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岐阜県美術館では、この他に「不在の観測」という展覧会も
やっています。そのことは次の記事で。


岐阜県美術館: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
岐阜県美術館「ミレーから印象派への流れ」のページ:
https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/events/millet2021/

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あっ、これから見に行かれる方に注意! 展示室かなり寒いです。
私はこのツイッター見て、薄い上衣を持って行ったんですが、
鑑賞しているうちに、それでも寒くなりました。
(ツイッターはスレッドで出てきてしまうので、インスタを埋め込みました)

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刈谷市美術館「野口哲哉展」 [美術]

9月26日(日)、高浜市やきものの里かわら美術館へ行き
「ボン・ヴォヤージュ!」展を見たことは前記事に。
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-09-30

私にしては早い時間に家を出たので、見終わって、
名鉄「高浜港」駅に着いたのが15時頃。
フツーの主婦なら、家に帰るのに時間もかかるし、
これで帰るところなんですが、

時間あったらついでにここ寄ろうって考えてたんですよ。
刈谷市美術館。 9月18日(土)から
「THIS IS NOT A SAMURAI
 野口哲哉 展」をやっています。
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NHK「日曜美術館」アートシーンで
野口哲哉を知って、面白い作品を作る人だなぁって。
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「高浜港」駅のある名鉄三河線の「刈谷」で降りて、
徒歩10分程度で行けるから‥‥見れるかなと。

刈谷市美術館は、2016年10月に
「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」見に行って以来
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2016-11-03

今回で4回目の 刈谷市美術館
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入場料一般1,000円払って入ります。(学生800円 中学生以下無料)

第1章 鎧の中へ

最初に展示されていた《作者弐拾四歳寿像》2004年
古い絵かと見たら、甲冑をつけた作者の自画像

人物や鎧がとてもリアルにできているなって見たら、
足にスニーカーを履いていたり、
赤いソファで寛ぐ鎧を着た人物など、
時代考証に厳密ではなくて、
「なさそうで、あるもの」と
「ありそうで、ないもの」が混在しています。
思わず笑みがこぼれてしまう。


第2章 仮想現実の中で

シャネルのマークがついた鎧を着た人物とか

第3章 鎧を着て見る夢

昆虫標本のように、小箱に鎧を着た人物が
綿の上に収められ、ラベルも貼られています。
彼らは眠っているのか? 死んで標本にされてるのか?


2階の展示室へ上がると、
第4章 別世界旅行

ヨーロッパの古典技法で描かれた鎧姿の人物たち。
《 17C ~音楽の寓意~フェルメールに基づく》2017年 (チラシ裏面2段目左)
フェルメールの、
今年1月に大阪の国立国際美術館で見た
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に来てた
https://shizukozb.blog.ss-blog.jp/2021-01-15
《ヴァージナルの前に座る若い女性》ですね!

スマホを見る人物の顔が光に照らされている
《 21st Century Light Series ― The Tap ― 》2020年
 高松市美術館蔵 (チラシ裏面上段左から3番目)
は、ろうそくの光に照らされた人物を描いた西洋絵画や
近代日本の洋画を思い出させます。

鎧兜の人物がリアルな立体感のある西洋絵画で描かれるのは
古さと新しさが混じったカンジで面白い。


第5章 鎧を纏うひとびと

鎧を着た人物たちが戦隊レンジャーのような決めポーズをしている作品とか、
(若いイケメンではなくてちょっとくたびれたおじさんっぽいのもイイ♡)

そして、第5章後半の展示がされた展示室内は写真撮影可!!!
(以下、タイトルはわかる範囲で)

《 BIAS 》2019年
立派すぎる兜と悩める男のギャップが面白い。
素足の指とか、とてもリアルだなって。
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先輩作家である天明屋尚(てんみょうや ひさし)さんとのコラボで
制作した作品とのこと。
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《 Thing of the operation 稼働する事 -Engineering Armour 工学の鎧- 》
2010年
芝浦工業大学とのコラボでデザインした「工学の鎧」
鉄や革といった素材を軽量プラスチックに置き換えたものとのこと。
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《 AD17 初 ~海洋生物の兜~》2017年
こんな兜もありそうだなって思うけど、海洋生物のデザイン?
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《 Grand Helm & Cheap Japanese 》2019年
兜マニア(?)のオタク、みたいな? ヨレヨレのジーパンがリアル。
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《 POCKET 》2017年
ポケットに手を入れた男。鎧の時代にポケットはあったのか?
くたびれた男の表情は、鎧を着ているってだけで、
現代人と変わりない。そして、昔の人も
合戦の合間にこんな表情をしていたのではないかなと思ったり。
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《 Conves mirror 凸面鏡の画像》2020年
パルミジャニーノの《凸面鏡の自画像》を基にした絵ですね。
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チラシ表面に使われている
《 WOODEN HORSE 》2020年 高松市美術館蔵
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《 ONE'S SOME LIE 》2019年
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《 cheap wings 》2019年 秋水美術館蔵
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《 TRANSMISSION ~ジャーマン・スペシャル~ 》2017年
スニーカー履いてるww
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《 Armoured Dream 》2015年
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これイイな~! 展示室の壁にハートを描く武者
《 Clumsy heart 》2018年
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《 THE RED MAN 2013 》2013年
消防士の制服のデザインに取り入れてもいいんじゃないか(^▽^)
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少し前まで結構混んでいた展示室が空いてきたなって、
気が付いて時間見たら、16:40過ぎ!
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茶室にも展示があるってことで、そちらも見たいと、
残念だったけど、ショップと映像をトバして、

茶室・佐喜知庵
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コロナのため、呈茶は当面中止とのこと。
お庭から回ると、
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茶室のにじり口から、ホログラムシートに浮かび上がる
ブランコにのる後姿の武将
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新作インスタレーション
《ニュアンス ~水野勝成の見た夢~》2021年
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水野 勝成(みずの かつなり)は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての武将・大名。三河国刈谷藩主、大和国郡山藩主を経て備後国福山藩初代藩主となる。(Wikipediaより)

私、初めて知りましたが、乱世に波乱万丈の人生を送った、
長寿(当時の88歳はスゴイ)の刈谷出身の武将・大名なんですね。

「ニュアンス」ってタイトル(絵にもマンガっぽい字で書かれてる)は
どういう意味かな? ブランコに乗って何想ってるのかな?


この展覧会、2021年
2月6日(土)~3月21日(日) 高松市美術館(香川)
4月15日(木)~6月13日(日) 山口県立美術館(山口)
7月3日(土)~9月5日(日) 群馬県立館林美術館(群馬)
と巡回してきて、ここ、
刈谷市美術館で
9月18日(土)~11月7日(日)の開催とのこと。


「野口哲哉 展」公式サイト: https://noguchitetsuya2021.exhibit.jp/
刈谷市美術館: https://www.city.kariya.lg.jp/museum/
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